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中国で注目されている「地摊经济」(露天経済)について

中国での新型コロナ感染は落ち着いてきていますが、中国経済は大きな影響を受けてます。

仕事に復帰できない人もたくさんいます。北京の場合は防疫政策によって、カラオケやクラブ、映画館など人が集まる場所はまだ営業復活してません。昨日も民営の映画配給大手BONAグループの副社長が飛び降り自殺で亡くなったそうです。

コロナ後の失業率について、中国政府から発表されたオフィシャルな情報は見つからなかったですが、修士課程と公務員の採用枠を増やしたり、以前は厳しく取り締まっていた「地摊」(屋台や露店などの露天経営するところ)を積極的に活用していこうという姿勢から見て、だいぶ厳しいのだと思われます。

今日は「地摊经济」(露天経済)という言い方まで作り上げた「地摊」(Dìtān)について。

今までは「城管」という、街の秩序を管理する人たちが無許可経営の屋台や露店を厳しく取り締まっていました。ときにはあまりにもひどいやり方で取締りを行い、傷害事件などがニュースになったりしてます。

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↑昔の資料

しかし、つい先日あるニュースが話題になりました。取締りを行っていた「城管」が「地摊」の経営者(多分昔に取り締まられたことのある人)に電話して出店を依頼したというのです。

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露店の経営者は信じられなくて「もしかしておとり捜査ではないか?」と疑いました、そりゃそう思いますよね。

先日の全人代でも「地摊经济」(露天経済)が政府の経済推進策の一環として広く議論され、ネットでも大きな話題に。もし今自分が出店するなら何を売ればいいかも討論されています。(もちろんネタとしてのものもあります)

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↑元自メディア(BloggerやYoutuberなど)

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↑信託、資産運用

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↑手作りコーヒー

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↑元塾の英語教師で停学中で収入がなくて露店経営になる女性が流暢な英語で外人のお客とコミュニケーションしてる動画が話題に。

普通に食べ物や小物なんかを売るのは当たり前で、予想もできない業種の人達も露天経営を始めています。

以前の露店への厳しい取り締まりについては理解できます。食事の場合、衛生面のリスクがあります。食事以外のものでも、騙されたり、トラブルの際の保証なども非常に難しいでしょう。指定された場所以外での経営は確かにいろんな形での迷惑となります。

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でも今は経済回復のために、わざわざ露天出店用と指定された場所が用意されているのです。

この露店ブームはどこまで経済成長と雇用改善に効くのでしょうか。

「地摊经济」(露天経済)推進の政策は以下の3つの改善として注目されています。

・失業率の緩和
・国内需要の拡大
・在庫消化

失業率の緩和は一番理解しやすいですが、緩和と解決は異なります。一時の緩和は社会的な安定に役に立つでしょうが、これからも露店経営で生活できていける人はそんなにいないと思います。

国内需要の拡大と在庫消化には限界があります。もともとレストランで食事をするはずですが、経済が良くないからと屋台(屋台は大体激安です、でも美味しいところも結構あります)に移行したら、今度はレストランの経営が難しくなるでしょう。

在庫消化についても、出店するために仕入れをしたら工場の在庫が減りますが、売れなかったら結局出店する人の在庫になります。売れたとしても本来デパートやECサイトで発揮する購買力が露店に変わっただけで、結局誰かの損失につながるのです。

数年前にあった「万众创新」(みんな起業しましょうとの呼びかけ)政策の時も似たような感覚でした。社会全体がイノベーションムードになり「就職出来なかったから起業しよう」と思う学生も多かった。

でも結局、起業して成功できる人はほんのわずかで、成功できるような人たちは起業しなくても就職できる人たちでしょう。社会的弱者への偽りの希望となった感が強かったです。

政策をどう解釈するかは人それぞれです。報道では成功例がたくさん取り上げられますが、僕の感覚ではブームに乗って成功できる人は本当に少数だと思います。もちろん今回の露店ブームについてもう少し注目していきます。

北京は連日35度以上の真夏日です、南の方はもっと暑いでしょう。炎天下の出店は大変です、みんなのこの頑張りが無駄にならないことを願います。

ちなみに、以前紹介したマスク生産に素早く転身したワゴン車ブランドの「五菱宏光」の車種で非常に露店に向いてるものがあるとの理由から「地摊经济」の推進策が発表されてから株が150%も上がっています。この企業も注目です。

(参考資料)


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