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恩師との20年越しの約束を果たそうとした結果、人生が変わった話

僕が社会人生活20数年の中で最も成長したのは、25歳の頃に日系メーカーの経営企画本部、特にそこの本部長だったNさんの部門にいた時なんです。

Nさんの思い出

Nさんはものすごく話し好き、教え好きで、毎日仕事中に部下である僕ともう1人の女性をホワイトボードの前に呼んではロジカルシンキングについて何時間も話してくれました。

・美味しいカレーを作るには何が必要だと思う?
・今の発言は『ジャンクフードは健康に悪い』と同じくらい論理の飛躍だよ
・このPJの目的は?魚なら釣竿を持って海へ行け。猪なら銃を持って山に行け。目的に沿った手段を選ぼう

40歳でGAFAの部長に転職した僕が20代で学んだ思考法

などNさんは数々の名言を残され、僕達はその時の言葉をずっと心に刻みながら10数年仕事をしてきたのです。僕ともう一人にだけにとっての名言だけど(笑)

今でこそロジカルシンキング、地頭力などといった言葉が世に広まっていますが、当時はまだ2002年。ロジカルシンキングという言葉はあったもののそれはコンサルの人達の言葉で、周りの人の反応もみんな「ふーん、理屈っぽいな」てなもんでした。

僕達の反応

でも、Nさんに教えてもらっていた僕達2人だけは違いました。
目を輝かせてNさんの話を聞き、どうすればそんなに美しいロジックツリーを描けるのか、どうすればそんなに抜け漏れなくMECEに物事を要素分解できるのかに魅せられ、自分たちの仕事にどう応用出来るかについて日々語り合いました。

ちなみに当時僕は1999年に大学を卒業して4年目、一緒にいた女性はピカピカの新入社員。まだ社会人に染まりきっていない段階でこうした「物事の考え方」を教えてくれるメンターに出会えたというのは、僕達の人生にとってものすごく価値のあることでした。

怒ったり怒鳴ったりして人に仕事をさせるのではなく、まず仕事を始める前に立ち止まって適切に考える習慣をつけさせ、「考えることを楽しいと感じることが仕事を始めるのに1番大事なことだ」と若かりし僕達に教えてくれたNさんは、マネージャーとしても本当に素晴らしい方だったと思います。

ただ、それはそれほど簡単なことではなく、それなりに苦労がありました。

「Nさんの言ってることが全く分かりません」
「できなすぎて、考えるということが何なのか分からなくなってきました」
なんて弱音を吐いたこともしばしば。

Nさんから「経営企画は考えるのが仕事だ」と言われて、「考えようとしてるんだけど何をしたら考えてることになるんだっけ?」と悩み、結局、何もアウトプットを出せない空白の時間を過ごしてしまったこともありました。

Nさんとの約束

そんな中、25歳の僕はNさんに、「僕はいつかNさんの語録をまとめた本を出しますよ!」って約束したのです。

「絶対売れますよ!だってNさんの話のおかげで僕らがこの歳でこれだけの考え方ができるようになったんですから!この話をもっともっと若い人に伝えていかないともったいないですよ!」

そう、今の僕があるのは、20代前半にNさんの話を聞いて実践してきたからだというのは紛れもない事実。

ですから僕は、「Nさんから教わったことをすべて本に詰め込んで、色々な人、特に若い人に伝えたい」という思いを持ち、いつか絶対に形にしたいと思っていました。

でも、当時は自費出版で本を出そうとしたら百万円くらいお金がかかる時代で、僕にはどうしようも無かったんですよね。

しかし時は流れて、パソコンさえあれば、個人でも電子書籍で簡単に本を出すことができる時代になったのです!

「20年近くもかかってしまったけど、これでようやくNさんとの約束が果たせる!ようやく僕がNさんから受けた経験を、色んな人に伝えることができる!」
そう思うと胸が高鳴り、筆をとりました。

そして天職と出会い、人生が変わった

こうして40代半ばの僕は、昼間は会社で仕事をする一方で、夜はコツコツと執筆を続け、ついにNさんの教えを電子書籍を書きあげました。

当時は別に本を売りたいわけではなく、Nさんに「約束を果たしましたよ!」と伝えたいだけだったのですが・・・

なんとその本が個人のKindle本では異例の2万5千冊以上も読まれる事態となり、その流れでKADOKAWA社から声がかかって商業出版することになりました。その後もダイヤモンド社、世界文化社からもお声がけいただき、僕はあっという間に3冊の本を書いた著者になったのです。

それだけではありません。この作家になった一連の流れをきっかけに、僕は1年後に勤めていた外資系企業を辞め、作家として生きていくことを決意し、今に至るのです。

僕はそれまで人生の中で、本どころか長い文章を書くことすらありませんでした。しかし、たまたまNさんとの約束を果たすために43歳で本を書くことにチャレンジしてみて、そこではじめて「僕は本を書くことがまったく苦にならない、むしろ楽しいと感じる」ということに気がついたのです。

まさに作家という天職が僕の人生に降ってきた瞬間でした。

僕がこの作家という仕事に出会うことは、20年前にNさんと出会った時から決まっていたのでしょうか。そんなわけないよなと思いながらも、そんな風にも思えてしかたありません。

ただ1つ言えることは、僕と作家業との出会いは、Nさん抜きには絶対にありえなかったということ。

ですから、言葉では語り尽くせない感謝とともに、改めてNさんにこの本を贈りたいと思います。

Nさん、本当にありがとうございました。
ちゃんと約束、果たしましたよ!

#天職だと感じた瞬間

最後まで読んでくださって、ありがとうございました! これからも楽しみながら書き続けていきます!