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「いかにしてブシロードは誕生し、成長したか」木谷高明氏ロングインタビュー第1回

『BanG Dream!(バンドリ!)』、『ヴァンガード』など、大ヒットコンテンツを次々に創りだし、さらにあっと驚くビジネスで世を動かすブシロード創業者の木谷高明氏とのインタビューを3回連続でお届けします。
最初にこのインタビューについて、少し説明します。記事のもとになったのは昨年12月に日経COMEMOで公開インタビューとして1時間半にわたり伺ったものです。

なぜイベントだったかと言いますと、僕はインタビューをよくするのですが、「インタビュアーの話は要らない、相手の話をもっと聞かせろ!」と言われることがあるんです。確かにインタビュー記事って1時間の話を聞いたとして、記事では1/3残ればいいほうです。「じゃあ、インタビュー取材の全部を目の前で見てもらったらどうだろう?」がこの企画の始まりです。

今回はその記事版です。分量はやはり文字を起こした全体の1/3ぐらいになりました。それでも1万字大幅越えのロングインタビューです。
文字量は少なくなりましたが、重複箇所を整理し、テーマごとに分けています。短時間でぎゅっと木谷高明氏の考え方、魅力が伝わるはずです。ライブに来られたかたには、実際のトークと記事を比較していただくのも楽しいかもしれません。

■今はビジネス人生の3クール目に突入したところ


数土直志(以下、数土) 
本日は僕が常にウォッチする木谷高明さんに話を聞けるのでとても楽しみにしていました。ところで肩書は、何とお呼びすればいいですか? 現在は社長は辞められていますが、ブシロードの創業者と?

木谷高明氏(以下、木谷) いろんな言い方をされますが、「わかんなかったら木谷さんと呼んでください」と言っています。

数土 分かりいいですね。ご自身がブランドになっていますから。でも、なぜ社長を辞められたのですか?

木谷 「前線から最前線に行く」ためです。作品づくりの現場に行きます。いまはコンテンツ本部長と広報宣伝部長、ブシロードミュージックの社長の3つをやっています。

数土 IP(知的財産)の創出と広報、マーケティングを自身でマネジメントするですか?

木谷 前からそうでしたが、より強化され、狭く深くなりました。

数土 まず経営者としてのお話を伺わせてください。1994年にゲームとキャラクターの会社ブロッコリーを設立しました。ブロッコリーを2001年に株式上場させた後、2007年に退社しています。退社後すぐに新たにブシロードを立ち上げられ、そこから10年で2回目の上場です。株式上場(IPO)はハードルが高く、コンテンツ・エンタテイメント業界で2社は珍しいです。2回目となると相当な実力者です。

木谷 運の要素が大きいですよ。IPOをやる人はバイタリティーに溢れて、先見性もありますが、結局は運が良かったんですよ。同じように考えている人いっぱいいるから。でも2回目は1回目をやることで経験値積むので若干実力に置き換わります。どうやればいいかわかっているから2回目が遥かに楽ですね。

数土 エンタテイメントメ業界に入られた理由は? キャリアのスタートは証券会社で、山一証券におられました。

木谷 10年いました。でも自分で会社を作りたかったので、最初から独立ありきです。ただ80年代って中小企業はあっても、ベンチャービジネスはない時代なんです。94年くらいに風向きが変わって、本格的に増えたのは97年で、IT企業がいっぱい出てきました。エンタメで起業したのは、縁があったからです。

数土 昔からアニメやキャラクター、アイドルが好きだったとかは?

木谷 コミックとゲームは好きでしたが、アイドルは特になかった。カードゲームも、そうしたものもあるんだなと思っていたぐらいです。そこでたまたま出会いました。

数土 ブシロードは、なぜ上場したのですか? 2000年代のはじめにコンテンツ企業の上場ブームがあったのですが、00年代後半以降は一挙に減りました。エンタメはあまり上場に向いてないとも言われます。 

木谷 2015年に「大きくなるしかない。大きくならないと」と考えたんです。独占企業や狭いジャンルの企業ではない限り、企業の利益や売上げが横ばいで続くことはなかなかないんです。上がるか、下がるかのどちらかです。生き残るには大きくなるしかないし、勝ち残れないと思ったんです。
あとはゲーム会社と思われたらPER(*)が下がるので、どうやってゲームのイメージを遠ざけるかすごく考えました。ブシロードはIPデベロッパーなんです。“デベロッパー”の意味も開発会社でなく、例えば不動産会社が何もないところに線路を作って、宅地を造って、劇場や球場を作って、街全体に付加価値をつけるのに近いです。
*株価収益率のこと。株式評価する基準に利用する。

数土 上場後も成長を続けていますが、なぜ成功されているのですか?

木谷 運が良かったからですね。大事なのは、構想力とコンセプト。これは独立するだけでなくて、新しいプロジェクトや作品、サービスを立ち上げる時もそうです。それを心掛けてきたからかな。今だったらストーリーを凄く気にします。

数土 それはビジネスのストーリーですか?

木谷 ビジネスですね。作品のストーリーが面白いのは当たり前じゃないですか。作品の外側にあるプロモーションや営業も含めてのストーリーです。今ならブシロードという会社がどうなったら面白いのかを考えます。だから、これからも面白いこといっぱい起こりますよ。

数土 そうしたアイデアはいつ思いつくのですか?

木谷 ある日突然肩に降りてくる。誰かの一言だとか、歩いている時とか。机で考えていては思いつかないですよ。人を感動させるキャラクターとストーリーは常に考えていないといかない。

数土 その時の感動はどういったものですか?

木谷 キャラクターとそのキャラクターが演じるストーリーです。それはビジネスや人生でも同じです。人はそれぞれが人生を演じているんです。僕自身もそうやって演じている。
前の会社を辞める時に解任式というのをしたんですよ。その時に「1994年3月末に最初の会社辞めて、会社にちょうど13年いました。1クール目が終わったので2クール目が始まります」と言いました。その2クール目の13話目(13年目)が2020年なんです。どうですか、3クール目やりますか? 3クール目が途中で打ち切りになったらイヤですよね。

数土 3クール続くと、それは相当なビッグなタイトルですよね。

木谷 まさにそうです。3クール目の最後まで行ったら73歳です。「お前はそこまでやる気なのかよ」という話になります。

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■キネマシトラスとサンジゲンと資本業務提携

数土 
会社の成長スピードが早いです。2015年から5年で売上高がほぼ倍になりました。

木谷 17年からはグループ各社が連結決算になった影響もあります。実は13年、14年、16年は小さな伸びです。大きいのは17年から18年。19年もかなり伸びています。

数土 2007年5月に中野で設立して、『ヴァンガード』が11年にリリースされていまでも大型タイトルです。新日本プロレスの買収が12年、13年に『ラブライブ!』のアプリゲーム、『BanG Dream!』のスタートが15年。19年にはアニメ会社のキネマシトラスとサンジゲンと資本業務提携をしています。この事業提携の目的は、アニメ制作のラインを優先的に確保するためでしょうか? 

木谷 厳密ではないですけれど、そうですね。各社の制作状況がわかりますので、制作をお願いしやすくなります。今はいいアニメスタジオで制作ラインを確保しようと思ったら、3年前からお願いしないとダメなんです。仮に新規参入でアニメ作ろうとしても、いいスタジオのいい現場を確保することはいま不可能です。ヒットしたので2期シリーズ制作と思っても、そこから3年後だったり。これでは人気は続かないですよね。それを計画よく立てられるためにです。

数土 カードゲーム、音楽、商品開発、プロレス、それに声優マネジメントと音響会社もやられている。海外拠点もあります。設立10年少しで巨大企業グループですね。

木谷 巨大企業グループって、まだ個人の零細商店みたいな感じですよ。

■成長の極意・起爆剤となった『BanG Dream!』


数土 大きな転換点は、あったのでしょうか?

木谷 やはり『BanG Dream!』ですね。ブシロードミュージックの売上もすごく増えました。前期(2019年7月期)で売上高35億円です。

数土 ブシロードミュージックの主な事業は何なのですか?

木谷 音楽制作です。大きいのはCDとライブです。ライブでの物販はブシロード本体なのでここに入りません。後は権利収入ですね。音楽に力を入れる理由は、出版権と原盤権を持てるからです。いまブシロードミュージックは権利収入の売上高が増えています。

数土 音楽はロングランで稼げるのですか?

木谷 稼ぎますね。ライブラリーが大事です。音楽ビジネスをどう当てるかはすごく難しいんです。ただヒットを次々に当てれば、それがライブラリーになります。CD中心の時代はCDそのものの売上げが大きいですから出版権はそんなに大事じゃなかったんです。でも今みたいなサブスクリプション(定額課金)中心の配信では出版権を持っていることが大事です。

数土 『BanG Dream!』は、“アイドルアニメ”“アイドルゲーム”と言っていいのでしょうか?

木谷 アイドルではなくて、“ガールズバンド”ですね。アイドルとはいいたくないので、言わないようにしています。

数土 『ラブライブ!』もですね。18年から始まった『レヴュースタァライト』もこの括りですか?

木谷 『スタァライト』は舞台原作です。最初に舞台をやって、それをアニメ、ゲームにしています。昨年7月には舞浜で5日間7公演をしました。動員が1万4千人。このうち2公演は女性限定でした。最初から女性も狙っていた作品ですが、いまは女性比率が4、5割あります。女の子が可愛い女の子を好きという需要があるんです。

数土 こうした作品では声優さんの力が大きいですね。

木谷 いまは若い人ほどデジタルを使います。でも人が発するパワー、オーラにはデジタルは絶対勝てないですよ。当社の作品は、人のドラマをどう見せるか。作品の中もだし、外側も含めてです。だから人気声優よりは、若手をキャスティングしています。安定感のあるかたも必要ですが、真ん中は「今回もし当らなかったら……」というギリギリ感がいいんですよ。お客様は共感したい、応援したいという熱を求めているんです。
実は会社も同じで、今まで当社で大ヒットした作品は、これが当たらなかったら会社がヤバいという作品です。最初は創業時の『ヴァイスシュヴァルツ』というカードゲームですよね。次が『ヴァンガード』。3番目の『BanG Dream!』は、うちの音楽詳しいスタッフは成功すると思っていなかったですよ。リアルなガールズバンドが5千人を集められないからです。でも『BanG Dream!』では、ふたつのリアルバンドで2日間の合同ライブをやって3万4千人集めました。1日1万7千人、ライビュビューイングも含めたら6万人です。『BanG Dream!』がなぜ当たったかは、遊びやすくユーザーフレンドリーとゲームが優れていた。もう一つは声優さんがリアルバンドを組んだことですよ。それは誰も不可能だと思っていたんです。

数土 キャスティングする時から、歌える声優さんが前提だったんですか?

木谷 むしろ逆です。プロジェクト思いついた時に僕が最初にやったのは楽器を弾ける声優さんを探すことです。最初に「Poppin’Party」というユニットの本人たちが決まって、それからキャラクターデザインを始めました。だからなんとなくキャラクターが本人に似ているんですよ。「Roselia」はいいキャラクターがあったのですが、「これは楽器が弾けて雰囲気似ている子を探すのは大変だ」と思いました。これが奇跡的に集まりました。

第2回に続く


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