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阻害要因を排除することから始まるキャリア自律

こんにちは。Funleash志水です。前回の記事もスキやメッセージをありがとうございました。今年も日本列島が薄ピンクの桜で覆われる季節を迎えました。

今日は、近年のバズワード「キャリア自律」という言葉について考えてみたいと思います。
経営層や人事責任者から「これからは会社に頼るのではなく自分で主体的にキャリアをつくる社員を増やしたい」という相談を受けることが多くなりました。
そのたびにキャリア自律という言葉だけが独り歩きしている感覚を覚えてしまいます。

キャリア自律とは、文字通り、個人が自分のキャリアを考えて自律的にキャリア開発を行っていくことを指します。

自律というは、「外部からの支配・制約などを受けずに、自分自身の価値観・信念、あるいは自分で立てた規範に従って行動すること」ですよね。そもそもキャリアは人生の重要な一部ですから、キャリア自律してほしいと会社が指示する時点で強制された自律のような気がしてなりません。

驚かれるかもしれませんが、外資系企業では『キャリア自律」という言葉を聞いたことがありません。「自律してください」とか「主体的に考えてください」とかいわなくても、キャリアは自分のもの、自分で考えるのが当然だという前提があります。そんな人たちが集まる外資系企業では、自分が挑戦したい仕事や成長するチャンスが組織にないなと感じたら、社員はさっさと転職します。せっかく獲得した人材に辞められては困るため、あの手この手で社員から愛想をつかされないように会社は対策を講じる。魅力的な報酬を用意したり、働きやすい場所を提供するために努力しつづける動機が働きます。

最近では日本企業においても、社員のキャリア自律を促進するために急ピッチでジョブ型を導入したり、給与テーブルを見直したりしています。ところがですね、あれ?と思うことがあるのです。
皆さん、ちょっと立ち止まって、自分の所属する組織の制度や文化を「観察」してみてください。
果たして、みなさんの組織では、「社員が自分の価値観や信念、規範に基づいて行動できる」ような環境が用意されていますか?

ここでご自身が所属する組織について、下記の質問を考えてみてください。

▢ 定期的な異動・ジョブローテーションが実施される
▢ 関心・興味があるポジションに社員が手を挙げる公募制度がない
▢ 本人の希望に関わらず引越を伴う転勤が命じられる
▢ 年初に部門目標が上司から伝えられるのみ。自分で「目標」を立てられない
▢ 異動、昇進・降格などについて背景や事由について明確な説明がない
▢ 給与(報酬)の構成要素やどのように決まったのか明確な説明がない
▢ 定年制度がある(一定の年齢になると役職や雇用条件が変更される)
▢ 組織の中にある職種・必要要件が社員に開示されていない
▢ 上司や人事部と定期的なキャリアについて相談する機関・機会が設けられてない

上記はすべて「キャリア自律を阻害する要因」です。
ボックスに3-4つ☑が入れば黄色信号、全部☑が入る場合は赤信号です。
つまり、社員の成長や成功を目的とした真のキャリア自律ではなく、会社にとって都合のいい名ばかりのキャリア自律でしかありません(大抵の場合は悪意ではなく、気づいてない。会社が世の中に追いついてないのです)
働き手である社員が、これらの阻害要因を発見したら、改善や廃止の検討を依頼する。自分で考え、声を上げ、行動するのが自律した社員なのですから。

昨日の日経新聞で見つけた記事。

大和ハウス工業は4月から、60歳で一律に適用してきた役職定年を廃止する。同社の定年は65歳だが、一部の例外を除いて60歳に到達した翌年度以降は年収ベースで3割ほど下がり、やる気の低下につながるケースもあった。能力と働きぶりに応じて59歳までの年収水準と変わらないかそれ以上を受け取れるようにし、活躍を後押しする。

これがニュースになってることにやや驚きを感じますが、本気で社員のキャリア自律を願っていたら、これは当然の取り組みだといえるでしょう。60歳になった日に突然、能力が下がって成果がでないってありえます?
昨日できていたのに今日はできないというのは考え難い。もっというと、同じ仕事をしているのに「年齢」で年収が下がること自体おかしい。能力や意欲がある社員のキャリア自律を年齢という属性で否定している制度なんですよ。

これまでキャリア形成は会社に任せている部分が大きく自分で関心をもって考えることが求められませんでした。会社から指示された仕事をこなし、準備された研修プログラムをこなせばキャリアを決めてくれていました。なので多くの方が、「自分が置かれている職場環境、制度や仕組み」について無意識にスルーしてしまう傾向があります。

あれ、ちょっとまってこれおかしくない?矛盾している気がする・・常にアンテナを高くしていれば、「障害物」に気づきます。それを放置してそのままにしておいては、「会社主導のキャリア自律」の状態が変わることはありません。キャリア自律を組織に浸透させるならば、これまでの当たり前を見直す、場合によっては否定するところから始まります。

さて、いくつか「阻害要因」を挙げましたが、実は、一番大きなキャリア自律を阻害する、あるいは失速させる真の要因は私たち自身の心構え(マインドセット)や心の在り方にあるのではないかと考えています。

・今やっている仕事はこなせるようになったから、そろそろ新しいことに挑戦してみたい
・経験はないけどちょっと関心がある◎◎の仕事をやってみたい
・今までは一人でやってきたけど、チームをもってリーダーの役割をやってみたい

こういったことが心に浮かんでも「でも・・」「どうせ・・」「いや・・」と打ち消してしまってはいないでしょうか。

・今日も素晴らしい仕事をしただろうか
・挑戦できる仕事をやっているだろうか

毎日、寝る前に自分自身に問いかけてみてください。その時になにか違和感を感じたり、イエス!と言えない場合には、その直感・心の声をそのままにせずに、きちんと時間をとって向き合う必要があります。

キャリア自律を阻害している最大の障害は自分自身の声や感情に従わずふたをしてしまうことなのです。

数々の名言を残しているアップル創業者のスティーブジョブズ。彼の有名なスピーチに次のような文章がでてきます。

「もし今日が人生最後の日だったら、今日やることは本当にしたいことなのか?」この問いに「NO」が何日も続くのなら、なにかを変えなくてはならない。

本質を突いた鋭い問いかけです。仕事だけでなく、日常生活などを含め人生そのものにあてはまる言葉ですよね。

多くの人が、これまでの人生の中で「関心があること」「夢中になれること」「挑戦したいこと」を途中であきらめたり、あるいはそもそも取り組まなかったり。そんな経験が一度はあるのではないでしょうか。私もあります。いろんな理由があると思いますが、あとから後悔することはありませんか?自分の直感にしたがって夢中になれるものを探し続けなさい、挑戦するまえにあきらめてはいけない・・励まされているような、喝をいれられるような言葉です。

とはいえ、自分の目指すキャリアビジョンがすぐに思いつかないという場合もあると思います。焦ることはありませんし、他人と比較する必要もありません。描いたキャリアプランが思い通りに行かない、それがキャリアの難しさなのです。だからといって、自分の直感や感情を後回しにして、今のままの生活を過ごしていては時間だけが過ぎてしまいます。最悪なのは会社や他人に主導権を握られてしまうことです。

自分の関心のあることを調べてみる、副業・ボランティアをやってみる、組織の中で面白そうな仕事がないか調べて見る。社外の信頼できる友人や仲間にキャリアの相談をしてみる・・個人でやれることはたくさんあります。

目の前の仕事を丁寧にこなしながらも、心からやりたいと思える仕事に出会ったときに、そのチャンスをすぐに掴めるように準備をしておく。これがキャリア自律の最初のステップです。

WAmazing(東京・台東)の代表取締役社長CEOの加藤史子氏は、キャリアには山登り型と川下り型があると上司に言われたそうです。(私も目標のないダメダメ社会人だったのでこの記事には深く共感しました。)

「山登り型」ではなりたい自分に向かって一歩ずつ歩を進めていく。一方で「川下り型」は急流や滝など目の前の状況をうまく乗りこなしながら、いつかは大海に出るというキャリアを指します。

今はキャリアビジョンが見つからなくてもいつか自分が夢中になれて、意味を感じる仕事に出会うために、これかも・・と心が躍る瞬間を掴みましょう。
その直感に従って、この春、これまでとは違うことに取り組んでみませんか?未来のために私も始めます。

最期にジョブズのもう一つの言葉を贈ります。

I’m convinced that the only thing that kept me going was that I loved what I did. You’ve got to find what you love. And that is as true for your work as it is for your lovers.

私は、本当に好きな物事しか続けられないと確信している。何が好きなのかを探し続けなさい。あなたの仕事にも、恋人にも(スティーブ・ジョブズ) -

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