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ロボット家具が変えるマイホーム環境と賃貸ビジネス

 日本の住宅環境は、かつて「ウサギ小屋」と呼ばれて、欧米と比べて狭いことが日本人にとってのコンプレックスになっていた。しかし、世界の大都市では、いま住宅環境の狭小化が進んでいる。背景にあるのは、ミニマリストや断捨離の価値観が広がり、無駄なモノを省いて生活するスタイルが注目されていることや、大都市の家賃高騰により、狭小アパートメントの開発が進められていることである。

2015年末、ニューヨークのマンハッタンに建設された「My Micro NY(マイ・マイクロ・ニューヨーク)」は、ニューヨーク市が主催したマイクロ・アパートメントのコンペで優勝した建物で、プレハブ工法による9階建てのビルに55戸の区画が造られている。総工費は1700万ドル(約18億円)で、1区画あたりの平均面積は 約24~33平米と狭いながらも、コンパクトな空間で快適に暮らせる機能が集約されている。

この物件は、コンパクトでありながらも、ホテルライクな高級アパートを実現したもので、キッチン・トイレ・収納式のベッド、ビルトイン家具などが効果的にレイアウトされている。住民向けのアメニティとして、定期的に室内清掃やシーツやタオルの取り替えなどを行うハウスキーピングサービスが付いているのも特徴で、家賃は月額2,650~3,150ドル(約26~31万円)の設定となっている。


【ロボット家具で実現する住宅の狭小化】

狭いスペースでも快適に生活できる住環境を開発することは、少子高齢化が進む先進国において、住宅ビジネスのトレンドになっているが、それをテクノロジーの面からも実現させる取り組みが出てきている。

2015年に米マサチューセッツ州ボストンで創業した「Ori」は、家具をロボット工学のテクノロジーで進化させることを目指すスタートアップ企業で、「ロボット家具」という新たな市場を開拓している。

同社が開発したロボット家具は、生活の用途によって可動方式で機能を変えられるため、ワンルームの狭い部屋でも、リビング・デスクワーク・就寝などの用途に変更することができる。その動作はスマートホンのアプリやスマートスピーカーからの音声指示で手軽に行えるため、一日の時間帯別に部屋のインテリアを変えることが可能だ。この製品は、1つのスペースを3倍の用途で活用できるようにすることをコンセプトに開発されている。

Ori社に対しては、大手家具量販店のIKEAが業務提携をしており、2020年末までには、IKEAブランドのロボット家具「ROGNAN」として、住宅面積が狭い日本と香港での先行販売が計画されている。

ロボット家具が普及する時代には、賃貸アパートの家具は住宅設備の一部として「備え付け」が標準となり、賃貸ビジネスの形態にも変化が訪れることも予測されている。

入居者は、物件の賃貸料+家具のレンタル料を払うことになるが、大型家具を運ぶような引っ越し作業を、自前で行う必要は無くなるため、従来のような契約体系(例:2年単位の更新)ではなく、1ヶ月から数ヶ月単位で住居を変えていくスタイルも可能になり、働き方も含めたライフスタイルにも大きな変化が訪れることになるだろう。

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JNEWS編集長(井指 賢)

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