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「お前もこうなれる」ジダン選手に憧れた難民の少年

今日、6月20日、世界難民の日だ。この日にぜひ、観てほしいショートフィルムがある。私がこれまで観た中で、最も心に刻まれた映画の一つ、「Bawka」(パパ)。15分ほどの短い映像ではあるものの、初めて観たときの衝撃は忘れない。

この映画は2015年に日本で開かれた、ショートショート・フィルムフェスティバル&アジアでも上映されている。

描かれているのはクルド人と思われる親子二人が、安全を求めてヨーロッパへと逃れていく道のりだ。「パパ」の最後の決断は、何度繰り返し見ても観ても、心の底から引き裂かれる思いになる。

衝撃だったのは、この映画が作られたのは2005年ということだった。10年以上の月日が経ち、世界はそれから、変わっただろうか。

映画の中ではフランスのサッカー選手、ジダンの写真が象徴的な存在として登場する。ジダン選手はアルジェリアの少数民族出身の両親を持つため、「北アフリカ移民の星」とも称されていた。

「お前もきっと、こうなれる」。異国出身であっても、いつかはその国で活躍するまでになれるかもしれない、という父の願いはその後、届いたのだろうか。

私が出会った、シリアからの難民の方々の中にも、同じような決断を迫られた家族がいた。

けがをしている娘だけが治療のため、隣国の国境を越えることを許され、家族にはその許可がおりなかった。それでも娘だけは安全な場所で治療を、と両親は苦渋の決断をした。まだ小学生ほどの年齢の娘さんはその後、たった一人で過酷な治療に耐えていた。

世界の中での難民となる人々の人数は増え続け、今年ついに、7000万人を超えてしまった。

今、自分自身のかけがえのない人の顔を想像してほしい。そしてその人を大切な人を想う気持ちを思い切り、抱きしめてほしい。抱きしめるほどに、誰かがその存在を失う痛みにも、思いを馳せることができるはずだから。

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フォトジャーナリスト。国内外で貧困、難民問題の取材を続ける。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。J-WAVE「JAM THE WORLD」水曜日ニューススーパーバイザー。TBS「サンデーモーニング」コメンテーター。 https://d4p.world/
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