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懇親会やミーティングは関係維持に必要

コロナ渦によって、これまで定常的に実施されてきた新人歓迎会や社員旅行など、職場での懇親の機会が少なくなっています。

しかし、それでも業務は回っているため、懇親の場は本当に必要だったのかが問われています。

また、連絡も相談もメールやSlackでできるので、複数人が集まるミーティングは無駄が多く、個人の業務に集中したいという理由で、開催を極力減らしたいという風潮も出てきています。

仕事が個人で完結する場合はミーティングを行う必要はないでしょうし、無駄なミーティングのあり方を見直して改善していくことも、もちろん必要です。

ただし、組織で働き続けるのであれば、複数人が集まること自体を嫌う傾向は、全体の活動の生産性を下げるリスクにつながります。

そもそも自分以外の人と一緒に働くと、そこには苦手な人がいたり、面倒な調整が発生したりもします。それでも、多くの人が組織に所属して仕事をしている意義は何なのでしょうか。一人では不安だけど、大きな組織であれば安定性が高いなどの打算があるかもしれませんが、それは副次的な効果に過ぎません。

米国の経営学者のチェスター・バーナードは組織を「コミュニケーションによって共通認識を形成した共通の目的に対して意欲をもった二人以上の活動」と定義しています。

組織はひとりでは決して創出できない大きな価値を生み出すために、異なる強みを持つ人たちが集まって協働するために存在しています。

安定して関係維持できる上限の数であるダンバー数を導き出した英国の人類学者のロビン・ダンバーは、研究から人間の集団活動に対して2つの法則を提示しています。

① 組織の階層化と各規模

ダンバー数とは、知り合いとして定期的に接触し続けられる人の上限の数で、値は150人とされています。

ダンバーは、その中で資源を共有して守りあう密接な50人程度集団、さらに共通の目的を持って緊密に連携する15人の集団、最後に5人前後の互いに信頼しあった極めて親しい集団が発生することを発見しています。

この4階層の集団が上手く機能することで生産的な活動が可能となります。

人間の認知限界と組織の定義を踏まえると、大規模な活動は適切に階層化されて行われなければならないことがわかります。

② 関係性を築くための交流頻度

ダンバーは、4カ月以上有意義な交流がないと親近感が失われること、また極めて親密な関係性を維持するためにははるかに高い頻度での交流が必要になることを示しています。

サルはお互いに毛づくろいを行うことで関係性を構築しており、群れを維持するために多大な時間と労力を投下しています。

人間は言語を獲得し、会話を用いることで社会的な関係性を維持する効率を著しく高めました。そして、祭りや会合など集団での対話の機会をつくることで、全ての人が1対1で会話をするよりも高い効率を実現できるようになりました。

日々時間が余っており、各自が縦横無尽に対話をしている環境であれば、あえて懇親やミーティングの場を設ける必要はありませんが、忙しい営利組織においてそんな状態はなかなか存在しないはずです。

150人の集団を団結させるためには四半期に1度、50人では月に1度、15人では週に1度、5人では毎日といった頻度で、意図的に場を設計すべきです。

一般的なミーティングの目的は「方針伝達、意思決定、活動進捗や課題などの情報共有、課題の深堀り・施策のアイデア出しなどの助け合い」など多岐にわたりますが、見落とされがちな目的がここで議論してきた「参加者間の関係性の維持」です。

特にメール、Slackなど電子的な対話の手段が発達した現代において、この目的の重要性は高まっているのです。

組織全体での価値創出量を高めるこを目指すのであれば、懇親会やミーティングを安易に不要だと断ずるのではなく、団結力を高めるために有効活用するべきなのです。

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