人生100年時代のブランドの個人と組織論~コロナ禍を経て
情報革命が進み、社会の様々な前提が変化している現代において、働き方をどのように変えていくか、組織としてブランドとして、どう向き合っていくかは、100年続くブランドを目指す上でとても大きなテーマです。
ブランド経営をして6年。
外部環境である社会の大きな変化による働き方の変化。
内部環境である事業の拡大、社員の増加による組織の変化。
を踏まえて、どのように考えて、変えていったかという経営者としての私の考えと、Minimalの働き方について綴ります。
人生100年時代で前提が変化
「人生100年時代」という前提で、キャリア、働き方の考え方は大きく変わる、変わっていかなければならなくなっています。今までは50歳くらいまでが働くピークで、退職までの残り10年で後進を育成する、退職後は年金と退職金で悠々自適に暮らすという前提があったように思います。
しかしこれからの時代は違う。人生の前半50年(第一ワーク期)の富の移動は、家族の扶養。後半50年(第二ワーク期)は自己の扶養をしなければなりません。
人生100年と考えるとキャリアを考える時間軸が圧倒的に長くなっています。
これだけ大きなパンデミックの状況があるのになぜ会社は変わらないかという声をちらほら聞きます。その一つの理由は人生100年時代じゃない前提で作られた企業が多い事が原因だと思います。なので、急激な社会変化に対して、一旦現状維持だったり、表面的な施策で場当たり的に一時しのぐ、という構造になっている、とすると理解できます。
しかし、長期的に考えると、それは通用しません。こうした前提の下、組織はこれからどうあるべきか、考え直さなければならないのではないでしょうか。
ブランドを運営する組織や働き方を考えると、20代30代のキャリアが残り50年程度あるという前提でデザインをしないと、いかに商品サービスが魅力的でも、それを実行する人が育ちません。
コロナはタイムマシーンであった
「リモートワーク」「副業解禁」など、働き方に関連したニュースはたくさんありました。
コロナ禍によって世の中の流れが大きく変わったのは間違いありません。しかし、コロナ禍によって変わったことは、ウイルスが原因で変わった変化ではないと思っています。つまり、10年かけて起こるはずだった変化が、パンデミックによって1年で急速に変化した、変化せざるを得なくなったのです。
リモートワークを例にとると、この働き方はコロナ禍前からずっと言われていました。ただ、本気で取り入れている企業が少なかったのです。パンデミックがリモートワークを加速させた、とも言えるでしょう。
コロナ禍はあまりにも急に起こった大きな変化です。そのため、そのスピードについて行けないブランドや会社もたくさんあったのではないでしょうか。
Minimalも正直たくさんの痛い目にあいました。その中で学んだことは、変化に対して思考停止に陥っていけないということです。変化する努力と思考と行動を辞めてはいけません。仮に遅くなっても変化しないよりはした方がよく、常に変わり続けることが組織においても、個人においても大事であると言うことがこのコロナ禍という未曾有の危機下において痛感する事ができました。
能動的な変化を起こさないといけない
外部環境が大きく変化するタイミングおいては、意図せず変化させてられてしまうことが多々あります(例えばお店のレジ前の飛沫防護ビニールや外出時のマスク着用など)。
そうした外部環境に依存した変化を変化と捉えてしまうという落とし穴にはまらないことがとても大事です。
外部環境変化に対して、自分たちが能動的に起こした変化、自分たちの長期的な在り方を踏まえて起こした変化ができているかを問うことが大事です。
一方、「皆がやっているのでなんとなく働き方変えてみよう」と場当たり的にやってしまうことは、必ずほころびが出ると思っています。
例えば副業解禁と言われても、いきなり自社に最適化できていないところが多いと思います。副業解禁をするなら、自分たちにおける副業のあり方をまず各社が考えなければいけません。世の中のトレンドを咀嚼しながら最適解を探すことが経営者に求められています。
Minimalでもテレビ会議が多くなりました。元々リアルな場で商売をしていたMinimalにとっては、大きな変化でした。
例えばスタッフ勉強会は毎月2~3時間リアルに集まり開催していましたが、3月からそれをWeb開催に切り替えました。ふたを開けてみると、実質の参加率が上がったんです。特に勉強会の時間にどうしても外出できない、お子さんがいるママさんなどがWebであれば家から参加できるんです。
当たり前のことで恥ずかしいですが、リアルが大事だと思い込んでいました。しかし、変化していく事で手段の幅が広がりました。毎年行う社内の周年イベントは、BBQやっていたのですが、オンラインでの乾杯にしたのですが、案外できるものだなあと思いました。
Minimalの変化~ブランド組織の人材流動化問題~
組織で起こった変化で言うと、職種間の人材流動化が活発化しました。
ブランドというのはプロフェッショナルな商品・サービスを届けるため、役割を専門固定化(職種別採用)する事が多いのです。
Minimalもこれまではそうしていたのですが、販売スタッフがECチームへ、製造スタッフが発送チームへ、など職種間の流動化が起こりました。
それはコロナ禍の影響で、「店舗だけで」から、「店舗もECも」という考え方に変わったからです。
Minimalの職種(セクション)は大きく分けると4職種から構成。
・サービス販売(フロント)
・製造(職人)
・ビジネス(営業・EC)
・管理
横の異動は制度上OKだったが、これまではほとんどありませんでした。コロナ禍という外部環境変化に応じて、組織内部ではセクションの流動化がかなり進みました。これはプロフェッションを基軸とするMinimal(ブランド組織)においてはとても大きな変化で、かなり大変なことでした。
変化を促進するためのポイントとして役割意識のリセットから始めました。
その際に大事な事はWhyを伝える事です。
なぜ今変化していく必要があるのかという背景から私の言葉できちんと伝える事を重視しました。
気を付けたことは、流動化していくことの意味づけをすることです。
例えば、サービスだけをずっと経験してきた人がEC担当に転職したくてもほぼ採ってもらえないでしょう。しかし、組織内での職種チェンジであれば、これまでその人が仕事で積み上げてきた信頼を基に、0から教わることができて、ECができる人になれる可能性があります。
辞めてほしいわけでは当然ありませんが、個人のキャリアを考えると、「組織の中の信頼は共通で、職種を変えることができる、キャリアを積めるのは良いことだよね」と伝えるんです。
場当たり的に異動をさせるのではなく、状況をとらえ、メンバーのキャリアと接続して意味を伝える。これがとても大切です。
Minimalの目指す組織像と人材像
経済的報酬(給与や賞与、有給等)以外で、会社が個人に与えられる報酬として大事にしている一つとして、キャリア教育があります。
どういう風にやっていけば、給与が上がっていき、求められる人材になれるかというのを、会社のロードマップの中できちんと伝え行き、個人の能力・キャリアアップと繋げてパフォーマンスを最大化する手助けをしていく事がブランド運営組織として求められます。
その大前提としてMinimalでは目指す組織像と目指す人材像をおいています。
目指す組織像:“素数によるチームケミストリー”
素数とは1と自分以外では割り切れない数字。つまり個として唯一無二のクリエーターであり、プロフェッショナルを目指すことが大前提にあります。
全ての数字は分解すると素数の掛け算です。 素数である個がチームで掛け算の成果をだせる組織になることを目指します。どれだけプロフェッショナルが強くてもチームワーク出来ない人はいらないと明確に伝えています。チームのためにケミストリーを出せる人が大事です。それはミッションである“チョコレートを新しくする”という新しい文化創りの実現は一人で達成できないからからこそ組織やチームということを大切にしています。
目指す人材像:つくる人
私達はものづくりの会社であるということに誇りを持っており、組織で働く一人一人が“つくる人”である事を目指します。全てのつくる人がクリエイターで、右脳と左脳をフルに使いながら、Minimalという作品創りに参加していきます。
・一人ひとりが当事者として“つくる”を担う
・一人ひとりが専門家として“つくる”力を高める
・一人ひとりが協働者として仲間の“つくる”を学び、助ける。
*上記は人事制度ブックに記載しているつくる人詳細。
*当事者・専門家・協働者は評価指標とも連動
職人(専門職)キャリアにリーダーシップはいるのか?
上記の前提をもちながら、等級制度はグレード3からが世に言う管理職で、そのタイミングでマネジメントを担うディレクターと専門家として突き詰めるマイスターを選ぶことができます。
ものづくりの会社として職人的に専門性を磨き続けるという選択肢を選ぶことができます。組織を束ねる人も大事だが、それと同じくらい専門性も大事であるクリエーター・プロフェッショナルの集団でありたいと言う願いが込められています。
そして、その中でMinimalらしいポイントとなるのが、Minimalではリーダーを必ず経験させる事を重視しています。
Minimalではどんなに専門性を持ってもリーダーができない人は昇格できないという仕組みにしていて、グレード2に昇格するとリーダーを経験しなければならない仕組みになっています。
チームワーク、リーダーシップを学ばせるか、専門性だけを伸ばすことにするのか。「ティール型、専門性型組織」といった役職やリーダはいらない、という話は当然ありました。
しかし、結論は、「リーダーは必要」となりました。めちゃくちゃ議論した結果ですがあくまで現時点での暫定結論です。未来に環境や状況が変化したら変えるかもしれません。今のMinimalに所属する個人と組織においてはこれがベストであるという結論です。
良いモノをつくって多くの人に届け、幸せの輪を拡げていく、ということを考えたら、チームの力を結集しないといけない、そこを接続するリーダーシップは必要だと考えました。
「個の時代」とは「チームの時代」
いま「個の時代」といわれています。私は「個の時代」とは「チームの時代」だと思っています。
個の時代は、プロジェクト型の仕事が増える。働き方はジョブ型や職務主義に近づいていくと思います。プログラミングのフリーランスがいたとして、Aというシステムのコードが書ける、という専門性を評価されてアサインされるわけです。
個人の能力が個として立つということは、チームや組織の中でどこに最適化されたらいいかわかりやすくなります。しかし、仕事はどこまで行ってもたった一人で完結しないものがほとんどです。そこで必要になるのが、プロジェクトマネジメントできる人です。「個の時代」においては、チームでどう、個を活かすかが大事になるということなんだと思います。
フリーランスで個人がスキルを活かすことは大賛成です。しかし、フリーランスでやっていくには、信頼、コミュニケーションを0から毎回作り上げないといけない。明確でわかりやすい指標を提示し続ける事が向いている職種も向いていない職種もある。パフォーマンスを発揮できなければ切られるという厳しさもある。
一方組織の場合は、きちんと仕事をしていければ、組織内での信頼の残高が貯まっていきます。組織内で流動化が担保できていれば、組織の中でフリーランス的な働き方ができるようになっていきます。
組織側は適材適所に人を配置するという流動化の文化と仕組みを磨き続ける努力をしないといけません。
フリーランスでも、組織内にいても、チームの中で信頼を得ながらパフォーマンスを出すことになります。チームとしてうまく機能することが大切です。縦割りでAという部署はAをします!みたいなものは無くなっていき、大きな意味で、「会社」というのもゆるくなっていっています。
でもどんな組織体制であっても「チームの時代」なんです。
チームの中でいかに個が活躍できるのか。そこでリーダが必要になるし、リーダーシップを経験しておくことが、チームケミストリーを起こせる人材になっていくいうのがMinimalの組織のポリシーです。そうしないと人は育たないし、成果も出ません。これが私の組織感、チーム感です。
個人がどのように「プロフェッショナル」になるか
教育改革実践家の藤原和博さんが提唱する「100万分の1の理論」。
100人の内1番になれることを3つ掛け合わせることで100万分の1の人材になれるというものですが、この考え方に共感し,Minimalでも採用して、伝えています。
職人はみな100万分の1を目指す矜持を持っています。
それはもちろん大事な事です。
当然自分の専門分野の真ん中では100万分の1を目指し続ける努力をします。
それに加えて、100分の1、10分の1のスキルを身につけていくことをMinimalでは推奨しています。
例えば職人ですが、在庫管理をエクセルの表計算を使いながらできます、と言いう人材なら、職人の中では10分の1になれるかもしれません。
自分のキャリア軸の前後左右の半歩だけ外にある事をやってみる。そうすると10分の1、100分の1に慣れる道筋が見えます。それは、意外に同じ専門性を持っている人は軽視したり、見えてなかったりするからです。
10分の1や100分の1をいくつかつくり掛け合わせる事で、100万分の1,10万分の1を目指していくことがプロフェッショナルになる道がある事を知って欲しいです。
社員一人一人が代替の聞かないプロとしての“素数”になってほしいと願っています。そのためには100万分の1になることが大事だと思います。
素数の一人一人が、ミッションである「チョコレートを新しくする」の実現に向かってケミストリーができる、掛け算ができる組織になりたいと思っています。
これからの時代のカギになる大切にしたいこと
コロナ禍で商売するすべての人が思い知らされたのが、変化への対応と柔軟性を常に持っておく事が大切さです。
例えば、サービサーとしてキャリアを積み上げてきた人がいます。ある一定の時間を切り取れば、目の前のお客さんに最高のサービスをすればいい状態です。しかしコロナ禍というわかりやすい外部環境の変化が起こったときに、そもそもお客さまが来ないと接客ができない状況に変化しました。そうなると今までの専門性を活かしつつ変化する事が求められます。
例えばWeb接客にやり方を変えてみるというのも一つの方法でしょう。
大事な事は変化に対して柔軟な頭を持っておく事だと思います。
今の状態は最高だけど、その状態が未来永劫続くわけではないという心構えを持って、何か起こったときにチューニングできる余白が必要です。
人間は現状維持バイアスがあると言われます。変化した先が良いか悪いかは関係なく変化したくない生き物です。だからこそ、チューニングしていくマインドセットや仕組みを組織として持っておかないと、これからの働き方はだめだと思います。
例えばマスクをするという生活が定着していますが、これはある意味で社会に強制されている変化です。店舗におけるビニールシートや消毒、これらもやらなければならない変化です。
では、自分たちが売り方を変える、サービスの提供の変化を考えるなど、環境変化に対して自身や組織が能動的な変化はどのくらい起こせているのか、という問いを突き付けられたのだと思います。
私自身のであれば、コロナ禍で赤道直下のカカオ産地に買い付けに行けなくなりました。それに対して、どう働き方を変化させましたか、と問われているんだと思います。自戒を込めると変化がまだまだできていないです。
社会の前提が変わるような変化が起きたときに、いかに柔軟性をもって、変化できるかが問われるような時代になったと思います。変化に対して、自分や組織をチューニングするという考え方を働き方の前提に入れておかなければいけない時代だと思います。
繰り返しになりますが、人生100年時代のキャリアはものすごく長いんです。これをネガティブに捉えるのではなく、長いキャリアの中で、例えば今は不遇だとしても、変化する柔軟性をもって挑戦をする事ができれば遅いと言うことはないだと思います。
アップルが開催したWWDC2017の基調講演で紹介された若宮さんは、ボケ防止のソフトを81歳で初めて作ったといいます。
そう考えると私達は何者にでもなれるし、キャリアが長いと言うことは今始めて遅いということはないという希望しかないと思います。
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