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「2つのDX」というコンセプト

私が研究テーマとしてお話するのが、「2つのDX」という考え方です。

企業がデジタル化し、競争優位性を確保していくことを示す「DX:Digital Transformation」。

開発者がスムースに価値創出をしやすい環境とソフトウェア開発の自動的なパイプラインを意味する「DX:Developer eXperience」。

みなさんは、この言葉のどちらをご存知でしたか。あるいは両方ともご存知でしょうか。

不思議なことに、すでに先進的なデジタル技術を活用しているような企業がDXと聞いて想起するのは「Developer eXperience:開発者体験」の方なのです。

それに対してデジタルな技術をコアコンピタンスとして活用できていない企業の方が最初に想起するDXは、「Digital Transformation:企業のデジタル化」なのです。

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この2つはどちらが先にやるべきとか、どちらが正しいということは意味していないと考えています。むしろ、これらは1つの一体ものなのではないかというのが私の持論です。

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企業のデジタル化。簡単にいうとどんなことが進んでいたら、企業のデジタル化なのでしょうか。

仕事で今までは、口頭でもメールでも、人間が人間に指示をしてきました。あるいは取引も人間が人間と行なっていたものです。ですが、このうち多くが、人間がコンピュータに、コンピュータがコンピュータに対して行うようになるとしたらどうでしょう。

コンピュータは一度指示した内容を正確に動作し続けることができ、しかも人数が足りない時には勝手に採用して増やしたりすることができます。もちろん必要のない時は、不必要なコンピュータの解雇手続きをする必要はありません。

ということは、コンピュータに直接指示ができる人:ソフトウェア開発者ってとても重要な人材になります。かつて、グローバルな人材には、英語が必要とか、MBAが必要とか言われました。経営の言葉と世界の共通語で情報を得て、話せることが、重要視されたからです。今は、それがSTEMに変わりました。これは宇宙の共通語かもしれません。コンピュータに指示をする世界観ではマネジメントシステムも変わってきます。

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最近取りざたされる「1on1」を活用する企業や「ティール組織」「OKR」などなど組織人事の文脈での流行りの変化はどういうことなんでしょう。これもコンピュータと人間の関係性が経営の中で変わってきたからです。

私は、「エンジニアリング組織論への招待」という本を書きました。幸運なことに様々な方の目に触れることが叶いまして「ビジネス書大賞」と「技術書大賞」をそれぞれ別の大賞でいただくことができました。

これはビジネスとソフトウェアエンジニアリングが一体となっていることを心理学や経営学、組織論などの歴史から紐解いていった本です。個人の心理がいかにソフトウェアに反映されるのかというメカニズムを仔細に辿った本とも言えます。

デジタル化の進んだ社会において、ソフトウェア開発の学問とは新しい経営学としての当たり前の姿なのです。

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様々な企業が、デジタル化を進めるご支援をしていくと、ソフトウェア技術者は事業のデジタル化やイノベーションの進みとともに、Line Of Business : LoB(事業部ライン)に溶けていくという傾向があることがわかります。

より事業の意思決定と近い位置にソフトウェアが入り込むからです。素早い意思決定をするためには、システムとビジネスの両方の深い理解が必要です。

ソフトウェア技術者とビジネスラインの人々では考え方にギャップがあることもしばしばあります。生きてきた常識・当たり前の習慣が異なるからです。何が正しくて、何に喜びを感じるのかが少しづつずれています。なので衝突も多い。

デジタル化が進捗していく企業は、徐々に反発を繰り返しながらも融和していく傾向があります。これを水と油が溶け合う様子として「エマルション現象」と呼んでいます。

企業がデジタル化を進めると当然のごとく価値観が溶け合って新たな価値観が生まれてきます。そのなかで、データと機械への指示をする人々が仕事をしやすくなっていく環境は当然のごとく必要とされます。

2つのDXは、車輪のようなものです。片輪走行では無理が出てころんでしまいます。

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エンジニアリングと組織の関係について、より多くのビジネスパーソンに知っていただきたいという思いで投稿しております!

うれひい!
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株式会社レクター取締役。エンジニアリング組織論への招待~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリングhttp://gihyo.jp/book/2018/978-4-7741-9605-3が好評発売中。
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