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まだ引上げモードが続く

予定通りの75bpの利上げだが、これで預金ファシリティ金利DFRは非公式ながら、中立金利の水準に関するECBの中央値に達することになる。中道派のビルロワドガロー総裁だけでなく、レーン理事など通常はよりハト派的なメンバーの最近の発言を踏まえると、景気抑制的な領域に金利を引き上げることに安定多数が賛成していると思われる。


インフレ傾向は継続している。9月のユーロ圏の総合HICPは速報値で10.0%。その後9.9%に下方修正されたものの、ほぼ二桁。これはピークに近いと考えても不思議はないが、基調的なインフレ圧力指標は引き続き上昇し得ているため、ピークとも言い切れない。たとえばユーロ圏のコアインフレ率は4.3%から4.8%であり、主に賃金の伸びといった要因の影響である比較的硬直的なサービスのインフレ率も上昇中。ドイツの化学産業が向こう二年間について合意した賃上げは3.25%で、小幅に見えるかもしれないが、3000€の一時金の支給を考慮すると昇給が少ないとの印象はない。また、10月28日を期限とする金属労組IGメタルの交渉の結果は賃金面の今後の方向性を占う重要なシグナルとも言える。

欧州圏の物価高を考えると、ECBには大幅な利上げを継続するプレッシャーがかかっていると言え、12月の会合後も引き続き75bpの追加利上げとなる可能性が大きい。さらに、QTについても、金融引き締めの効果が阻害されないことが重要と指摘し、12月にはTLTROを含め、金利以外の項目にも手段が講じられることになる。

こうした中、イタリア国債など債務・GDP比率が高く、財政支出が必要な中で利回りが上昇する環境はスプレッドの拡大を示唆しており、スプレッドの拡大は年末にかけて見られるのではないか。イタリアの財政支出やメローニ首相の政策に懸念がかかるのに加え、ECBの債券購入が終了することになれば、資金流出がおきかねないため、である。こうした動きにも注目である。


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