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自治体で規制が違う現状は、未来の施策のための根拠作りのチャンスかもしれない〜計量経済学の視点から〜


 いよいよ、明日から緊急事態宣言解除となります!しかし、本格的な経済回復はまだ先になりそうです。理由は、一部の地域では規制が続く状況となります。もちろん、各自治体に丸投げというわけではなく、国からは指針の提示などもされています。都心部を中心に、アルコール提供時間には規制が行われます。ただ、以前と違うのは、各自治体の状況も踏まえて規制が行われるので、緊急事態宣言中とは違い、各自治体で規制動向が明確に違ってきています。今回は、このような状況は、今後の施策つくりのための根拠作りや、ヒントが詰まっている可能性を考えていきます。


アメリカで行われたマスクと感染抑制に関する研究

 既に日本でも、著名な経済学者の方々が感染者予測や、人の往来と感染拡大の因果関係や、企業への影響に関する研究や論文を発表されています。そして、アメリカでももちろん、このような動きが出ています。下記の論文では、マスクと感染抑制・死亡者数の因果関係を検証しています。かつてのアメリカは、マスクの義務化がされた州と、そうでない州が混在している状況でした。気候や人口密度など、特性が似た州を見つけてきて、義務化された州とそうでない州を比較しています。しかし、因果関係の推定は、永遠に指摘が入るほど、難しいものです。マスクを義務化したことで、その州の人達の行動変容が起きたおかげで、感染抑制が起きただけなのか、マスクの直接的影響なのかの識別が難しいのです。この研究では、そうした識別にも一歩踏み込んだものとなっています。そして、こうした研究の存在が、全米でマスクの義務化にも繋がったかと思われます。


今の日本の状況は、どのような検証が考えられる?

 日本でも、上記のかつてのアメリカのように、県によって違う施策が導入される状況になっています。例えば、関西4件(京都・大阪・兵庫・滋賀)には緊急事態宣言が出されていたものの、明日からは京都(一部除く)・大阪・兵庫にはアルコール提供の時間規制が続くものの、滋賀は全面的に解除となります。この状況は、アルコール提供の時間規制と、感染抑制の因果関係を検証を行いやすいチャンスかもしれません。では、どのように検証をおこなうのか?

 土地柄や人口密度、気候など、飲食店を巡る環境は似ているのに、県境にお店があるがために、規制を受けなくてはいけない飲食店と、そうでない飲食店が混在しているだろう場所のデータなどが使えます。例えば、京都府京都市山科区と、滋賀県大津市の隣接地域の飲食店の規制遵守状況と、感染者動向の因果関係を検証するなどが考えれます。もしも、土地柄はほぼ一緒なのに、アルコール提供の時間規制がある地域のほうが感染者数が少ないといことがわかれば、アルコール提供の時間規制と感染抑制の因果関係を示せます。イメージとしては、下記の図のように、似たような地域間で、感染者傾向に不連続性が確認することです。

もちろん、こうした因果関係を推定するには、クリアすべき課題は沢山あります。山科区と大津市の特性をどう調整するのか、詳細なデータの有無、研究モチベーションの維持…etcなど数えきれません。しかし、要請ベースでの規制も徐々に限界が近づいているだけに、未来のための根拠作りが求められます。データが入手できたら、私もトライしようと思います。


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(出所:Cameron and Trivedi 『MICROECONOMETRICS』より)


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崔真淑(さいますみ)

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