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欧州インフレ率のカギ握るドイツ賃金交渉

ECBや市場が中期インフレ見通しの主な要素として賃金の伸びに注目する中、ドイツで1日に正式に始まった公務員の賃金交渉の行方は重要だ。ただ現段階でたとえ大幅な賃上げが実現しなくとも、賃金圧力が来年、拡大すると考えるべき理由がある。

賃金協定は、それに含まれる職種にもよるが、110-140万人の労働者が対象となる。11月27-28日に追加協議もすでに予定されている。労組の要求は、パンデミック以前と比べ控え目だが、次期政権の連立政党が来年の最低賃金の25%引き上げで合意したことで、交渉力は強まったと考えられる。労組は、パンデミックの間、「国を動かし続けた」のは公務員だと主張しており、その要求と実際の決着のギャップが2019年より広がるか、狭まるかに注目したい。

すでに他のセクターで妥結された賃金交渉を見る限り、パンデミックがなお賃金協定に影を落としているのは確かだ。例えば、ドイツの最大労組IGメタルは今年5月、(当初の4%の要求に対し)7月からの2.3%の賃上げで合意した。これは毎年2月に一括で支払われる。加えて、7月に500ユーロの一時金が支給されることになった。

だが、賃金の伸びは来年加速すると考えている。理由は三つ。

第一に、労働市場が急速に改善している。求人率は過去のサイクルのピークを下回るとはいえ、今やパンデミック前の水準を上回っており、企業は労働者の確保に苦慮している。このため賃上げの妥結を要求する労働者の交渉力の認識も改善する可能性がある。第二に、インフレがここ数カ月、著しく加速しており、当社の予想では、まだピークに達しそうにない。重要なことに、実現インフレ率と賃金妥結のラグは10カ月前後となる傾向がある。この関係が続くなら、目下のインフレ圧力は2022年半ば以降の賃金の伸びに一段と表れよう。それはさらに早く反映されるリスクもある。というのも、インフレの加速はエネルギーや食品といった、消費者が特に敏感な項目に見られるためだ。第三に、企業がコストの上昇を転嫁する意欲や力は現在、強まって見えるため、賃上げにより前向きになる可能性もある。労働者の獲得競争が激しい状況下では尚更だ。

インフレ動向が一過性かどうか。さながら中央銀行の言い訳合戦にも見えるが、賃金の伸び率が着実になれば、金融政策にかかる影響にも注意が必要になってくる。

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