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ソーシャルデザインに必要な力は身に付いたの? 2019年度の「社会創造演習」を振り返る

いつのまにか梅雨も明けて夏真っ盛り。はや4年目となる京都精華大学の前期授業も先週で終了しました。

僕が担当させていただいた授業は、人文学部2年生の必修科目「社会創造演習」(単位取得予定者およそ70名)、全学共通科目「ソーシャルデザイン概論」(単位取得予定者およそ200名)、デザイン学部の選択科目「デザインスキル6(言葉とデザイン)」(単位取得者14名)など。

どの授業も初めての挑戦と失敗、確かな手応えがあった充実の4ヶ月でしたが、このうち「社会創造演習」について忘れないうちに振り返ってみたいと思います。


〈目次〉

第1回
そもそも「社会創造演習」って?/例えばこんなマイプロジェクト7選!

第2回
〈ソーシャルデザインに必要な力〉を測る32の指標/アンケート結果(全体編)/2020年度の32の指標

第3回
「〈本来の自分〉として一念発起する力」とは/〈本来の自分〉編のネタ元/〈本来の自分〉編のアンケート結果

第4回
「秘められた〈リソース〉に光を当てる力」とは/〈リソース〉編のネタ元/〈リソース〉編のアンケート結果

第5回
「日々の煩悩を〈ほしい未来〉に転じる力」とは/〈ほしい未来〉編のネタ元/〈ほしい未来〉編のアンケート結果

第6回
「必要な〈デザイン〉を自在に実現する力」とは/〈デザイン〉編のネタ元/〈デザイン〉編のアンケート結果

第7回(※近日公開!)
総まとめ


そもそも「社会創造演習」ってどんな授業?

人文学部のソーシャルデザイン・プログラムの中心に位置づけられている「社会創造演習」は、月4、5限の2コマ、火3限の1コマの合計週3コマという、かなり贅沢なカリキュラムで行われています。

2日連続で学生と向き合うことができたのは、学びを深めていく意味でとても重要だったと思っているので、カリキュラムづくりに関わった先生たちには感謝しかありません。

いちおうの授業の目的・到達目標は、「ソーシャルデザインの基礎知識を応用する力を身につけることができる」、「仲間と対話を重ねることで、思いをオープンに共有する力を身につけることができる」としていました。

とはいえざっくりしているので、具体的には、ずっと「空海とソーシャルデザイン」というテーマで深めている〈ソーシャルデザインに必要な5つの力〉のうち、「大いなる〈源泉〉を生きる力」以外の4つの力を身に付けていくことを指標としました。それに向けて、15週を振り分けていきます。

序盤はソーシャルデザインに必要な力についての講義と、それを身につけるためのオリジナルワークを実施します。書籍にもなった「beの肩書き」も、実は〈本来の自分〉編のために編み出したワークだったのでした。

序盤のゴールは、以下のソーシャルデザイン曼荼羅を完成させて、ひとりひとつマイプロジェクトを考えること。

周りの4つの四角「どんな存在として?」「どれをいかして?」「どこに向かって?」「どんな方法で?」が埋まっていくと、自ずとやってみたいことが浮かび上がってくる、そんな構成になっています。

このフレームワークの完成に3年もかかってしまいましたが、京都精華大学独自のソーシャルデザイン教育のためのアプローチ="SEIKAモデル"として、多くの方に使っていただけたらと思っています。(そのために『空海とソーシャルデザイン』改め『ソーシャルデザイン曼荼羅』(仮)をはやく完成させなくとは!)

そして中盤〜終盤では、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんという4人組になり、Aさんから順番に、曼荼羅をもとに仲間のサポートを受けながら実行します。そして実行の翌週には、20枚のスライド×20秒のぺちゃくちゃスタイルで、クラス全員の前で発表します。

とはいっても"実行"は最初の一歩なので、同じグループのメンバー向けのプロトタイプになります。そこで、グループ外の人向けにマイプロジェクトを体験できる機会として、「マイプロマルシェ」という新たな挑戦の場をつくることにしました。マルシェでの実行は全員必須ではなく、有志を募っての開催になります。(メインの写真はマルシェでの一コマで、みんなで「最後の晩餐」を再現するという企画でした)

「社会創造演習」のシラバス

〈序盤:講義&ワーク〉

1週目   オリエンテーション/〈本来の自分〉編①
2週目〈本来の自分〉編② /〈リソース〉編①
3週目〈リソース〉編②/〈リソース〉編
4週目〈ほしい未来〉編/〈デザイン〉編①
5週目〈デザイン〉編②/
〈デザイン〉編

〈中盤〜終盤:マイプロジェクト演習〉
6週目 Aさん、Bさん相談/Aさん準備
7週目 Aさん実行/Aさん発表準備
8週目 Aさん発表/Bさん準備
9週目 Bさん実行/Bさん発表準備
10週目 Bさん発表/Aさんのマイプロマルシェ
11週目 Cさん、Dさん相談/Cさん準備
12週目 Cさん実行&発表準備/Bさんの
マイプロマルシェ
13週目 Cさん発表/Dさん準備
14週目 Dさん
実行&発表準備/Cさんのマイプロマルシェ
15週目 Dさん発表/振り返り


例えばこんなマイプロジェクト7選!

どんなプロジェクトが誕生したのか、全部で約60のマイプロジェクトのうち、クラスメイトからの評価が高かった、あるいは僕にとっても印象が強かったプロジェクトを7つ厳選して、ダイジェストで紹介したいと思います。(説明文はややこなれていない感じがあって恐縮ですが、その理由はソーシャルデザイン曼荼羅に倣って、以下のテンプレートで統一しているからです)

〈本来の自分〉として、〈ほしい未来〉に向かって、大好きな〈リソース〉をいかして、〈デザイン〉することで、まずは〈最初の一歩のゴール〉を目指すプロジェクト

それでは、さっそくいきましょう!


【1】カップラーメンはもうやめた

未知に挑戦する「宇宙飛行士」のような人として、学生が気軽に多くの体験をできる未来に向かって、大好きな料理をいかして、料理が苦手な学生のための電子レンジ料理教室を開催することで、まずは自炊のハードルが下がることを目指すプロジェクト

→ 前期でもっとも共感を集めたプロジェクトがこちらでした。軽く下ごしらえをすれば電子レンジでチンするだけで、おいしいカレーやフレンチトーストが出来上がり! ということで、「自分にもできそう!」という声が多く集まっていました。何より心がチクチクする感じがあるプロジェクト名がいいでしね。クラス全体としても「一人暮らしの自炊」というテーマには強いニーズがあるようでした。


【2】死んでも安心 幸せのチケット

人を喜ばせるために動く「書道家」のような人として、神社がもっと身近になる未来に向かって、大好きな御朱印をいかして、オリジナルの御朱印をデザインする場をつくることで、まずは神社に興味を持ってもらうことを目指すプロジェクト

→ そもそも御朱印とは成仏するために功徳を積んだ証であり、自分が死んだときに棺に入れることで、縁を結んだ神仏がお迎えにきてくれるというものでした(ということを、学生から初めて聞いて知りました)。そんな御朱印にもっと興味をもってもらうために学生が提案したのが、マックのポテトが好きなら「保天止神社」、足の指をぶつけたくないなら「指角神社」など自分好みの架空の神社を考えて、その御朱印をデザインするという斬新なアイデア。僕もサプライズで「與ッ志結(ヨッシュ)神社」をつくってもらって感動しました◎


【3】ドキッ!イケメンだらけのキャンパスライフ

非日常に飢えた「ゲーマー」のような人として、何だかつまらないと感じている人が刺激的な非日常を体験できる未来に向かって、大好きなイケメンをいかして、イケメン的なセリフを盛り込んだオリジナル脚本を執筆し、演じてもらうゲームをつくることで、まずは参加者同士が自分の違う一面を発見できることを目指すプロジェクト

→ 「徹夜で考えた」というセリフひとつひとつが面白く、イケメンになりきった参加者は大声で笑って日頃のストレスが発散できた、という予想外の効用もあったようです。実は脚本を書けるという隠れた才能にこのときみんな気づき、クラスメイトからリスペクトが生まれていましたね。最大の学びは"イケメンの力"。それに尽きると思います。


【4】FREEDOMCAMP

周りからのメッセージを自分のパワーにして輝く「歌手」のような人として、固定概念に因われない自由な未来に向かって、大好きなキャンプをいかして、キャンパス内でどこまでできるのかに挑戦するキャンプを実施することで、まずは「意外とできることがあるんだな」と気づくことを目指すプロジェクト

→ キャンパスの中で何時以降ならキャンプしていいのか、どこなら花火をしていいのか、ひとつひとつ大学の方に確かめながら、できることとできないことの線引を見つけていく、という興味深いアクションリサーチ型プロジェクト。わざわざ養鶏農家さんを訪ねて成鶏をいただき、丸焼きにするなど、メンバーひとりひとりの挑戦を引き出していました。


【5】はっぴージャムジャム

わくわくを共有する「インスタグラマー」のような人として、朝食をしっかり食べられる未来に向かって、大好きなエディブルフラワーやハーブをいかして、朝に食べたくなるハーブ入りのジャムをつくることで、まずは朝しっかり起きるきっかけをつくることを目指すプロジェクト

→ 「自炊」に続いて、学生に多かったニーズが「早起き」でした。そのために「面白すぎる味噌汁をつくる」というグループもありましたが、こちらは「朝食べたくなるジャム」というコンセプト。見た目にもこだわっていてワクワク感がありますし、しっかりハーブの効能も取り入れられていて、素直に僕もつくってみたいなと思いました。


【6】ペッツ

命にふれることを大切にする「農家」のような人として、誰でも自制心を強化できる未来に向かって、大好きな動物をいかして、ペットとしてハムスターを飼いはじめることで、まずは遊びすぎずに家に帰る習慣を身につくことを目指すプロジェクト

→ シンプルですが、かなり本質的ですね。授業時間中に近くのペットショップでハムスターを買いに行くという行動力も素晴らしかったです。ちなみにハムスターにしたのは1,000円前後と手が届く値段なのと、寿命が2年ほどで在学期間中しっかりともに暮らすことができることだったそう。ちなみに観賞用とそうではないハムスターがいる、というのはこのとき初めて聞きました。もちろん冗談ではなく本気で、最大の学びは"命を預かる責任"と応えてくれました。今ではしっかり家に帰れるようになったようです。


【7】Picture Chain

どこでもステージにする「漫才師」のような人として、誰でも気軽に英語を話せるようになる未来に向かって、大好きなアナログのゲームをいかして、英単語で絵しりとりすることで、まずは遊びながら英語力がアップすることを目指すプロジェクト

→ これは言葉遊びが好きということもあり、個人的にかなり気に入っているプロジェクト。例えば前の人が「リス」っぽい絵を書いたとして、次の人は「リスかな」と思ったら英訳(squirrel)を検索し、次に最後のLから始まる絵を書く、というもの。ひととおり終わってから、答え合わせをしていきます。もし「レモン(lemon)」っぽい絵を書いたのに次の人が「ラグビーボール(rugbyball)」と解釈してしまうと、そこからちょっとズレていく展開に。ここで素晴らしいのが、例えば「退屈(boring)」のつもりで書いた絵を「体育座り(sitting on the floor grasping one's knees)」と解釈したとき、2つの言葉を知ることができるので、むしろ間違えたほうがお得になる、ということ。この面白さが言葉で伝わるか微妙ですが、どこでもすぐできるので、ぜひやってみてください。


他にも、失敗を笑える未来に向かってプラモデルを説明書なしでつくるプロジェクトや、教科書を開きたくなるくらい元気になる栞をつくるプロジェクトなども面白かったです。こうして66人の好きなことや得意なこと、あるいはモヤモヤ、そうした視点の豊かさに触れて、何より僕自身視野が広がった4ヶ月でした。


次回はアンケート結果を分析!

この授業での学びを可視化するため、初回と序盤の最後、そして期末と同じ内容のアンケートを取り、その推移をみていきました。

詳細は次の記事に譲りますが、マインドセット(ある価値観や考え方が重要だと思えるかどうか)、スキルセット(重要だと思えることを実際にできるかどうか)両方とも成長を読み取ることができ、ほっとしたとともに、手応えを感じています。

どんな質問項目で、どんな傾向がみえてきたのか。次の記事から、アンケートの全体像、〈本来の自分〉編、〈リソース〉編、〈ほしい未来〉編、〈デザイン〉編、総まとめの6回に分けて分析してゆきたいと思います。

第2回につづく〉

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はじめまして、勉強家の兼松佳宏です。現在は京都精華大学人文学部で特任講師をしながら、"ワークショップができる哲学者"を目指して、「beの肩書き」や「スタディホール」といった手法を開発しています。今後ともどうぞ、よろしくおねがいいたします◎

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勉強家の兼松佳宏

1979年秋田県生まれ。元greenz.jp編集長。 2016年にフリーランスの勉強家として独立し、京都精華大学人文学部特任講師に着任。"ワークショップができる哲学者"を目指して「スタディホール」などの手法を開発中。著書に『beの肩書き』、連載に「空海とソーシャルデザイン」など。

空海とソーシャルデザイン 2019

空海とソーシャルデザインについてあれこれ調べたことをまとめてゆきます
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