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「映像技術者にコストをかける重要性」 ANIMA代表 笹原氏インタビュー

前回のおさらい


前回はゲーム会社ともアニメ会社とも関わることが多い3DCG制作会社としての視点から、制作工程や文化の違いを伺いました。

今回はさらに深く制作部分に踏み込み、近年話題になっている「ゲームエンジンでアニメ制作は可能なのか」という話題を伺ってみました。

https://comemo.io/entries/10988

Q.ゲーム会社がアニメスタジオを制作する動きについてどう思いますか?

ゲームのユーザーを拡大させたり、さらに好きになってもらうためにアニメを作るという手段は増えていくと思います。ゲームとアニメ会社はさらに接近していくでしょうね。

Q.ゲームエンジンでアニメを創る動きについてはどのようにお考えですか?

UnityやUnreal Engineによる映像制作はどのCGプロダクションでも意識はしていると思います。が、まだどこの会社もうまくいっていないと思います。

Q.なぜうまくいかなのでしょうか?

ゲームエンジンの有効的な使い方がわかっていないと思います。

ゲームエンジンを使う最大のメリットはレンダリングをしなくてよいことなのですが、これをやろうとするとゲームエンジン上ですべての作業を完結させなくてはいけません。

現状、ゲームエンジンで全工程の制作を行うのは非常に手間なので、現状の方法に頼ってしまうのではと思います。

Q.「スマホでの視聴を前提にしたアニメならば、高品質の3DCGは必要はない」という意見もあります。

弊社が携わった作品はスマホで観る方もおそらく多いのですが、同じシリーズでもこの話数ではクオリティが下がった、アニメーションの動きが硬かったという人もいれば、同じ話数についてすごく良かったという人もいます。

観る人によって意見はバラバラです。

だから高品質かどうかは、作り手側がどの人たちに向けて何のために作ったという狙いによって決めるべきではないでしょうか。

Q.では、まだUnityなどでアニメを作るのは現実的ではないのでしょうか?

すでに各社で実験は始まっています。元はゲームを作るエンジンなので、どうしても映像制作とは質感に違いは出ます。ピクサーのようなアニメを作るならまだ近いかもしれませんが、日本のアニメ文化と相性が良い、セルルックな3DCGアニメを作るとなると工夫が必要です。

現在でも「ゲームエンジンで作った」と公表されているケースはありますが、おそらく完全にゲームエンジンのみですべて制作されたアニメーションはまだないと思われます。

前出しましたが、注目しているのは「レンダリング時間が無い」という利点です。スマホではなく逆に4K向けの高画質な映像を作るとなると、レンダリングに多くの時間がかかるようになります。レンダリングが無いゲームエンジンでの制作は、コスト面での優位性が従来手法よりも出てきて、利用が増えるかもしれません。

Q.セルルック3Dアニメをゲームエンジンで作れる日は来るのでしょうか?

クライアントの求める水準を全部ゲームエンジンで実現することは、現状では難しいです。

レンダリングをゲームエンジンで行うこと自体はレンダリングコストの削減にはなりますが、まだまだ全工程をゲームエンジンで行うまでには技術、スケジュール、予算の面からも至っていません。

また、映像制作専門のゲームエンジンの技術者も少ない状態です。そういった技術者はゲーム業界に流れることが多いからです。

とは言え全くそれができないわけではないと思っています。

クオリティーと安定的な生産体制を求めるゲームエンジンでの映像制作をするには、技術となによりゲームエンジン制作でメリットが出るような企画作りが大事だと思います。

実績を積むことにより、ゲームエンジンでの映像制作は確実に増えると思います。

作り続けることでメリットも増え、そうするとゲームエンジンでの映像制作が普通になっていくはずです。

Q.3DCG映像とゲーム系の技術者の違いはありますか?

「ゲームエンジンの利用」という点において技術に違いはありません。表現したいものの違いはあります。

前述したように映像制作専門のゲームエンジンの技術者自体が少ないという課題がありますね。

Q.最後に、日本の今後のアニメの競争力についてお伺いさせてください。

Unityなどのゲームエンジンを利用したアニメ映像制作が可能になることで、映像業界は活性化されると思います。

その一方で技術者不足はさらに慢性化していくと思われます。

この課題を解決するためには、人にかかるコストは下げないことだと思います。ツールの進化で製造コストを下げても、人件費を削らずに人材の流出を防ぐことが重要です。ここは経営者として大きな課題ですね。

アニメ業界全体にお金が落ちてこないという課題もありますが、クライアントへの柔軟な対応と、クオリティーの高い作品を作ることで理解を広げることが大事だと考えています。

© iki

今回でANIMA代表の笹原様のインタビュー連載は最終回となります。ご閲読ありがとうございました!

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