原子力の担い手がいなくなるリスク
2050年に向けた国の長期エネルギー戦略の提言が取りまとめられた。パリ協定に基づき、再生可能エネルギーを主力電源化し、原発への依存度を下げる。2014年の基本計画「30年度に原発20-22%、再生エネ22-24%」対比、脱原発に比重のかかる世論を鑑みた方針転換に見える。
しかし、主体的に方針転換するならましだが、原子力技術がなし崩し的になくなってしまうリスクもあることを指摘しておきたい。
東野圭吾著「夢幻花」に、関西の大学で原子力工学を研究している大学院生が自分の将来を憂う場面がある。実際に原子力を専攻する学生数は激減しているとも言う。原子力の担い手確保は難しい。再生可能エネルギーの推進にはコストがかかる上、原子力に関するコスト負担さえ既に電力各社の経営を圧迫していることもある。中間貯蔵施設が物理的に不足している問題が原子力のボトルネックにもなりうる。
「原子力をどうするか」の議論を放置してきたツケが、日本国民として原子力を主体的に放棄するのではなく、選択肢として原子力を打ち出せない事態として戻ってくる可能性が出てきていることは、実は大きなリスク要素になっていると言えないだろうか。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29216810Q8A410C1EE8000/