見出し画像

7月か、9月か、それだけが問題だ

ECBの金融政策はタカ派の声が強くなりつつある中、年末までに計3回それぞれ25bpの利上げが織り込まれている。景況感指標は弱いながらも、経済活動指標は持ち応えており、4月のPMIデータはロシアによるウクライナ侵攻に関わらず、経済のモメンタムが持続していることを示唆し、3月のHICP改定値はインフレ圧力がさらに広範に及んでいることを明らかにした。

こうした状況から理事会内では利上げ開始をこれ以上先送りしないというコンセンサスが高まっていると考えられる。戦争による経済への影響が深刻にならない限り、利上げを実施するというスタンスは、それ相応に確立しており、ひょっとすると利上げは見送るかも、と考えられた思惑とは裏腹に、利上げ開始は前提にまさに「7月か、9月か、それ(だけ)が問題だ」になっている。ECBは6月に7月の純資産購入の終了を発表、7月か、9月の利上げ開始に向けて市場誘導を始めるのではないか。

7月か9月か問題は、総合すると9月に軍配があがると考える。理由は3つ。

第一に、中国の成長率が思うより悪化していることなどから成長の減速懸念が残ること、である。過去、2008年や2011年の景気後退の直前に実施されたECBの利上げなどの政策上の失敗を考えれば、ロシア産ガスの供給停止とそれによる欧州へのネガティブインパクトは、行動を先送りするのに十分な理由である。

第二に、かねてより、ラガルド総裁の発言では、まず資産購入を中断し、その後利上げを検討する、としていたことがある。7月まで純資産購入を続けておきながら、利上げを決定する、とするのは時間的に制約が大きいのではないか、と考えられる。

第三に、ラガルド総裁がデータを重視して利上げタイミングを図ると、再三発言していることを考えると、利上げ開始の時期はより広範なコンセンサスをECB理事会内に形成してから、とする総裁の権威を図るために、時間をかける公算が大きい、ということである。

もっとも、利上げ開始は7月だという見方も根強く、利上げを実施しないとなれば、金乳環境を緩和させない工夫が必要になる。それがないのであれば、7月利上げも否定できないし、また、インフレ期待の不安定化を示す指標や賃金上昇の勢いの急加速が相次げば、やはり早期の利上げを考えざるを得ないことは見ておきたい。

いいなと思ったら応援しよう!