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スペインへの影響は甚大

スペインのGDP成長率は過去5年間、ユーロ圏の平均を上回ってきた。スペインの努力が功を奏し、新型コロナウィルスの問題に対峙できる状況を作っていたと言える。内需志向から輸出重視へと成長モデルをシフトさせたり、2008-09年のユーロ圏の債務危機を受け、銀行の資本をいち早く強化するといった様々な構造改革を支えに、スペイン経済はより持続可能な幅広い成長モデルに移行することに成功していた。

それでもスペインはユーロ圏の中でもとりわけ大きな打撃を受けるとみられる。いくつか理由が指摘できる。

第一に、外出禁止措置の厳格化である。他国と比べ、短期的に急激な景気の悪化につながっている。第1四半期の前期比GDP成長率は▲5.2%とユーロ圏平均の▲3.8%を下回っており、第2四半期にはさらに大幅に落ち込む見通しである。その後は回復過程に入る、と言えるがロックダウン措置の解除が想定よりも緩やかなペースであった場合や、第2波の感染拡大を受けて延期された場合には、回復は予想より遅れ成長に持続的影響を及ぼす。

第二に、不利な労働市場環境である。スペインは他のユーロ圏主要国よりも失業率が構造的に高く、臨時従業員の割合が比較的大きい(欧州平均が15%程度に対し、スペインは26%)。企業は正社員を削減する前にまず、そうしたスタッフの契約を更新しない可能性が大きいのではないか。新型コロナ危機下で雇用を守らんとする政府の努力にもかかわらず、ユーロ圏の3月の最新データによると、失業はすでに他国よりも拡大している。スペインの失業率は14.5%と、ユーロ圏の平均の2倍近い。スペインの直近の社会保障データによると、小売りを含むサービス業が最大の打撃を受けており、4月の失業保険申請が過去の推移に照らして高水準に達する中、さらなる悪化も見込まれる。失業の増大に伴い、家計の債務返済能力を巡る懸念が高まる可能性も見ておかねばなるまい。

第三に、経済への直接的な影響が大きい分野が含まれることである。スペインは新型コロナ危機の打撃が特に大きい中小企業の割合がユーロ圏内でもとりわけ高い。加えて、観光業がGDPに占めるウェートが主要4カ国の平均11.5%を上回る14.6%に上るため、観光への影響もより大きく響く。中小企業や観光業など不良債権化し易い状況が続くことは見ておかねばならない。

第四に、財政コストの増大化である。これはどこの国にとっても同じ状況には違いないが、景気の悪化は今年、相当な財政コストを伴うとみられ、二桁の赤字を生み出す見込み。対GDP財政赤字比率が2019年の2.8%から15%前後に拡大し、これに伴い公的債務が対GDP比122%程度に増えるとみている。こうした予想は、年内の裁量的な刺激策の拡大を前提としている他、繰り延べ税収入の一定部分が恒久的に失われ、偶発債務の一部が実現することも見込んでいる。それでも資金的な制約や手続きの遅れから、政府が年内に追加的な財政拡大策を十分実行できない可能性もある。その場合、今年の赤字や債務の拡大は抑えられるが、財政負担は結局、その後の数年間に持ち越されることになる。もっとも、「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」を含め、ECBの支援やEU全体の財政政策支援が相まって、補助金が入る直接的な効果のみならず、同国に対する全般的な市場心理は改善するに違いないことはプラス材料である。

第五に脆弱な政治面をあげたい。新型コロナ危機は、社会労働党(PSOE)・ポデモスの少数派政権のもともと脆弱な支持率を下げ、野党の国民党やシウダダノスの支持に回っており、政府の対応への国民の不満が浮き彫りとなっているのが現状。PSOE・ポデモス政権の支持率は現在38%付近と、4月半ばのピークから3%ポイント程度後退している。政府が政権機能を維持し、法案を成立させるには、他の政党の棄権か賛成が必要なため、政府の安定性が引き続き試される局面だが、政権崩壊につながりかねないリスクが付いて回っている。

スペインは、欧州域にあってサポートを受ける面が大きくなるため、今回の措置を乗り切ると想定されるも、様々な問題を抱えている。うまくコントロールできるか、注目しておきたい。

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