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歌劇の国のゲバラと小林一三の理想

宝塚歌劇のミュージカル『チェ・ゲバラ』には驚かされました。阪急や東宝の創業者であり、筋金入りの自由主義者である小林一三氏の劇団が、よりによって共産主義革命の英雄であるエルネスト・ゲバラを好意的に取り上げたからです。ちなみに女性がゲバラを演じた事には何の違和感もありません。あの轟悠さんですから。

戦前、商工大臣に就任した小林一三は、当時の統制経済体制を強力に推進する革新官僚(岸信介)と対立し、結果的に辞任に追い込まれました。民間企業の活力を重視する彼が、そもそもなぜ民間経営者から大臣に転身したのでしょうか。

鹿島茂氏の著書『小林一三』(中央公論新社)によると、小林は、電力などのインフラセクターは「資本主義原理によらず『百年の大計』的な国営事業とすべきであるが、それ以外のセクターはすべて民営化にして効率化を図るという『より高度でより能率的な民有民営の促進』」という考えを持っており、そのような観点から、小林は商工大臣の就任を受け入れたとの事です。

一方、ゲバラのほうも、ただ共産主義国家の成立を目指していたというよりは、むしろ自由で民主的な国家を目指していたようです。米国の帝国主義を憎んでいましたが、米国と対立していた旧ソ連の支配下に入る事もよしとせず、結果的に彼はキューバから出る事になります。

小林一三とゲバラは、アプローチこそ違うものの、目指す社会や理想を追い求める姿勢に共通点があります。両者とも、理想を実現するための手段に当時も今も一部批判はあるようですが、その姿はやはり尊いですね。現在の政治家にあまり尊さを感じさせる人がいないのは寂しい限りです。

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お読みいただき有難うございました。 小難しい経済ニュースをより身近に感じて頂けるよう、これからも投稿してまいります。

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宮嵜 浩(エコノミスト)

三菱UFJモルガン・スタンレー証券 景気循環研究所シニアエコノミスト。日本経済の分析・予測を担当しています。

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