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紙幣刷新をキャッシュレスの起爆剤に

改元を機に、紙幣が刷新されるという。

自動販売機などの関連需要が生まれるため、景気刺激の効果もありそうだ。
心理面の好転を狙い、個人消費の喚起など経済効果も期待しているとみられる。

ということだが、これは政府の進めるキャッシュレスと、どのような関係にあると考えるべきだろうか。

単純に考えるなら、新紙幣に対応する自動販売機やATM、券売機等の更新需要が発生するので、それが記事のいう「景気刺激の効果」ということだろうか。

しかし、これで直接に発生する需要は、広がりがない。新紙幣に対応する機器は、日本以外では売れることはないし、その技術が紙幣に関するもので、海外でも応用が効いて売れるものだとしても、世界的にキャシュレスに向かう中で、縮小していく市場であるとみておくのが正しいのだろうと思う。そうであるとすれば、この先お金に余裕があると思えない日本にとって、この部分での投資をすることは、一時的に特定の業界が潤うことはあるかもしれないが、社会全体としてみれば、次の利益を生むことには繋がらず、損をすることがわかっている投資だと言ってよいだろう。

その上、海外からの旅行客(インバウンド)が現金を使うときにも、新旧紙幣の混在は混乱を生むことになり、マイナスの影響は考えられるが、少なくても消費促進の効果は期待できない。

一方で、これがキャシュレスを推進する契機になるのだとしたらどうだろう。例えば自動販売機を新紙幣に対応したものに更新するくらいなら、むしろキャッシュレス対応機、というよりキャッシュレス専用機にして、現金の管理が不要でコストを減らせる分、1円でも2円でも商品価格を下げたらどうだろう?現金対応の機械で、例えば100円の商品を99円にすることは、釣り銭のことを考えると現実的ではないが、キャッシュレス決済であれば、こうした端数は運用上のコスト増にはならない。

その上、今年はいわゆるキャッシュレス補助金などを活用することで、機器の導入コストを低減できる政策もあり、消費増税分をキャシュレス決済であればポイントで還元するという動きもある。これを機に、新紙幣は折り目をつけずに記念にしまっておき、現金からキャッシュレスに乗り換えていく、というのが、事業者としても消費者・生活者としても正しい方向であるように思う。

昨年、キャッシュレス先進国の1つであるというスウェーデンを訪問したのだが、この国でキャッシュレスが進んだ理由の1つに、新紙幣への機器の対応コストをかけるくらいなら、キャシュレスにして無駄な投資をしない、という選択をした結果だ、ということがあるという。さらにすすんで、今では身体に注射した微小なICチップがカード等の代わりになっている、という話が最近発売された下記の本でも触れられていた。

もちろん、紙幣のことだけでなく、スウェーデンの銀行が連携して実現したスウィッシュの仕組みなど、トータルな取り組みが同国のキャッシュレスを実現したのだが、この新紙幣の切り替えがキャッシュレスの1つのきっかけになったという経験・歴史に学ぶべきところは多いと思う。

キャッシュレスの推進で、人手不足を解消し、労働時間が削減され、インバウンドの買い物が便利になり、現金にまつわる詐欺や強盗などの犯罪がへる、それも社会全体で見れば劇的に減少することが期待でき、これは今の日本の社会問題の多くを解決する。

政府日銀が、そこまで見通して紙幣刷新を決めたのだとしたら、さすが、というほかはない。

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