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投資・収益事業としてのEV充電ステーション開発

 電気自動車(EV)の時代には、ガソリンスタンドのような燃料補給の専用施設は次第に消滅して、その代わりとして、スーパーやレストランなどの駐車場に充電スポットが設けられて、利用者は買い物や食事をしながら充電をするスタイルが主流になる。しかし、各店舗が独自に充電スポットを設置することは、電力会社との有利な契約や、充電設備の管理が難しいため、今後は充電ステーション事業の系列化が進むことになるだろう。

充電スタンド検索の「GoGoEV」によると、2019年11月の時点で日本国内では、普通充電と急速充電を合わて約22,000ヶ所の充電スポットが存在しているが、その大半は、自動車メーカーとディーラーが整備するものと、国の補助金を活用したもので、独立した収益事業として成り立っている例は皆無に等しい。

しかし、EVを本格的に普及させている中では、充電ステーションの運用自体が、太陽光発電のようにプラスのリターンが得られる収益事業として成り立ち、経営者や投資家が次々と参入してくる仕組みを作っていく必要がある。

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■出所:2018年12月までのGoGoEV充電スタンド登録数

米国では、利用者や事業者の視点に立ち、採算性も考慮された充電スポットのネットワーク化が進められている。2007年に米カリフォルニアで創業した「ChargePoint」は、公共施設、商業施設、アパートやマンションのオーナーを対象に充電スポットの整備を進めている新興企業だが、特許を取得した充電設備の製造と、利用会員を管理するクラウドシステムを開発している。現在では米国とカナダを中心に54,000ヶ所の充電スポットを展開している。

ChargePoint社では、物件オーナーに対して、充電設備の販売、または充電量に応じた従量課金制のリースをしているが、物件オーナーが充電ステーションの運営により収益化できるプラットフォームまでを提供しているのが特徴である。

充電料金を決める裁量は、物件オーナー側に与えられていて、電気を無料で提供することや、曜日や時間帯によって料金を変動させることもできる。また、利用できるユーザーの条件を設定することも可能だ。たとえば、企業が管理する駐車場では、従業員には無料で充電できる権利を与えるが、外部の利用者には有料課金する。スーパーの駐車場では、平日は充電料金を無料ととすることでEVユーザーの集客を促し、混雑する休日は充電料金の課金をすることで収益化をする、といったプランも考えられる。

一方、EVドライバーはChargePointのモバイルアプリをインストールすることで、賢いEVライフを送ることができる。アプリではネットワーク化されている充電ステーションの中から、価格条件を「Free」で検索すれば、無料で充電できる最寄りのスポットを見つけられる。また、充電待ちで混雑しているスポットでは、待機リストに登録して、順番待ちの時間を無駄にしなくて済む。充電中に異常が発生したり、正常に充電が完了すれば通知メッセージがスマホに届く機能もあるため、買い物や食事をしていても安心だ。

ChargePointでは、大手自動車メーカー各社とも提携関係を結んでおり、北米だけで数十万ヶ所の充電ステーションをネットワーク化しようとしている。同社の事業には、「独自技術による充電設備の開発」「電力会社から好条件の電気を調達すること」「モバイルアプリでEVユーザーを組織化」「EV充電の特性を把握するビッグデータ分析」という4つの柱がある。

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EVの充電インフラを整備する上での課題としては、アパートやマンションなどの共同住宅に住む人への対策もある。EVは自宅での基礎充電が主体となるが、共同住宅ではEVユーザーが自分専用の充電設備を置くことが難しい。経済産業省の調査でも、実際にEVを購入した人の内訳は、9割が戸建住宅で、共同住宅は1割という大きな偏りがみられる。そのため、共同住宅向けの充電ステーションを整備することは、日本でも今後の課題になる。

日本の住宅事情は、戸建60%、共同住宅40%となっており、都会になるほど共同住宅の割合は高くなるため、EV革命は自動車の所有形態が大きく変わる転換点ともいえる。

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