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フリーアドレスはもう古い!社員の力を最大限に引き出す「ABW」

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

働き方改革の波はワークプレイスにも押し寄せています。在宅勤務の導入やオフィスへのフリーアドレスの導入など、働く環境にも影響を及ぼしています。創造性をもってハイパフォーマンスを出すための職場とは、どのようなものでしょうか? そのヒントは、発売から60年以上経ったいまも熱烈なファンを持ち、また製品そのものが人の創造性を引き出すと言われる「LEGO」社にありました。

――レゴ流の働き方とは、具体的にはどのようなものでしょうか?

クリスチャンセン 「アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)」というコンセプトをご存知でしょうか?

一般に、従来の働き方は、社員に固定席が割り当てられた「静的」なスタイルでした。会議などで席を離れることはありますが、基本的に社員はオフィス内をあまり動かず、特定の場所でデスクワークをします。その後、「フリーアドレス」というコンセプトが台頭してきました。社員を一つの席に固定せず、働く場所を自由に選択できるようにしたのです。

これによって、社員がオフィスを回遊し、自然発生的な会話を生むことを狙いました。会話が新たなアイデアを生み出す可能性があるからですね。物理的なオフィススペースを節約する効果もありました。

ただし、フリーアドレスを導入した企業の中には、必ずしも狙った効果を得られていないケースもありました。社員の移動があまり起きなかったのですね。その原因は多くの場合、社員に席を移動する「理由」を与えていなかったことにありました。あえて自分が席を移動する強い動機がなく、結果的に同じ席にずっと座る、という状態になっていたのです。

フリーアドレスを導入したものの実質固定席化していたり、必ずしも狙った効果を得られていないという話はよく聞きます。それどころか、オープンなワークスペースは逆にコミュニケーションや集合知が得られにくくなってしまうという研究結果もあります。英王立協会が発行する学術論文誌『Philosophical Transactions of the Royal Society B』に掲載された論文『The impact of the ‘open’ workspace on human collaboration』によると、オフィスを従来のレイアウトからオープンなものに変更したところ、従業員同士の直接のやりとりは時間換算で70パーセント減った一方で、電子メールの量は22〜56パーセント増加。また生産性も落ち込んだとのことです。

先のLEGO社では、ABW(Activity Based Working)という勤務体系を導入することで、この課題を解決しようとしています。

こうした反省から、現在はこのフリーアドレスがさらに進化し、ABWと呼ぶ働き方が注目を集めています。

ABWの特徴は、自分の業務や活動に合わせて執務エリアが個別にデザインされている点です。一般的なデスクタイプの執務スペースに加えて、例えば、一人で集中して仕事をしたい人のためには、静かで防音設備のある個室を用意したり、カジュアルな打ち合わせのためのソファスペースを用意したりします。プレゼンテーション用には、少し広い会議室と、社員の活動に応じて最適な仕事環境を用意します。もちろん、雑談ができるコーヒーエリアも重要です。

社員は、自分の業務に応じて場所を移動し、環境を変えていくことで、最大のパフォーマンスを追求してもらいます。どの場所で働くかというオーナーシップを社員に委ねつつ、能動的に働き方を選んでもらうのです。

ABWは、オランダのコンサルティング会社「Veldhoen + Company」が提唱したもので、仕事の生産性を高める新たな手法として各国で注目を集めています。

考え方の核となるのは、フリーアドレスが「物理的な環境」にフォーカスしているのに対し、ABWでは「人の行動」に注目して働く場所やツールを決めていきます。

――欧米企業が取り入れている「ABW」とはどんなものなのでしょうか?

 人の活動ベースで働き方を考えるところに特徴があり、生産性を最大化させるための「働き方戦略」の一つです。さまざまな活動に適した空間をオフィス内に複数設け、その活動ごとに空間を使い分けることで、各活動の生産性を上げるのです。

 組織から与えられた場所と決められた時間の中で働くのではなく、社員一人一人が働く場所や時間の使い方、仕事の仕方を自ら考えながら働くことをABWは目指しています。

――社員が個々に机を持たない「フリーアドレス」にも似ていますね。ABWはフリーアドレスとはどんな違いがあるのですか?

 フリーアドレスは、オフィスの中でどのデスクを選ぶかということに終始してしまいがちですが、ABWは具体的に人がどういう行動をしているのかをベースにして、働く場所やツールを決めていきます。ABWの要素には(1)「物理的な環境」、(2)IT環境などの「テクノロジー」、(3)社員の「行動」という3つの軸があります。

 フリーアドレスはこの中の「物理的な環境」の側面しか見ていないのに対し、ABWは望ましい結果を出すために、ITなどのテクノロジーを使ったり、社員の行動を変えたりすることで、「いつでもどこでも」働けるように、働き方を変えるのが目的になっています。

ここで重要なのは、ABWにより社員により仕事に対するオーナーシップ意識が芽生え、能動的になっていくということでしょう。人はやらされるより、自ら動くほうがパフォーマンスが出ますし、モチベーションも高まります。人を中心にしたワークプレイスは見た目だけでなく、内面から社員に変化を促す可能性があるのかもしれませんね。

今後も最先端の働き方について、注目していきたいと思います。

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タイトル画像提供:kou / PIXTA(ピクスタ)

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