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海外渡航緩和に向けての展望と課題

 政府は19日から都道府県を越える移動の制限を解除することを明らかにしました。さらに水際対策の緩和について、感染状況が抑えられているなどとして、タイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドの4か国を第1弾の対象として、ビジネス目的に限定して緩和に向けた協議を進める方針を発表しました。感染状況を見極めながら、ほかの国々にも対象を拡大していく考えも明らかにしています。

 現在日本発の国際線のほとんどが欠航となっており、そもそも渡航するための手段が断たれている状況ですが、運航している便を利用して渡航している方は一定数おられます。特にインドネシアに関しては直行便が運航しており、入国の際にPCR検査結果陰性の記載のある英文健康証明書の携行があれば、到着時にCOVID-19特有の症状がなければ入国可能となっています。しかし、携行がない場合は入国後に隔離施設に移送されPCR検査が行われ、結果が出るまで所定の施設で待機することになります。実際に隔離施設に滞在した方の情報からか、ほとんどの方は出国前に検査を希望されています。いずれも場合でも入国後14日間の自主的な隔離はしなければなりませんが、強制ではないようです(在インドネシア日本大使館ホームページより)。

 現在は国内で海外渡航者に対するPCR検査を実施している施設や医療機関はきわめて少なく、トラベルクリニックと帰国者・接触者外来と同等の機能を有する医療機関である私のところには、インドネシアへビジネス渡航される方が全国各地から多数来られています。ビジネス渡航の緩和に備え、政府は国内で渡航者用のPCR検査施設の設置を検討しているようですが、入国の際には英文検査証明書の発行が必須であり、ある程度は渡航医療に精通した知識と対応が求められます。国内で症状のある方のPCR検査体制がようやく整いつつある状況の中での海外渡航緩和にはまだまだ議論すべき課題が少なくありません。

 思い返せば中国・武漢でCOVID-19が猛威をふるっていた春節の最中でも入国規制はしていませんでしたし、3月には欧州地域からの邦人帰国者を発端とした感染者の増加など、これまでの政府の水際対策は検証の余地を残しています。一方で、過去に羽田空港検疫所の非常勤医師であった私個人としては対策の限界も察しています。

 感染症は潜伏期がありますので、輸入される可能性のある感染症を水際で完全に食い止めることは不可能ですが、すり抜けることを前提とした医療体制の整備はとても重要です。これから大洋州は冬を迎え、COVID-19の第2波の可能性が懸念されますし、東南アジアは雨期に入りデング熱の流行が始まります。COVID-19だけではなく、輸入感染症の的確な診療も含めた渡航緩和の対策を講じていかなければなりません。

#COMEMO #NIKKEI



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