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コロナショックで不安視されるジェネリック医薬品の供給不足と品質低下

新型コロナウイルスの被害拡大は、多くの業界で形成されている国際的なサプライチェーンにも影響を与えている。中国から調達されている原材料は非常に多いため、その物流システムが一部毀損することで製品が安定供給できなくなるカテゴリーも増えてくる。

中国は、医薬品の分野でも世界トップのシェアを獲得しているカテゴリーが多い。特許期限が経過したジェネリック薬(後発薬)の製造においては、インドと中国が世界で8割の製造シェアを獲得している。そのインドに対しても、中国が薬の原材料を供給している構造だ。

米国では医療現場で使われる医薬品の91.7%がジェネリック薬であることから、中国製薬会社の操業中止や、製品の品質(安全性)が低下することは、患者にとっては死活問題になる。

日本は、2000年頃まではジェネリック薬のシェアは低かったが、2002年からは、厚生労働省が先発薬よりも安価なジェネリック薬を処方、調剤した医療機関と調剤薬局に対して、保険点数を加算するインセンティブ制度を導入したことにより、2019年の時点で利用率が80%近くにまで伸びている。現在では、世界のジェネリック医薬品市場で、日本は米国に次いで大きなマーケットになっている。

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後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進について(厚労省)

しかし厄介なのは、中国内に約3000社あると言われる製薬会社は「原薬製造元」の立場で、世界の製薬会社に対してジェネリック薬の原料(原薬)を供給している点である。そのため、表向きは日本の医薬品メーカーが販売していても、実際には中国で製造されている薬ということが多数ある。

中国には、もともと自国の国民(約13億人)に医薬品を供給する目的から、中小の製薬会社が多数存在しているが、彼らは、多額の研究費を投じて先発薬を開発するのではなく、既に特許権利が消滅した他社の薬を合法的にコピーした、ジェネリック薬の製造で実力を付けてきた経緯がある。

医薬品の製造工程では、「医薬品原料」→「医薬品中間体」→「原薬」→「最終製剤」というサプライチェーンが形成されているが、付加価値の高い特許薬の製造については、米国・欧州・日本の製薬会社が自ら行うが、一般的な治療で使われるジェネリック薬については、世界の製薬会社が、中国から中間体や原薬を調達しているケースが8割以上を占めているのだ。

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そのため、薬の品質についても中国依存の部分が大きい。2019年10月には、胃潰瘍などの治療で使われる「ザンタック」のジェネリック薬に発ガン物質が含まれていることが、米FDAの検査により判明し、メーカーが自主回収する騒ぎが起きている。同じく、高血圧治療のジェネリック薬「バルサルタン」の原薬にも、発ガン物質が含まれていたことが明らかになっている。

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新型コロナウイルスで甚大な被害を受けている中国湖北省は、製薬産業が盛んな地域で、中国で製造されるジェネリック医薬品のうち、およそ4割は湖北省の製薬企業が関与している。そのため、今後はジェネリック薬の世界的な供給に影響が出ることが懸念されている。他地域にある中小の製薬会社から原薬を調達するにしても、これから製造されるジェネリック薬の品質が下がる不安もあることから、FDAでは医薬品流通のトレーサビリティ監視を強化する必要性を指摘している。

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