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行政サービスのデジタル化への注目と民間でできることへの工夫

新型コロナウィルスの感染拡大防止策、新しい生活への適応など、この4ヶ月を振り返っただけでも行政サービスのデジタル化が急速に求められてきていることを感じます(感染者数・病床数などのデータの可視化、給付金の申込申請・振込業務、行政機関のテレワーク・ビデオ会議、接触確認アプリなど...)。

早速自民党から『デジタル技術で変革を促すデジタルトランスフォーメーション(DX)に向け「政府DX推進委員会(仮称)」の設置を』との声が提言され、7月に決議される『経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)』に反映される見込みであるとの報道も既にされています。

そんな中、『霞が関の非常識 遠いデジタル政府』と題した上・下2回に渡る特集記事が掲載されていて、とても興味深い内容でした。

(上編)「ちぐはぐ通信網、テレビ会議さえできず
(下編)「司法や統計、アナログな国家の土台 急変に対応できず

上記記事の中で驚いたのは「民事裁判手続きのオンライン化の停滞」により、企業倒産件数などのリアルタイムで求められる経済動向の実態を把握することが困難な状態になっていることです。

東京商工リサーチによると、5月の国内の企業倒産は前年同月比54%減の314件と56年ぶりの低水準だった。新型コロナウイルス禍による景気の悪化で破産などは増えるとみられていた。現実は逆になった。裁判所が感染リスクを抑えるため対面業務を縮小したことが主な原因の一つだ。

国が行政サービスのデジタル化を推進すると強調する一方で、現場レベルではセキュリティ対策、自宅で使用できる端末の不足など、組織文化の問題など、なかなかすぐにデジタル化が進むとは思えない現実もありそうです。

コロナ問題を受け、総務省は各都道府県にテレワークに積極的に取り組むよう通知を出した。同省によると、政令指定都市を除く全国1721市区町村でテレワークを導入しているのは、3月26日時点で51自治体、全体の3%だ。 
そもそも自治体のネット環境は複雑だ。地方公共団体情報システム機構によると、自治体はセキュリティー対策のため、マイナンバー用の基幹システム、全国の自治体をつなぐ「総合行政ネットワーク(LGWAN)」、通常のインターネットの三つの回線を分離して使うことが推奨されている。
[2020年5月29日 朝日新聞デジタル]

民間企業、市民が中心となってできることは
先程の記事の中で興味を持ったのが民間企業などが提供するオルタナティブ・データの存在感です。

新型コロナが広がってから目立つのは、クレジットカード決済や小売店のPOS(販売時点情報管理)などの「オルタナティブ(代替)データ」だ。日次や週次の数字がわかる民間のデジタル統計が緊急事態宣言などによる経済の急変を分析するのに貢献する。

6月末にも政府が取りまとめたサイトが公開されるとのことですが、以下主要8項目のデータがヤフー、JTB、ぴあ、ナウキャストなどの民間企業から提供、公開される予定です。

①人の流れ、②検索情報、③飲食店予約状況、④宿泊施設予約状況、⑤イベント開催予定、⑥決裁情報、⑦小売販売情報、⑧企業財務データ

行政機関のデジタル化が推進されることは期待しつつも、海外に比べると見劣りが指摘される国の予算の規模はわずか1%程度とのことです。

"20年度当初予算のデジタル関連の施策は7000億円程度とみられ、全体の1%に満たない。米国が21会計年度で1.8%程度に上る見込みなのと比べ、見劣りしている。”

また、配分される内容を見てみても、すぐに大きな改善が持たされることはとても難しそうに感じてしまいます。そんな中、やはり民間企業、市民団体、そして個人レベルであっても、できることを進めていくことが大事、と改めて感じます。実際、75歳のご高齢の町内会会長さんが自治会の役員会をZoomを利用して実施する話なども以下の記事で紹介されてますが、「コロナ対応」が草の根のデジタル化を大きく推進する原動力になると信じています。

そもそも人工知能、スーパーコンピュータ、5G/6Gの前に、PCやタブレットなどの端末やwifi整備、エクセルやクラウドサービスの活用をすることで省力化・効率化できることが本当に多くありそうです。昨今注目されているプログラミング知識がなくても簡単にソフトウェアやアプリを作ることが可能になる「ローコード・ノーコード」技術の進化も、今後ますます期待できそうです(先日アマゾンも「Honeycode」というノーコードサービスのベータ版をリリースし、ますます盛り上がっていきそうです)。

最後に、期待を込めて海外で拡がっている行政のデジタル化推進の事例も簡単に紹介させてください。こちらの動画はアメリカ連邦政府内にある「USデジタル・サービス(USDS)」という組織の様子をまとめたTV番組の動画です。USDSの現在の代表はマット・カッツ氏という、グーグルに71番目にに入社した元幹部社員ですが、2014年頃にオバマ政権化で誕生した「USデジタルサービスに」関わり、2016年にフルタイムで参画し、今に至るとのことです。当然米国でも日本同様の課題はあるものの、シリコンバレーやテックスタートアップからの優秀な人材が未だに数多くトランプ政権内で活躍している様子を伺うことができます。

こうした行政機関での活動とは別に、例えば有志メンバーが3月に立ち上げた行政機関と市民テクノロジストのボランティアをマッチングする「USデジタル・レスポンス(USDR)」も注目の存在です。

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米国非営利団体コード・フォー・アメリカ創業者のジェニファー・パルカ氏と、パルカ氏同様かつて米国CTO補佐官として活躍していた計3名を中心に3月中旬に始められた取り組みには既に6,000人ものボランティア登録があり、地方自治体に派遣されボランティアのテクノロジストがウェブサービスを構築するなど、既に100以上の完了したプロジェクトがあるそうです。例えば買い物代行サービス(Neigbor Express)は高齢者などで買い物難民の人が購入したい生活用品、食品などを記入して支払い方法を記入することで、近隣のボランティア登録した人が買い物を代行してくれる、というサービスです。オープンデータでソースコードも公開されているこうしたプロジェクトは、今は既に3つの都市で展開されています。こうした事例が今後様々な地方自治体で拡がることも増えていきそうです。

以上、ここ最近報道で目にする政府のデジタル化への期待と現実、そして民間だからこそできることへの期待を備忘録的にまとめてみました。今いる職場で、或いは関わっているプロジェクトの仲間や町内会で、更には個人のレベルででも、デジタルトランスフォーメーションを推進していけることは多くありそうです。

Photo by Stephen Dawson on Unsplash

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