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リスキリングによる労働移動の促進に経営者は含まれるのか?

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

以前からリスキリングの重要性について様々な記事をあげてきましたが、ついに国家レベルでの取り組みが進む機運が高まってきました。

岸田文雄首相は12日、5年間で1兆円を投じる「人への投資」について3本柱で進める方針を示した。転職者や副業する人を受け入れる企業への支援制度の新設や、働き手のリスキリング(学び直し)に取り組む企業への助成拡大などを挙げた。成長産業への労働移動を促す。

日経電子版

具体的な施策はこれからですが、国をあげて本気で「人への投資」に目を向けたことは素直に評価できるでしょう。「転職者や副業する人を受け入れる企業への支援」がどういったものなのかが非常に興味深いですが、年功序列を打破するという意味で広くジョブ型への移行を促進していくということでしょうか。非正規雇用から正規雇用への転換も促進するとのことですので、詳細は施策の発表を待ちたいと思います。

この方針を具体化するために、自民党内に「リスキリング議連」も発足するようです。

議連は設立趣意書案に「人口減少を補うだけの1人あたり生産性の向上、平均所得の向上がなければ国内総生産(GDP)を維持・拡大できない」と記した。「社会保障財源をまかなうだけの税収を確保することが困難となる」とも指摘した。

政府は人への投資に5年間で1兆円を投じる方針だ。首相は①転職・副業を受け入れる企業や非正規雇用を正規に転換する企業への支援②在職者のリスキリングから転職までを一括支援③従業員を訓練する企業への補助拡充――の3本柱を示した。

議連は3本柱を裏付ける具体策を政府とともに立案する。転職者や兼業する人を採用するスタートアップ向けの現行の補助金の支給対象を大企業などに広げる案がある。有期雇用者らを正社員にする事業主に出す助成金の増額を検討する。

日経電子版

新しいデジタル技術が次々と誕生し、社会全体に浸透しようとしています。日本は国土に比べて平地が少なく、結果的に都市の密度が高いです。また、文化的にも対面の会話や飲みニケーションに代表されるような社内外における狭く濃密な人脈を重要視してきました。特に社内においては年功序列・終身雇用が前提だったことから、長期的な関係性を大切にしてきました。ある意味、高度経済成長はこれなくしては実現し得なかったとも言えるでしょう。

しかし、時代の移り変わりと共に働き方をアップデートする必要があったものの、バブル崩壊以降の失われた30年間で実行することができませんでした。そこにきてコロナ禍に見舞われ、いよいよ抜本的に見直す契機が訪れました。

政府の掲げる「人への投資」という方針は歓迎すべきです。産業における機械化や自動化がさらに進んでいく中で、人がやるべき仕事が再定義されていきます。そこには、新しい技術への理解が不可欠ですし、使いこなすためのスキルが必要です。この方針の元、多くの方々のスキルアップしていくことはまさに国力につながるでしょう。

一方で、リスキリングの対象については、さらに踏み込んだ施策が必要だと考えています。以前の記事でも指摘しましたが、中間管理職および経営層のリスキリングがキーポイントです。

終身雇用、年功序列が強く残る企業において、若手社員のスキルをあげるだけでは変革はできません。それを使いこなす側、つまり経営者および管理職のリスキリングが何より重要だと思います。加えて、ジョブ型に移行することで社員に対してリスキリングに対するインセンティブを働かせることができます。そうなるとこれは会社全体を巻き込んだ対話や意識付けが必須となってきます。

意思決定層が新しい技術を理解しきれるのか。もしくは、大胆にわかる層にバトンタッチできるのか。最近でも大成功した企業の後継者問題がニュースになっています。労働移動を促進するというのであれば、経営者の流動性をどう考えるのかというのは、非常に難しいテーマではありますが避けては通れない議論だと思います。

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タイトル画像提供:saki / PIXTA(ピクスタ)

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