楽しいばかりじゃないフリーランスのメンタルの闇(と、その対処方法)
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楽しいばかりじゃないフリーランスのメンタルの闇(と、その対処方法)

市原えつこ(メディアアーティスト)

新卒入社した大企業で5年間働いてから、意を決してフリーランスになってからはや5年。

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会社を辞めた直後は、自分の時間の使い方・受ける仕事の方針・身の振り方を自分で選べることはとっても清々しく、すべてが新鮮。
フリーランス1年目は「自由楽しい!!フリーランス最高!ヒャッハー」と興奮状態だったのですが、
独立して2年目に差し掛かる頃、じわじわと真綿で首を締めるようなメンタルの苦しさがやってきました。
今ではそれなりに克服できて、「フリーランス、良いものだな」とじんわり思っていますが、当時は結構つらかったです。

巷に出てくる情報として、「フリーランス最高!!」というものは数多くあれど、「フリーランスのここがつらいよ」というリアルな情報はあまり少ないように思うので、あえてフリー特有のメンタルのつらみと、自分なりの対処法をまとめてみたいと思います。

組織の名前ではなく、自分の名前で生きていくプレッシャー

独立すると、当然ながらそれまで使えていたはずの組織の看板は外れますから、「自分の名前」をブランディングしていくことが必要になります。
大企業の社員時代、天の邪鬼だったからか「会社のブランドや看板なんてくだらない」と思っていましたが、会社の看板、めっちゃありがたいです。もし何か失敗しても対外的には個人ではなく会社の責任に緩和されるし、会社の名前だけで話を聞いてくれたり信頼してくれることもある。

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自分の名前・ブランドがベースの仕事はハイリスク・ハイリターン(場合によってはローリターンですらある……)で、何のケアもなくずっと続けると消耗することも。ずっと顔出し記名の仕事を貫いているライターさんや、視聴者から良いも悪いもフィードバックを直接受けるインフルエンサーさんとか本当にすごいなと思います。メンタルが化け物レベルに強いのか、もしくは満身創痍なのか、、、

対処法:自分の名前が全面に出る仕事って良くも悪くも様々なエネルギーを使うので、たまにはあえて匿名での仕事をやったり、表に出ない仕事、秘匿性・機密性の高い仕事なんかもやっていくとメンタルのバランスが取れるかもしれないです。人にもよるけど、案件の全部が全部「俺!!!」カラー全開だと疲れちゃいそう。
あと、会社の名前って辞めたあともブランド力を発揮することもあるので(元○○、という形で)、会社の看板の恩恵はむしろ辞めてから感じられることも。個人という看板+元所属組織というサブ看板の看板2枚持ちで行くことも可能なので、そこはしたたかに使っていきましょう。

苦楽を分かち合う同僚、指導者がいない

会社員の頃はあれだけ鬱陶しいと思っていた同僚や先輩たちとの飲み会・ご飯会が全くなくなるとそれはそれで寂しい。居酒屋文化のないアメリカ人が意外とメンタルヘルスやられがち、という話を聞きかじったことがあるのですが、頷ける話です。
フリーランスだと自分と完全に同じ境遇の同僚はいないので、そういう意味では孤独です。愚痴とかもやすやすと言えなくなりました(フリーランス、機密事項を1人で抱えていることも多いので、気軽に業務の愚痴なんかも友人に言えないし、SNSに仕事の愚痴を書くのも信用問題になる)

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上司がいないのも、「ヒャッハー!監視の目がないぜ!!清々しい!!」と最初は嬉しい面もあるのですが、自分の仕事に対して率直にフィードバックや叱咤激励をもらえる機会も激減するので、それも良し悪しだなと感じます。同じ組織ならともかく、わざわざ「外の人」である発注先に率直なフィードバックを言ってくれる人もなかなかいないので……。

対処法:横の繋がりを大事にする。社会的に孤立しないように人と関わる。長くフリーランスでヘルシーに働いてる人はやはりネットワークを大事にしている印象です。個人的には異業種の友達や、同業者でも海外の友達は貴重です。同じ業界or同じ国じゃないからこそ気軽に付き合えたり、気兼ねなく悩みを相談できたりします。
時にはお金を払ってカウンセリングやコンサルティング受けたりするのも身になります。それにしてもフリーランス、「上司」機能にもお金がいるんだぜ……。会社員の方には、いつでも業務やスキルアップ等のことで悩みを相談できる上司のありがたみを感じてほしいです。あれは割といいものだった。


全て自己責任、自分で自分の方針を全て決めないといけない不安

雇い主のいないフリーは、全ては自己責任・自己決定が基本。
「誰のせいにでもできない」ということは清々しいことでもありますが、自分の判断ミスは「チクショー」と歯噛みしながら自分で尻拭いをしなければなりません(よくあります)。もし上から指示されたことであれば精神的に言い訳もできるのですが、この判断ミスをしたのは他の誰でもない、俺……!!!

また、フリーランスは自分で選択できる範囲が広い。どこで、誰と、どんな仕事をするか、どれも自由です。逆に言うと自由過ぎる。膨大な自由を与えられた時、人は意外と不安になるものです。
自分の尻を叩く人もいませんので、仕事の水準やコミットメント量も、自分のモチベーションや熱意に依存する状況がずっと続く。長距離ランナーのように、自分の心身と志を健やかに保っていかなければならず、なかなか気の長い戦いだと感じます。

対処法:「このお仕事を受けるか受けないか」等、様々な選択肢に対して、メリデメを検討するエクセルのようなシートをつくって書き出すようにしたところ判断力の精度が上がってきました(私はNotionのテーブル機能を使ってます)。そして実際に下した判断についても後から振り返って、自分の判断力を磨くようにしたら迷うことが減ってきました。あと、「野生の勘」「嗅覚」みたいな第六感を研ぎ澄ませるのもめちゃ大事です。

また、こちらの取材でもお話しているのですが、ルーティーンで何も考えずにラクにできることばかりやっていると能力もモチベーションも緩やかに下がっていくので、定期的に新しいチャレンジを自分に貸すことで新鮮さを吹き込むことができます。わざわざ自分で自分に試練を与えることが必要な、ドMなフリーランス街道……!!

ワークライフバランスの崩壊

フリーランスの仕事にはタイムカードがなく、どこからどこまでが就業時間なのか曖昧になりがち。家で好きなタイミングで仕事をできるのはラクではあるのですが、ついダラダラと長時間働いてしまったり、意外とまとまった休暇をとるのも罪悪感があって勇気がいります。メリハリをつけて働くのは何気に高等技術で、気づけばブラック労働になってしまうフリーランスも……。

対処法:独立当初はついつい土日や連休も「フリーには関係ねぇ!」と仕事しがちだったのですが、フリーランスでも世間とある程度は休みをあわせると心が穏やかになりました。日曜日はなるべく「お金を稼ぐためのクライアントワーク」はしないようにしてます(自分のウェブサイトのリニューアルとか作品制作とか、自分のための作業はすることはある)
あと、低単価で仕事を受けまくると「貧乏暇なし」になりQOLが下がるので、ちゃんと単価交渉をしたりお受けする案件の優先順位をシビアにつけるのは、自分の人生のためにも大事かも。

暇でも忙しくてもつらい

会社員時代だと、業務量が少ない時期は「わーい!!暇だ〜、ラッキー!!残業しないでさっさと帰ろう」と無邪気に思ってたのですが(暇でも忙しくても給料もたいして変わらんし)、自営業者は会社員と違ってコンスタントな収入が保障されていないため、暇だと漠然とした不安にとらわれることになります。暇な時期に「SNSを見てるとみんな忙しそう、自分は今こんなに暇でこの先大丈夫なのだろうか……?」とモヤモヤするのはフリーランスあるあるでは。

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かといって忙しいと、「あれもできてない、これもできてない、明日イベントなのに準備が全然追いついてない、自分はなんてダメなんだ」と自己嫌悪に。「もし時間に余裕があったらアレがやりたいなあ……」と夢見つつ、一体いつその暇がやってくるのか、、とため息。

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対処法:仕事に波があるのは仕方がないと割り切る。不思議なもので忙しい時はどんどん忙しくなるので、私はクソ忙しい時に未来の暇になった自分へ「忙しい時は死ぬほど、際限なく忙しくなるから、時間がある時は時間があるときにしかできないことをやれ」と備忘録を残したのですが、これが地味に功を奏しています。
繁忙期に「暇な時にあれやっときゃよかった……」「逆にあんなことやらなかったらよかった」と後悔したことを言語化したのも自分にとっては役立ちました。

また、手持ちキャッシュが少ない時に暇だとまじで焦るので、常にある程度の資金プールを作っておくことで目先の案件の多寡に振り回されにくくなりメンタルに良いです。手元のキャッシュ・貯金はあるに越したことはない(だからこそ節税リテラシー&マネーリテラシーは大事)。

あとフリーランスを何年かやると、自分の1年間の閑散期〜繁忙期のバイオリズムがわかってくるので焦りにくくもなりました。アーティストだと芸術の秋や、年度内予算消化シーズンの年度末にあたる秋冬のシーズンが死ぬほど忙しく、春は比較的スケジュールに余裕があることが多いです。

以上、自分がぶつかったフリーランスのメンタルの闇と自分なりの対処方法をまとめてみました。ここで書いている内容は、すべての自営業者が多かれ少なかれ体験するのではないかと思います。様々な方法をつかって、健康的に自営ライフを続けていきましょう!

文:市原えつこ
メディアアーティスト、妄想インベンター。早稲田大学文化構想学部卒業。Yahoo! JAPANでデザイナーとして勤務後、2016年に独立。日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き、テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品を制作する。アートの文脈を知らない人も広く楽しめる作品性と、日本文化に対する独特のデザインから、国内外から招聘され世界中の多様なメディアに取り上げられている。第20回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門優秀賞、世界的なメディアアート賞「アルス・エレクトロニカ賞」栄誉賞、EU(ヨーロッパ連合)による科学芸術賞「STARTS PRIZE」ノミネートほか受賞多数。2025大阪・関西万博「日本館基本構想事業」有識者委員。
http://etsuko-ichihara.com/
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市原えつこ(メディアアーティスト)

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市原えつこ(メディアアーティスト)
メディアアーティスト、妄想インベンター。弔いロボや喘ぐ大根、仮想通貨奉納祭など謎の発明品多数💡文化庁メディア芸術祭優秀賞、アルスエレクトロニカ栄誉賞、総務省異能など。 日本経済新聞COMEMOキーオピニオンリーダー http://etsuko-ichihara.com/