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東京から人口流出っていうけど、若者はいまでも東京に流入している

コロナが始まってから、「東京からの転出が増えた」系のニュースが多い。

総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、20年11月に東京都から転出した人は約2.8万人で、前年同月比で19%増えた。転出した人から転入した人を差し引いた転出超過数も約4000人。コロナ下で転勤や通学で東京に引っ越せない人がいる一方、転居する人が一定数いることが主因だが、同年10月から増えた。

12月にもこのネタをニュース化している。

断片的なこういうニュースだけを聞いていると、東京一極集中がコロナによって是正されているかの印象を受ける人も多いと思います。が、データは正確に把握していただきたい。

東京の人口の転入超過がマイナス(転出超過という意味)であるのは事実だが、すべての年代が転出しているわけではありません。

年代別にみれば、20代はコロナ後も転入超過は続いている。転出しているのは子育て世代の30代が多く、これは一時期的な疎開に近い行動ではないかと推測される。それ以外はあとは高齢者だけだ。そして、高齢者の東京転出が多いのは今に始まったことではない。

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つまり、コロナで東京から出て行ってるといっても、年代やライフステージによる事情面が大きいのであり、これをもって東京一極集中が是正することなどありえない。そもそも人口移動は若年層の移動がほとんど。逆に言えば、コロナ収束後は、今まで東京への転入を我慢していた地方の若い層を中心とした東京大移動が始まるだろう。

若者が東京や大阪・愛知・福岡に集中するのは「働き場があるから」である。そして、昔から仕事のあるエリアに人口は集中するようになっている。

誤解があるのだが、明治維新後もずっと東京が全国一の人口だったわけではない。

廃藩置県が行われたの1872年。当時の人口は3300万人でしたが、都道府県別人口の1位は東京ではなく広島県(91万9047人)でした。2位も東京ではなくは山口県(82万7536人)。東京は77万9361人で3位に過ぎなかった。広島が一位の理由は、当時綿や食品などの一大生産拠点だったからです。つまり、仕事があったからなんですね。

その後も新潟や石川など日本海側の県が同様に工場や産業・貿易によって栄え(仕事があるので人も流入)、びっくりするのか、今や人口最下位争いの島根県が、1880年には、東京よりも人口が多い100万県(神の数ではない)でした。

まあ、それはカラクリがあって、当時島根が鳥取を併合して「大島根県」となったからです。その後、再度分割して今に至るわけです。

東京が人口一位になるのは、随分と後の1897年のことです。

戦後においても、いつもいつも東京だけに人口が集中していたわけではない。高度経済成長期には、東京の空洞化現象もあった(ドーナツ化現象)。

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むしろ、東京含む一都三県はひとつの「首都県」ととらえるべきで、埼玉に住もうが神奈川に住もうが、それほど大きな違いはないし、長い目でみれば都市部に人口集中するのは当たり前。そういう意味でも、僕はいつも地方創生なんて絶対無理だと言っているのです。

「コロナによって社会が大きく変わる」と言いたがる人が本当に多いのですが、たかが疫病ごときで何かが変わることはありません。今は「人と同じ不安を抱えていないと不安になる」というわけのわからない「不安全体主義」がはびこっていて、非常に危険だと思いますが、少なくともコロナはやがて収束するし、その後は「なんであんなに大騒ぎしたんだ?」と思うくらい、もとに戻るはずです。

毎日の細かいニュースに一喜一憂するのも人間だもの仕方がないことかもしれませんが、それはリスク管理ができているわけじゃない。それどころか、「不安になる情報ばかりを収集して安心している」という脳内麻薬による一種の病的状態であるという客観視点を持つべきです。

まあ、ツイッターなどの中には「自分が不快になって怒りを感じる情報ばかり集めて、毎日のように誰かを叩いて安心する」輩もいるので、仕方ないのかもれませんがね。

長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。