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ビジネスアカデミア人材こそが、イノベーターだ! 〜 #どう活かすアカデミア人材

(Photo by Jennifer Griffin on Unsplash)

日経COMEMOからのお題、「アカデミア人材をどう活かすか?」に意見を述べたい。

私自身、理工学部の修士を出て企業の研究所に入り、その後、社内の新規事業としてコンサルティング事業を立ち上げ、その傍ら、社会人ドクター制度を使って働きながら博士(工学)をとった。そして今では、Slow Innovation株式会社を経営する傍ら、KIT虎ノ門大学院でビジネススクールの教授をしている。こんな私は、アカデミア人材なのか?

実際のところ、この評価はきわめて相対的である。ビジネスの世界では、「アカデミアな人」と捉えられる。なぜなら大学教授だからだ。だが、学会に行くと「ビジネスの実践者」と捉えられる。会社を経営しているからだ。その実態は、どちらも中途半端だとも言えるし、相乗効果でどちらも素晴らしいとも言えるだろう。

ビジネスアカデミア人材

そもそもアカデミア人材と聞いて、どんな人を想像するだろうか?専門領域が尖った、例えば脳科学者のポスドクだろうか。それとも、先住民族を研究する文化人類学者だろうか。あるいはマーケティングの専門家だろうか。

ビジネスの世界では、急激なデジタルトランスフォーメーション(DX)が進むなか、データサイエンティストや高度なプログラミング技術をもつIT人材は引っ張りだこだ。企業は、彼らをアカデミア人材と呼ぶだろうか。

実際のところ、アカデミア人材とビジネス人材を明確に分けることは難しい。理系と文系、スペシャリストとジェネラリストも同じだ。私たちはどうしても二分法で思考しがちであるが、そもそも両方の要素を持っている方がいいに決まっている。「どちらか?」ではなく、「いかに両立するか?」が正しい問いだ。

つまり、必要なことは、アカデミア人材であろうが、ビジネス人材であろうが、それら2つを両立する「ビジネスアカデミア人材」となる能力を身につけることである。

研究の方法論=社会を変える力

アカデミアの本質は、研究の内容ではない。「研究の方法論」にあるのだ。研究の方法論とは、仮説を設定し、検証し、社会や経済の新たな前提を生み出す力である。実は、私がビジネススクールで教えている、もっとも重要なものが、この「研究の方法論」である。

あなたが社会を変えるアイデアを持っていたとしよう。ビジネスでこれを実現するには、何年もかかるかもしれない。いや、そのアイデアが新しすぎれば、伝わらなくて実現もしないかもしれない。そこで重要になるのが、「研究の方法論」だ。研究は「仮説を事実に変える」力を持っている。統計的に有意な調査結果が出れば、それはもう仮説ではない。仮説は「私はこう思う」とか「あの人はこう言っている」と伝わっていくが、研究成果になると「こういう結果が出てるらしいよ」と「事実」として人の口を伝わっていく。だからこそ、社会を変えるアイデアを「実行する前」に「仮説検証する」ことに大きな意味があるのだ。

ついでながら、ビジネススクールという概念に対しても、大きな誤解がある。MBAはもう古いとか、ロジックだけではイノベーションは起こせないという批判は絶えないが、ビジネススクールも進化している。KIT虎ノ門大学院では、MBAを取得するすべての社会人学生が修士論文を書く。つまり、社会を変えるアイデアを素早く仮説検証する力を身につけるのだ。

ビジネスアカデミア人材をイノベーターにするために

しかし、ビジネスとアカデミアを両立する人材を育てれば、即イノベーターになるわけではない。方法論は、あくまでも方法論に過ぎない。ビジネス人材にも、アカデミア人材にも足りない、もう1つのミッシングピースがある。それが、「パースペクティブ(観点)」だ。

パースペクティブを得るためには、客観的な調査だけでは足りない。自分自身が本当に燃えるようなパッションを持って、その問題を深く掘り下げる力が必要だ。こればかりは、学校で教えられるものでも、会社のOJTで教えられるものでもない。

シリコンバレーで活躍する小松原氏の「マイノリティーが変える」という記事が、大きなヒントをくれる。彼は、「マイノリティーの人々は、新しい道を切り開く人だ。長らくマジョリティーにいた人にとって、マイノリティーという弱い立場に身を置くことは勇気がいる。だが、そこではじめて従来の世界の『普通』を捨てることになり、全く新しい世界観を持つはずだ。」と言う。

そしてまた、社会起業家的な複業も、パースペクティブを得るために大いに役立つ。自分自身と違う価値観、違う場所、違う文化の中に身を置くことで、自分の中に新たなパースペクティブが生まれるのだ。コロナ禍を機会に、移住してみるのもいいだろう。

パースペクティブをもつビジネスアカデミア人材になろう。そして、社会を自分ごとで見よう。研究の方法論を使って、社会を変えよう。

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