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アフリカで起こす「逆タイムマシン」ビジネス開発

米国のスタートアップがアフリカで実績を積んできたドローンによる医薬品の配送が、やはりアフリカに関わってきた豊田通商によって日本の離島にも導入される。

言うまでもなく、アフリカ諸国は、まだまだインフラや社会システムなどが未整備のままに残されている部分が非常に多い。だからこそ、すでに様々な仕組みが出来上がり、システムが整っている先進国ではできないチャレンジが可能になる余地を残す場所でもある。

日本でも、ドローンに限らず様々な新しい取り組みをしようとすると既存の業界の抵抗にあったり規制の制約を受けて実現しなかったり、実現するとしても多大な時間を要することが多い。その理由のひとつに、仮に規制が緩められたとしても、前例がないとそれが成功するという確証が得られないことも、新たな取り組みが導入されにくい原因の一つだろう。

こうした課題に対応するため、まずアフリカで実績を積み実証して、成功する確証を得た上で先進国に還流していくという手法は、前例・実績によって成功の蓋然性を示すことができる意味で、日本を始めとする先進国でスタートアップによる新しい取り組みが受け入れられるための大きなファースト・ステップになる可能性がある。

最初の実証地となるアフリカにしても、単に実験台になるということではなく、例えばこの記事にあるような医薬品を輸送するドローンのテストであれば、それが成功すればアフリカの人たちにとっても大きなベネフィットがあるし、リスクを最小限に抑える工夫をするなら仮に失敗してもそのマイナスは限定的なものに出来る。上手く行くなら社会課題が解決するプラスがあるので、アフリカ諸国と日本などの先進国の双方にとってベネフィットが得られるものとなるだろう。

これは、かつてソフトバンクの孫さんが海外の先進的なやり方を日本に持ってくることを「タイムマシン経営」と称したが、それになぞらえて言うのであれば「逆タイムマシン」のビジネス開発と言うこともできるのではないだろうか。

今年は日本政府が主導するアフリカ開発会議(TICAD)の開催年であり、8月にチュニジアで行われることになっている。

こうした日本政府によるアフリカ支援の取り組みもうまく活用して、アフリカと日本双方にプラスがある経済発展の糸口を、スタートアップによるチャレンジやスタートアップと大企業によるオープンイノベーションの取り組みとして一層進めていけると理想的だ。特に「逆タイムマシン」的な発想でアフリカというチャレンジの場を、現地の人たちと一緒になって活用することを考えることはアフリカの経済発展のためにも非常に有意義なのではないだろうか。

上に示した記事で言われているようにアフリカの開発には支援が必要であるが、人口が減りそれに伴って税収も減るであろう一方で、高齢者に対する社会保障を減らすことができない日本が、今後どれだけのODAを提供し続けられるのか、さほど簡単なことではないだろう。

ODAに加えて、スタートアップが調達した民間の資金をそのスタートアップのビジネス開発と成長のために使う場がアフリカであるなら、アフリカにとっても外からの投資が行われることになるし、そこで得られた成果が先進国に逆流してビジネスに結びつくのであれば、経済循環としても非常に望ましいものだろう。

私自身もアフリカのビジネスに関わり始めているが、こうした先進国とアフリカの双方にとってプラスになる民間レベルでのビジネス交流、ひいては資金循環が生まれることを意識しているし、またそれが最後の記事にある、一時の勢いは失われたとはいえ中国の債務漬けにするやり方に対する有効なオルタナティブ・カウンターの一部にもなりうるのではないだろうか。


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