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フランスは未だ格下げ圧力を跳ね返せず

フランスにおいて予算成立に向け、中道右派政権は必死だ。その甲斐あって、社会党の暗黙の支持を確保したとみられ、恐らくは2月末までに新たな予算が成立する可能性が高まっている。予算が成立しないことで、たとえばインド洋のサイクロンで被災したマヨット島の復興支援などの措置が出来ていなかったが、漸く動くことになる。これを受けて、消費者信頼感指数や企業景況感などの指標改善も期待できるし、この夏に再び解散総選挙が発表されるリスクも随分と低下していると見ても良いであろう。

ただし、こうした状況を確保するため、いくつかの大きな譲歩があったのも確かだ。財政赤字の削減意欲は、特に支出抑制の面で後退。赤字目標は従来の対GDP比5.0%から5.4%に緩められた上、実際には同6.0%近くで留まる公算も大きい。加えて、バイル首相は年金改革の再交渉に道を開いたわけである。年金改革を完全撤回した場合、2050年までにGDPの15%相当のコスト増となる可能性すらある。また年金改革だけでなく、2月1日から適用のはずであった電力料金の引き上げや医療支出の削減などの措置も撤回しており、財政の膨張は目に見えている。

年金や医療など国民生活に直結する支出は維持する一方で支出削減をするとすれば、その太宗が中央政府のものとなる。投資計画「フランス2030」の縮小を通じて公共投資が削減されるリスクも高まっている。研究、医療、航空宇宙分野などへの投資が後回しとなることで、将来の収益機会や成長が阻害される公算もある。

そうなると心配になるのが格下げ、である。債務の中期的な見通しの悪化に加えて、長期にわたって経済成長が大幅に弱まれば、格下げの大きな要因となるのは明らか。昨年12月に既にムーディーズはAa2からAa3に格下げしているが、続いてS&Pやフィッチも次回格付け見直し時にはアウトルックの見直しも含めた格下げ可能性は色濃く残る。格下げになることでフランス国債等の投資妙味を考える必要が出て来るが、まずはフランスの予算成立への道筋を見届けたい。

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