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社員の“やる気”を引き出す独立支援/のれん分け制度

 アリは、集団で食料の調達を行う社会性昆虫として知られているが、群れの中で熱心に働くのは2割に過ぎず、残り8割のアリは全力を尽くしていない。その中でも、普通に働きながら手を抜くアリと、常にサボっている怠け者のアリに分かれて、トータルでは「働きアリ(2割)/普通に働きながら手を抜くアリ(6割)/怠け者アリ(2割)」という内訳になる。

これは「働きアリの法則(2:6:2の法則)」と呼ばれるもので、人間の行動習性と似ていることは、昔から著名な経済学者達が指摘している。会社では上位2割の有能な社員が、売上の8割を稼ぐという特性は「パレートの法則」として有名だ。

いつの時代でも、経営者はすべての社員のやる気を最大限に引き出そうと注力するが、人間は決められた報酬(月給)の中では、それを獲得する労力は最小限で済むように自ら調整する習性がある。(最小努力の法則)

そのため、社内の新陳代謝が行われない組織では、それほど上がる見込みのない給料を、最小限の労力で貰おうとする社員ばかりが増えるようになる。この状況を打開するには、上位の有能な社員が会社から“卒業”していくシステムを作ることが有効だ。

働きアリの法則によれば、上位2割の働き者が定着している間は、残り8割のアリは労力をセーブしているが、集団の中から働き者が去ると、怠けていたアリの中から働き者が現れるようになり、新たに2:6:2の集団になることが実験からも明らかになっている。

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この法則に基づくと、社内のモチベーション(やる気)を高める方法として、全社員の給料を一律上げたとしても、その効果は一時的なものでしかない。高成績の社員ほど高い給料を与える実力主義の報酬制度は、一部の有能な社員の“やる気”を引き出すことはできるが、逆に「熱意のある社員」と「努力を諦めてしまう社員」の乖離を大きくしてしまうリスクがある。

また、実力給といっても「雇用している社員」という枠の中では、給与の支給額には限度があり、経営者と同じような夢を追いかけられるわけではない。そのため、有能な人材ほど、現職に留まろうとする意識は薄く、独立起業を考えるようになる。企業にとって、勝手に独立されてしまうのは痛手になるし、ライバルとして敵対する懸念もある。

それならば、やる気のある社員が、独立して経営者になれるまでの道筋を作り、起業をバックアップする体制を会社側で整えることが、優秀な人材を“身内”として留めることができ、社員全体のモチベーションを高める方法としても理想的だ。実際に、多店舗展開をする飲食チェーンでは、「社員独立制度」や「のれん分け制度」などを作り、従業員のやる気を駆り立て、チェーン全体の業績拡大にも繋げている。

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【飲食業界に広がる社員独立制度】

 大手の飲食企業では、フランチャイズ方式(FC)で全国に店舗を拡大している例が多い。FC加盟者が資金調達をして新店舗を出店し、FC本部は、加盟店の売上に対するロイヤリティで収益を得るビジネスモデルである。

しかしこの方法では、飲食業の未経験者が店舗オーナーとなるケースも多く、店によって料理の品質にバラツキが生じてくる。接客サービスについても、マニュアルは用意されているものの、オーナーが開業時に受講する数週間のセミナーだけで身に付くものではない。

そこで、外部からFCオーナーを募集するのではなく、自店で3~5年以上働いて一定レベル以上の技量と経験を積んだ社員に限定して“のれん分け”をさせる制度を導入した飲食企業が業績を伸ばしている。

仕組みとして参考になるのが、全国に1200店舗以上を展開するカレーハウスCoCo壱番屋の「ブルームシステム」という社員限定のフランチャイズ制度である。

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同社では、将来の独立希望者を正社員として採用し、調理技術、接客オペレーション、人材の管理など、カレー店舗の経営に必要なノウハウを9段階の等級に分けて習得させ、3等級以上を獲得した者に、自分の店舗を出すことを認めた“のれん分け”をしている。

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独立までには等級を上げることに加えて、自己資金で 200万円以上を貯めることが条件だが、それを超えて必要な資金は、壱番屋が債務保証をして銀行から借りられるサポート体制が整っている。開業後は、本社に対するロイヤリティの支払い義務は無いため、売上から家賃、食材の仕入れ、スタッフ人件費、税金などを差し引いた利益が、そのまま独立オーナーの取り分になる。

壱番屋では、カレーソースなどの調理を各店舗で行うのではなく、愛知、佐賀、栃木の3ヶ所にある食材工場で一括生産して、全国の店舗に配送するセントラルキッチン方式を導入しているため、本社はFC店舗への食材販売が主な収益になっている。

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壱番屋に入社する社員の中でも、独立まで辿り付くのは1割未満という狭き門だが、これまでに 約700人が独立オーナーとなっている。オーナーの平均年収は「1000万円以上」と開示されており、自分の店を2店、3店と増やしていくことも可能だ。身近な成功者が見えることで、壱番屋で働くスタッフ全体のモチベーションを高められる効果もある。

本社は、銀行に対して独立オーナーの債務保証をするため、“のれん分け”を認める人材の選定には厳しくなり、それが全国に出店する店舗のレベルを維持することに結び付いている。

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