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小池百合子知事と孫正義社長に仕えて感じる奇妙な相似〜マイノリティ出身の武闘派改革者〜

小池都政改革に関わって

小池都政の最初の2年、東京都顧問兼都政改革本部特別参与としてオリンピック調査や都政改革(特に上下水道改革等)に関わった。

その時のオリンピックの仕事は、こちらの記事がよくまとまっている。
特に、ボート•カヌー会場の見直しを担当した。


正式なレポートはこちら。

小池都政改革は、透明な情報公開を最優先しているので都民もジャーナリストもいつでもアクセスでき事後検証可能だ。
(今思っても都政改革本部が立ち上がってたった4週間で良くまとめたと思う)

11月に入って乗り込んできたIOC、国、組織委員会との4者協議にも東京都を代表して参加することとなった。
当初、これまでの交渉に当たってきた都職員や組織委員会からはIOCは招致都市契約を盾に極めて一方的で交渉の余地のないタフネゴシエーターとして伝えられていた。が、実際に協議してみると論理的で柔軟な話し合いのできる相手だった。(ただIOCとしてはこれ以降、知事と周辺チームを警戒しているところあり札幌へのマラソン移転などは、都に事前相談なく決定された。)


この時に、納税者(Tax Payer)にとって膨大な予算がかかること、IOCと招致都市との一方的な関係、スポンサーやNBC等のTVの放映権等など、様々な実態が明らかになった。その時に、IOCと招致都市の力関係を変えた事が、今回コロナ禍の開催延期の追加費用負担にあたっての交渉力にも繋がっている。

都政改革では3500億円分の無駄な事業予算を削り待機児童や貧困問題に振り向ける事ができた。都内の待機児童が6000人7割以上削減できた等、成果も大きい。

もちろん、無電柱化等、公約キャッチコピーに終わってるものもあると思うが、残業ゼロ、満員電車ゼロ等の公約は、このコロナ禍での働き方改革を都として推進することで大きく前進する可能性がある。
また、今回の危機でGreater Tokyoとして1都3県が運命共同体として連携して事に当たる重要性が確認された。

夏の関東全域の水害リスク、そもそもの東京一極集中問題、満員電車等、コロナ禍を契機に「開」「疎」な広域のGreater Tokyoエリアを作っていく。1期目のそれらの残公約を1都3県で連携して解決していく。


今回の都知事選は実質的には小池都知事の信任投票だった。前回2016年都知事選を75万票上回り、366万票という歴代2番目となる得票数は大きな推進力になる。

「責任の重さを改めて感じており、しっかり働けと言う皆さんの声だと思っている」(当選後の小池都知事)

等身大の小池百合子都知事


等身大の知事は、
一言でいうとタフな仕事人間だ。

”再婚相手を探す余裕もなかったし、そもそも、その気もなかった
単純に、仕事が楽しくてしようがなかったからだ。”  
”政党の立ち上げ、再編など、そのたびに全力を尽くした。
いつもトコトンやらなければ、気がすまない性格である。
ほとんど、一睡もしない日が何日も続いたこともある。”
       (小池百合子 著「女子の本懐」 第3章 一兵卒として)

頭の回転が早い、自分の言葉で複雑なことをシンプルに理解し纏めて話せる。

今回のコロナ禍でも専門家チームメンバーの説明や局長の説明を後で自分なりに補足説明する。

直観的な決断が早く的確。

緊急事態宣言2週間前のロックダウン発言が象徴的。今、イギリスやアメリカではロックダウンが1週間早ければ、死者は半減3.6万人の命が救われたという研究結果が発表されている。

東京都と大阪府が、経済への影響を懸念する国を追い込むように、緊急事態宣言を求める意思決定をしたことが、現在の結果に結びついている。

(結果は、以前よりnoteで書いてきたが「検査数により上下する感染者数」よりも、「重症者・死亡者数」でみるべきだ)


打ち合わせの雰囲気はフラットで知事はダジャレ(オヤジギャグ)を良くいう。

過激な改革案のアイデアが飛び出たときも

「あら、ゴーワン(剛腕)♡」

とか、にこにこしている。
(しれっとしててこっちの方が余程怖い)


敵と闘う時

今や最強の知事に4年前を記憶している人も少ないかもしれないが、2016年自民党の公認候補を破って当選した小池都政は議会のサポーターが3名しかいないオール野党のねじれ状態で始まった。

国は議院内閣制で政権与党が組閣をする総理の首班指名する。
地方自治体は大統領制のように首長と議会がそれぞれ公選される。


なので大統領制の最大の鍵は議会での多数派形成だ。

就任直後の定例会見で、知事給与を半額に削減する条例案の提出を発表する。

「身を切る改革」としてすでに知事報酬の削減は公約だったが、本当の狙いは長年の利権体質の自民党都議会議員の締め上げだ。

半減後の年収は1448万円で、都道府県知事としては全国最低だ。
これに対して都議の報酬は年約1700万円。これとは別に受け取る政務活動費720万円を加味すると、仮に条例案が通過した場合、都議は知事より1000万円も多く受け取ることになる。
   都議は、条例に賛成すれば、自らの報酬の削減に向かい合わなくてはならず、反対すれば、身を切る改革に逆行したとみられ、極めて苦しい立場に追い込まれた。
都議の年収が知事の年収(約1448万円)を上回る事態となっており、7月の都議選を控え議会側が改革を迫られていた。

結局、追い込まれる形で、選挙直前に報酬2割を期限付きの特例で削減。
都議の年収は約1715万円から約1372万円にしたが、最初に仕掛けてわかりやすく

「スパンと減額。半分です」

と訴求した知事に比べ全くインパクトがなかった。

さらに都独特の慣例であった議会による予算の復活要望枠を廃止。

都議会議員が選挙区の商店街活性化対策などにバラ撒いていた予算を事前説明なく廃止、グレーな既得権益を奪っていく。


最終的に、都議会自民党は大敗。


都民ファーストが躍進し議会の運営の力も手に入れ、今回の選挙では、自民党執行部の「小池推薦」も拒否のうえで、歴代2位の得票数の支持獲得。

盤石だ。

何故、日本で仕事ができる女性は「女帝=怪物」のように言われるのか

・24/365の仕事スタイル
・ユーモアを交えた徹底した会議、熟考そして最後は決断
・早めの判断と強めの発信
・負けられない相手とは徹底的に闘う
・わかりやすい仮想敵と劇場型発信で世論を味方につける
・当時者はやや混乱と反発、ただそれでも押し切り結果を残す

ここまで書いて、ふと、誰かに似ていることを思い出した。

長年仕えた上司、孫正義氏だ。

そういえば、小池都知事や孫社長を嫌う人も
そういえば嫌い方も似ている。

ザ・にっぽんのおじさんだ。

日本のおじさんは仕事のできる女性にも、アウトサイダーの改革者・成功者にも、どこか意地悪で批判的。(個人的にも何度も現場に遭遇した)

日本社会の底流に流れるマイノリティへの差別心は根深い。

表面的には実力を認めているようで、どこかで薄暗い嫉妬心を持っている。
おじさんがやれば、剛腕、したたかなやり手と評価されることが女性だと徹底した印象操作の批判が影でなされる。
しかも、男性だけでなく女性の一部も何故か敵にまわる。

大風呂敷、錬金術師、
女帝、怪物、

女社長、女性起業家という言い方や女性活躍という言葉自身、相当失礼だが、自然と普段使われている。

日本社会の男性中心の保守本流(自民党や経団連銘柄大企業)からすると
「怪しい血筋」なのだ。

藤吉雅春 Forbes JAPAN編集長@fujiyoshimasa
だからこそ、この世界で生きていこうとする人間は経歴をロンダリングするのです。エスカレーター式で大学まで行けた2世か、東大法学部卒の官僚出身者が多い政界で、「怪しい血筋」は仲間に入れてもらえない。そもそもこの土台となっている世界が、私からすると異常なんですよ。

閉鎖的な共同体からその様に位置付けられるとどうなるか。

仲間を集め、消費者や有権者という究極の顧客を対象に、既得権益と徹底して闘い、結果を残し続けるしかない。

たとえ何とよばれようと。

逆にいうと、正統な血筋のザ•にっぽんのおじさんは、どうしてとインナーサークルの論理が優先し、結果よりも中での融和を優先する。

エスタブリッシュメントと組んだ時、改革者は取り込まれ顧客の支持を失い、

そして存在意義そのものを失う。

自民党執行部の「小池推薦」を受けていたら、都民ファーストは次回の都議会選挙で完全に死んでた。自民党による独自候補擁立は回避させつつ、抱きつきに来たらひらりとかわし、改革派としてのキャスティングボードを保持し続ける、この辺りのセンス、したたかさは絶妙だ。

無敵になったように見える時、小池都政の今後は


政治家が権力闘争にしたたかな事

これは、研究者が頭が良い事、事業家が必要な資金を調達できる事、画家が造形表現の基礎スキルを持っている事、などと同じ

「志」以前に、良い仕事をするための前提条件だと思う。

藤吉雅春 Forbes JAPAN編集長@fujiyoshimasa
〈「したたかですよね」と聞くと、こんな言葉が返ってきた。それは小池らしい答えだった。
「世界中の女性でしたたかでない人なんて、いませんよ。そもそもしたたかでない政治家なんて、政治をやめた方がいいと思う」〉
 この一言が彼女の本質だと思い、連載を2回で私は辞めたのでした。

安定した支持基盤を形成できない政治家に長期の未来を託することはできない。

”本書が語る小池都知事の虚実ないまぜの偶像は、もはや誰も信じていないのではないか。あまり彼女を怪物扱いせずに、等身大で政策の中身や能力を論じるべきときに来ているのではないかと思う。”
”あれだけお綺麗で、かつ才覚が利く人がいれば、実際に男性たちの目がくらんでいたのは確かだと思います。でもそうした男性に与えた影響を考える上では、小池さんを個人として否定するよりも、社会の問題だと受け止めるべきです。”
”それに、世の中は上昇志向の強い人を許さないところがあるんです。女性の場合は特にそうで、そういう人がコケると叩く風潮がある。でも政治家というのは権力志向のある奇妙な人たち。”

個人的にも、ネット世論やメディアバッシングと、一般市民との政治感覚が乖離してきていると思う。市民は、仕事の結果でちゃんと評価する。ネット世論のヘイトのほとんどがノイズで、冷静な世論ではないことを都民は理解している。

いい加減日本も、美人だとか女性だからとか政治家を評価する時代ではない。

ただマイノリティが強大な保守本流との自分の闘いに勝利し自らがその存在となった時、社会を変える本当の仕事が始まる。

例えば、ブロードバンドやモバイル・インターネットの実現に向けてNTTや総務省と闘ってきた時のソフトバンクは、ギラギラしたしたたかな戦闘集団で新しいサービスや価値を提供していた自負があった。

日本を代表する大企業になったソフトバンクは(中のことはわからないが)本当に世の中の人々を幸せにする価値を提供しているのか、今は迷走しているように見える。(諸説あります。個人的見解です。)

笹舟が、軍艦になったとき、その真価が問われる。

今思えば、オリンピックではなくコロナ禍で2020年代が始まった事、そしてこのタイミングに女性の都知事が再び選ばれたことは、世の中が大きく変わる予兆の気がする。

小池都知事が

「引き続きガラスの壁との暗闘に才能とエネルギーを費消するのか」

そのような壁は軽やかに飛び越え

「類まれなる経営能力・実務能力・発信力で、新しい東京都を作っていくのか」

軍艦のキャプテンとなった小池知事の2期目に大いに期待しています。

追記:「上司にしたい有名人」の1位と4位、池上彰さんを除く日本人の2人と直接仕事ができた私は幸せ者なのかもしれません。2人は単に、有名人というのではなく、やはり日本人の平均的な市民は仕事ができる改革者を求めている証左だと思っています。



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