「ジェンダーギャップ指数 120位」に思うこと。

日経COMEMO KOLの西村創一朗です。今月も安定の月末最終日投稿です。

息子たちに「春休みの宿題は3月中に終わらせておけ。話はそれからだ。」とか言っているくせに、自分は締め切りギリギリまで書かない体たらくですからね。こんなオトナになってはいけません。

さて、今回のお題は #女性に活躍してほしい理由 です。

実はすでにこのお題の投稿募集の締め切りはすぎているのですが、書かずに終われないテーマだったので筆をとることにしました。書かずに終われないと思ったので筆をとることにしました。

「女性に活躍してほしい理由」は必要なのか?

以前、日経COMEMOでもこんなことを書きました。

「西村さんは男性なのに、なんで女性のキャリア問題に関心を持っているの?」というツッコミを受けることがあります。

確かに、男性目線かつゼロサムゲーム的な発想で考えると女性が活躍しやすく慣ればなるほど、椅子取りゲームのライバルが増えて、男性の座席数が少なくなって競争が激しくなる、みたいな側面はあるかもしれません。

ただ、僕にとってはそんなことはどうでもいいと思っていて、女性であることが理由に活躍できるフィールドが限定された社会・チームよりも、性別や国籍、年齢などどんな個性を持っていたとしても、全員がフルに才能を発揮できている社会・チームのほうが絶対楽しい!とシンプルに思えるのです。

こういう風に考える男性は決して少なくないと思っていますが、僕が少し特殊なのは、「物心つく頃から『女性が活躍できる社会にしたい』と思っていたこと」だと思います。

「女性であることが理由に活躍できるフィールドが限定された社会・チームよりも、性別や国籍、年齢などどんな個性を持っていたとしても、全員がフルに才能を発揮できている社会・チームのほうが絶対楽しい!」

というのが、端的に言うと僕の #女性に活躍してほしい理由 なのですが、そもそもギモンに思っていることがあるのです。

「女性に活躍してほしい理由」がなければ、女性は活躍しちゃいけないのか?と。

KOLの碇邦生先生が、メリットありきで推進する女性活躍のことを「功利主義的女性活躍論」と書かれており、それでは真のダイバーシティは実現できない、という趣旨のことを仰っていますがまさに仰るとおりだなーと。

そもそも「なぜ、女性であることを理由に何かをあきらめないといけないのか?」という疑問から出発するべきだと思うんです。

「女性だから、家事や育児に専念すべき」

みたいな「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」があって、知らずしらずのうちに、活躍することをあきらめざるを得ない状況になってしまっているんですよね。

「女性に活躍してほしい理由」なんていらなくて「女性であることを理由に活躍することをあきらめないといけないこと自体が理不尽だ」というのが僕の結論です。

「ジェンダーギャップ指数」は未だにG7最下位…

何をもって「女性活躍」とするのか?は百人百通りのそれぞれの定義があると思いますが、一般的には「ある特定の職業・役割に占める女性割合を増やすこと」を意味していることが多いですね。

女性活躍の推進度を定量的に知る指標として「ジェンダーギャップ指数」というものがありますが、ちょうど今日「ジェンダーギャップ指数2021」が発表されました。

日本は調査対象となった世界156カ国の120位だった(前年121位)。主要7カ国(G7)では引き続き最下位。特に衆院議員の女性割合が低いことなど、政治参画における男女差が順位に影響した。

とありますが、もう少し詳しく見ていくと

今年も経済と政治の分野のスコアが著しく低く、2分野が共に100位以下になっているからだ。経済は117位(前年は115位)、政治は147位(前年は144位)だった。

と政治参画における男女差が順位に影響していることがわかります。

具体的には、

・国会議員(衆院議員)の女性割合(140位、スコア0.110)
・女性閣僚の比率(126位、スコア0.111)
・過去50年の女性首相の在任期間(76位、スコア0)

という状況で、政治が147位になっていると。前年は144位なので3位ダウンしている状況です。

一方、経済的機会についてはどうでしょうか。

・労働参加率の男女差(68位)
・同一労働の男女賃金格差(83位)

については、比較的健闘しています。
*あくまで「121位」という順位に比べてです。「良い」わけでは決してなく「マシ」という程度の話ですね。

じゃあどの項目が足を引っ張っているのか?というと、

・管理職に就いている男女の差(139位)

なんです。

139位ですよ!139位。

国会議員(衆院議員)の女性割合(140位)と同ランクの体たらく。

つまるところ「日本は女性が活躍できない国」として世界認定されてしまっている、ということ。

これは本当にマズい状況ですよね。

「管理職になりたい女性が少ない問題」の正体とは

こういう状況を受けて「うちの会社でも女性活躍を進めよう!女性管理職をふやそう!」という動きが最近強まっているわけですが、どこの会社でも必ずぶつかるカベがあります。

それは…

「そもそも、管理職になりたいと思っている女性が少ない…」

という事実。

僕の古巣、リクルートは「女性活躍」という言葉が世に出る前から女性が当たり前に活躍していたこともあり、「女性の管理職割合」はかなり高いです。

日本企業の女性の管理職割合の平均は7.8%なので、それに比較するとケタ違いに高いです。

それにもかかわらず、人事は常に「マネージャー・部長・役員になりたい女性社員が少ない…」とアタマを悩ませていました。

「女性の活躍に関する意識調査2020」によると、

管理職への打診があれば、受けてみたいかどうか聞いたところ、『そう思う』は18.7%となったのに対し、「全くそう思わない」と「あまりそう思わない」を合計した『そう思わない』は53.9%となりました。

とのこと。

「管理職になりたいと思いますか」ではなく「管理職への打診があれば、受けてみたいか」と、かなり控えめな質問にもかかわらず、2割弱しかいない、というのはなかなか考えものです。

「管理職になりたくない」理由は…

・「責任が重くなるから」(50.6%)
・「ストレスが増えそうだから」(49.7%)

が大きな理由だそう。実際に、とても優秀で結果を出しているにもかかわらず、これを理由に管理職を固辞している女性の方を何人も知っているので、とてもよく理解が出来ます。

このデータを受けて、

「女性の管理職割合が低い原因は女性自身にある」
「そもそも、管理職になりたい女性が少ないのだから、女性の管理職割合を増やす必要なんてないのでは?」

ということを宣う人がいるのですが、それは完全に誤りです。

重要なのは、
「責任が重くなるから」
「ストレスが増えそうだから」

ということを理由に「管理職になりたくない」と回答せざるを得ないのはなぜか?と考えることです。

「責任が重くなる」「ストレスが増える」ことが家事や育児の両立が難しくなりそうなので、というのはとてもイメージしやすいのですが「子どもはいない」女性も同様の理由で管理職になりたくない、と回答している点が非常に気になりますよね。

いったい、何がそうさせているのでしょうか。

「インポスター症候群」をどう乗り越えるか?

実力も実績もあるにもかかわらず、なぜ管理職になりたいと思えないのか。

その考察のヒントになるのが「インポスター症候群」というキーワードです。

実力がある女性にみられる「自信ない症候群」は海外ではインポスター症候群として知られる。米フェイスブックのシェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)が著書「リーン・イン」で自身にインポスター症候群の傾向があると記し、広まった。人材開発に詳しい立教大学の中原淳教授は「自分の能力を過小評価する傾向」と説明する。自己肯定感の低さは女性に多いという。
引用:「自信ない症候群」克服へ 管理職手前の女性に対策

「インポスター」という言葉は最近流行りのオンラインゲーム「among us」をやったことがある方は聞いたことがあるかもしれませんが、詐欺師・ペテン師を意味する言葉です。

もちろん実際に詐欺師であるわけではなく、自分の力で何かを達成して評価されても、「自分にはそんな能力はない」「評価されるに値しない」と過小な自己評価をしてしまい、あたかも自分自身が詐欺師のように思え、罪悪感を感じてしまう、という意味です。

インポスター症候群は女性に多いと言われていて、エマ・ワトソンさんやFacebook COOのシェリル・サンドバーグさんもインポスター症候群だった、と告白しています。

ではなぜ女性がインポスター症候群に陥りやすいのか?という要因については、こちらの記事でわかりやすく解説されており、非常に納得感がありました。

対人関係療法専門クリニックの院長を務める精神科医で、衆議院議員でもあった水島広子は、インポスターの心理状態を症候群と呼ぶことには医学的にも懐疑的であるとした上で、日本においては、これまで社会や教育の中で女性に与えられてきたステレオタイプが、インポスターの心理状態を招く一因かもしれないと指摘する。

「日本の女性たちは、自分がリーダーになって引っ張っていくという教育をされていないし、どちらかというとサポーティブな立場にいて、気配りをして隙間を埋めていくような業務を期待されることが多い。そういう立場にいるほうが楽だという女性もいるかもしれません。そうした状況で、たとえ『女性活躍』が政策だからといって、いきなりリーダーシップを求められても自信が持てるわけがありません」

そう、結局は「女性はかくあるべき」というアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)があり、その古典的な「女性像」と、「管理職として求められるリーダー像」との間に大きなギャップを感じてしまう、ということなのでしょうね。

そして、そのアンコンシャス・バイアスをつくり出しているのは、男性も含めた僕ら一人ひとりに他なりません。

「女性の管理職割合が低い原因は女性自身にある」

なんて考え方は言語道断。

女性をインポスター症候群に陥らせている要因は、僕らが勝手につくり出しているアンコンシャス・バイアスにあるわけですから、男性も女性も、まずは僕らが「アンコンシャス・バイアスを持っている」ということを自覚して、一つ一つのバイアスを「それって思い込みだよね?」と意識的にブレイクしていく必要があるなーと思っています。

とはいえ「意識するだけでは意識は変わらない」ため、「意識を変えるための具体的な行動」が必要なわけですが、最近メルカリがリリースされた「アンコンシャスバイアスワークショップ」が大変参考になります。

まずは無償公開されているスライドを眺めてみて、自分でエクササイズするだけでも「意識が変わるきっかけになる行動」になるでしょうし、自分のチーム内でやってみるとなお良いでしょう。

できれば、全経営陣・全管理職・全社員を対象にやれると良さそうですが、いきなりは難しいと思うので、まずは小さなところからでも。

「真の女性活躍」への道のりはまだまだ遠く、「ジェンダーギャップ指数121位」の数字を見るたびに「全然変わらんやん、日本…」と愕然とした気持ちになりますが、嘆いていても何も変わらないので、自分にできる行動を一つ一つやっていくだけですね。どんなに小さくとも。

それではまた!


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