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変化する女性のキャリア観。ロールモデルよりも自信が求められている

皆さん、こんにちは。今回は「女性活躍と子育ての両立」について書かせていただきます。

女性活躍を推進していくために、多くの企業が「女性管理職20%」などの目標を掲げ、目標を宣言することで退路を断ち、経営陣自らが本気でコミットするような組織体制を整え始めています。
女性の“働く”という意欲にどのように寄り添い、尊重し、子育て期も継続した活躍の場を提供できるのかは、どの企業も共通課題だと思います。

日本の少子化が止まらない。国がこのほど発表した2020年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯産むと推計される子どもの数)は前年比0.02ポイント低下し、1.34に落ち込んだ。07年以来の低水準だ。子どもを産み育てやすい環境整備が急務だが、一方で日本は少子高齢化による労働力不足も深刻で女性活躍を同時に推し進めなくてはいけない。女性活躍と少子化対策の両立――。一見解読困難なパズルのようだが、先進企業の事例をみると手厚い子育て支援だけでなく、仕事へのモチベーションを刺激する工夫が解決の糸口のようだ。
1990年代から女性活躍を進めてきた花王グループは女性管理職比率が19.2%(20年12月31日時点)に上る。特筆すべきは、このうち約53%は子どもを育てながら管理職をこなしていることだ。キャリアアップか、子育てか。花王グループの女性社員は二者択一を迫られない。よほど子育て支援策が充実しているのかと思いきや、さにあらず。「仕事と育児の両立は自助努力が基本。育児休業や育児中の短時間勤務など法定を上回る仕組みもあるが、どうしても必要な場合を除き、上限まで目いっぱい利用する社員は多くない」と花王D&I推進部長の斎藤菜穂子さんは説明する。
子どもがいようがいまいが、男性であろうが女性であろうが、個人の意欲と能力に応じて育成・登用する。ただ、過剰な子育て支援をしない半面、子育て期も意欲と能力を存分に発揮できるように会社はサポートを惜しまない。例えばすべての部署に専任のキャリア・コーディネーターを配置している。子育てや介護など家庭の事情を抱えて思うように働けないとき、仕事をどう調整するか。基本は本人と上司の間で話し合ってもらうが、キャリア・コーディネーターは社員の求めに応じて相談に乗り、助言し、必要ならば上司との間に入って調整をする。
家庭への介入もためらわない。出産後の働き方を考える「タツノオトシゴセミナー」は社内研修でありながら、自社の社員だけでなく、そのパートナーの参加を推奨する。現状女性は男性よりも家事・育児といった家庭責任を重く負いがちだ。妻が希望通り働くには夫の協力が欠かせない。たとえ夫が花王以外に勤めていてもセミナーに参加してもらい、夫婦が協力する意義や家事・育児の分担のコツを伝授する。
キリンビールやメルシャンなどキリングループは13年から女性社員の育成方針に「早回しキャリア」を据える。入社後10年程度は男性より女性に成長機会を優先的に与える。新入社員は一般的に入社後3年ごとに部署を異動し、様々な経験を積むが、女性は2年ごとに異動させたりする。各部署でも責任が伴うプロジェクトに若手女性を抜てきする。
06年から女性活躍に取り組んできた。ただ管理職への登用が当初思うように進まなかった。原因は出産・育児期に女性社員の成長が滞り、昇進・昇格時期を迎えたとき、男性との能力差が開いてしまっていたからだ。経営を考えたとき、さすがに能力不足の人材を登用できない。思い至った解決策が「早回しキャリア」だ。「後々に成長が滞るならば、その前に仕事経験を積ませ、男性よりも早く成長してもらっておけば中長期的に男性との能力差がつかない」(キリンホールディングス人事総務部)と考えた。
13年以降、約460人の若手女性社員を「早回しキャリア」で育ててきた。この間、女性管理職は100人から237人(21年4月)へと倍増した。このうち子どもがいる女性管理職は6倍に増えた。「早回しキャリアで結婚・出産前に仕事を面白いと体感した女性は産休・育休から早く復職する傾向がみられる。女性のキャリア意識を高める効果も出ている」(人事総務部)
結婚や出産を二の次にバリバリ働く「バリキャリ」と、家庭を最優先してゆるゆる働く「ゆるキャリ」。女性は典型的にどちらかのタイプに分かれると思われがちだ。この二分論に従うなら、手厚い子育て支援を提供して「ゆるキャリ」女性を支えることが少子化克服の近道だ。実際、人口が減少に転じた00年代半ばには少子化への危機感が高まり、法定を大幅に上回る長期間の育休や短時間勤務制度を導入するなどし、企業は子育て支援の拡充を競った。その結果、出産は就業継続のハードルではなくなり、出生率も回復基調に転じた。半面、女性管理職比率が伸び悩むなど女性活躍は限定的だった。
「バリキャリと、ゆるキャリの二分論は女性の実情を映していない」と野村総合研究所の上級コンサルタント武田佳奈さんは強調する。キャリアか、家庭か――ではなく、キャリアにも家庭にも前向きな「フルキャリ」女性が今は主流派だという。21年3月に25~44歳の女性正社員6908人を対象に実施したキャリア意識調査によると、バリキャリ16%、ゆるキャリ34%、フルキャリ50%という構成比率だった。「フルキャリ女性にとって『子育て中は仕事を頑張らなくていい』は戦力外通告に等しい。優しさの勘違いは働く意欲をそぐ」
フルキャリ女性に手厚い子育て支援は必ずしも必要ではない。武田さんは3つの「き」が大切だと主張する。「仕事で貢献してほしいと『期待』を伝えて、子育て状況を『共有』し、成果を出せる『機会』を付与する。それができれば自然と女性活躍も少子化対策も進む」
もちろん少子化解決は女性だけの責任ではない。男性が家事・育児の責任を応分に負うことが絶対に欠かせない。今国会で改正育児・介護休業法が成立し、「男性版産休」が来年度にも創設される。性別役割分担意識の改革の期待が高まる。一方で国は希望出生率1.80の実現と、女性管理職比率30%の早期の達成を政策目標に掲げている。これら高い目標を合わせて解決するにはできる限りの手を早急に打たなくてはならない。女性の働く意欲にどう寄り添い、子育て期も活躍の場をどう提供するか。企業にもできることはまだまだある。


■バリキャリ、ゆるキャリ、フルキャリ

女性のキャリアはよくこういったカテゴライズがされがちですが、個人的には特に区分けしなくてもいいのではないかと思っています。むしろこういうカテゴリ分けがあるからこそ、「どちらに進めば良いのだろうか」「こっちを選ぶとこっちを捨てることになるのか」などという不安を煽っているように見えるのです。

(ただ、社内の等級やグレードの考え方もそうですが、しっかりと求められる役割を分けて、その違いを明文化してあげた方が救われる人がいることも事実です。全員が同じように管理職を目指しているわけでもないですし、自分のスキルレベルを上げていきたい、組織に何らかの形で貢献したいという人たちが居心地よくキャリアを積んでいくことを応援できる制度にした方が良いことは間違いありません。)

結婚や出産を二の次に“バリバリ”働きたい人がいても、家庭を最優先して“ゆるゆる”働きたい人がいても、そのどちらかではなく、キャリアにも家庭にも前向きに働きたい人がいても、様々な考え方や価値観、働き方のパターンがあることが自然です。そして、家庭での役割分担やサポート体制、パートナーがお互いに求めることも各家庭によって異なることが当たり前です。

男性だから、女性だから、ということではないですが、社会人になって数年間で、身近に自分と同じような価値観を持った、将来目指すべき「ロールモデルがいない」と嘆く人が多い傾向があります。出産・育児というライフステージの変化がキャリアにも影響しやすい女性は、特にその傾向が強いです。

多様な価値観、多様な働き方がどんどん認められている社会においては、極端に言ってしまうと、自分にとっての「ロールモデルを探すこと」に大きな意味がなくなってきているのかもしれません。
誰かのようなキャリアを目指すことはあってもいいですが、その誰かになれるわけではなく、全く同じ環境下に身を置くことも不可能です。

となると、必要なのは、自分の目指すべきロールモデルが近くにいなかったとしても、自分が進んでいる道が正しいと信じられる“自信”なのだと思います。それは、性別や年齢に関係なく、仕事上で挑戦の機会をもらったり、自分が決めた目標を達成したり、誰かに期待をかけてもらったり、成果を出した時には適切に評価されたり、大変ことを乗り越えた時には労いの言葉をかけてもらったりなど、そういった小さな積み重ねで得られるものではないでしょうか。


■「子育て中は仕事を頑張らなくていい」は戦力外通告

記事の中には、

『子育て中は仕事を頑張らなくていい』は戦力外通告に等しい。優しさの勘違いは働く意欲をそぐ。

とありました。

たしかに「子育て中だし、そんなに頑張らなくてもいいよ」という言葉で気持ちが楽になる人もいると思います。
一方で、「自分はもっと働きたいのに」「せっかく頑張ろうと思っていたのに」という気持ちを抱く人もいます。
同じ人でも、タイミングや誰に言われるかによって、捉え方が異なることもあります。

では、どのようなサポートが必要なのでしょうか。

これまでの「女性活躍支援」とは、女性が「子育て期でも仕事を続けられるような支援」が論点でしたが、これからは、「子育て期でも仕事で成果を出せるような支援」が必要だと思います。

つまり、出産後に仕事をセーブして「就業を継続すること」を支援するだけでなく、出産後も継続して「成果を出すこと・キャリアを積むこと」を支援してあげる必要が出てきているのです。

そのためには、女性一人ひとりの意欲と能力を存分に発揮できるような環境を構築していかなくてはなりません。

「女性だから」「子どもがいるから」ということではありませんが、ライフイベントによって仕事の進め方やリズムが大きく変化した女性社員のその時の状況を正しく理解し、コミュニケーションを定期的に図り、障害となっている要素を取り除いてあげるアプローチをしていけると良いと思います。

人によっては、「仕事と子育てを両立するためにベビーシッター代や家事代行の費用を少しでも会社が負担してくれれば助かる」という人もいれば、「在宅勤務を認めてくれるだけでありがたい」という人もいれば、「夫に育児休暇を取得してほしい」という人もいるでしょう。「子育て中だからといって、チャンスをもらえなくなることが怖い。今まで以上に大きなチャレンジをする機会がほしい」という人もいるでしょう。

まずは、女性社員の意思を確認し、今度は会社が求める期待値を遠慮なく伝え(“優しさ”を勘違いせず)、その上でお互いに歩み寄っていく必要があるのだと思います。
女性社員には男性と同じようなハードな仕事は無理だろうと勝手に決めつけず、能力と意欲がある女性社員には、どんどん機会を提供し、その分プレッシャーや業務負荷などに潰されてしまったりしないように必要なサポート体制を整えることが大事なのではないでしょうか。


■サイバーエージェントの取り組み

あくまで一部ですが、当社の人材の抜擢の仕組みや育成の座組みをご紹介します。
一つ一つの説明はここでは省きますが、社員の能力の開花のさせ方や才能発見の方法は、何か一つの施策に依存しているわけではなく、複数の取り組みによって成り立っています。

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「女性活躍支援のための取り組み」と言ってしまうと、女性だけにフォーカスして、「女性の、女性による、女性のための支援策」を考えてしまいがちですが、基本的には、性別や年齢に関わらず、“挑戦環境”と“安心環境”をそれぞれ提供していく、という考え方を軸にしています。
制度一つとっても、育成プラン一つとっても、『誰もが活躍できる環境』を考えていく過程で、自然とその先に男性も女性も、若手もベテランも組み込まれていく方が自然なのだと思います。


■ポイントは「自然体」・「自分らしさ」

コロナ禍で、人と企業との関係性も変わり、個人のキャリア意識にも変化が現れている今、女性のキャリア形成においても転換期を迎えています。

これからは、出産や育児でキャリアを断念したり、女性だけがライフを優先してキャリアを後回しにするという考え方は減ってくるはずです。キャリア形成について前向きに捉え、自立した考えを持つ人が増え、女性の活躍の場はもっともっと広がっていくと思います。

仕事に関わる期間が長くなればなるほど、キャリアを“短距離走”ではなく、“中距離・長距離走”と捉える必要が出てきますが、長く走るためのポイントは、いかに「自然体で自分らしく仕事に向き合えるか」ではないかと思います。

何かを犠牲にして罪悪感に苛まれながら、または無理をし過ぎて心身ともにバランスを崩しながら、「自分らしくない」と感じたまま仕事を続けていくのは難しいことです。また、会社の風土や周囲の人の理解不足など、人や環境を理由に自分で自分の限界を決め、本当は実現したい目標があるのに「これ以上は無理」とチャレンジする前に諦めてしまうことも非常にもったいないことです。

「組織に合わせて個人が変わる」のが当たり前だとされていた時代から、「個人に合わせて組織が変わる」、つまり、個人の夢や理想の実現に向けた支援を、会社や組織が最大限行っていくことが大事になってきているように感じます。

女性のキャリアのパターンが多様化し始めている今、その実現をサポートする企業側の体制も変化させ、複数のパターンに適応していかなければなりません。

個人の意思が尊重されない環境には、最終的には人が集まってこなくなり、徐々に会社の競争力を失っていってしまいます。
「個人が実現したいこと」と、「会社が実現したいこと」を紐づける必要が出てきていて、個人の目標と会社の目標をいかに結びつけてリンクさせていくかに、リーダーの手腕が問われているのだと思います。


#日経COMEMO #NIKKEI

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