改革を妨げる論理

 閉鎖的・強制的な性格の強いPTAや町内会の改革を唱えると、必ずといってよいほど反対の声に押し切られる。「親睦のために役立っている」「防犯や防災に必要だ」等々。詰め込み式の大学入試にしても、それによって若者の克己心や学習態度が養われる、といった擁護論がいまだに根強い。

 企業でも分厚い管理職層の非効率性が叫ばれ、組織のスリム化、フラット化が唱えられて久しいが、改革はなかなか進んでいない。優秀なミドルこそが日本企業の強みであり、日本企業を支えているという学者も少なくない。

 日本式の大部屋で仕切りのないオフィスにしても同じだ。いくら仕事に集中できる空間が必要だと説いても、コミュニケーションの取りやすさなどのメリットをあげる声が改革の勢いをそぐ。

 ただ冷静に考えたらわかるように、役立っている、メリットがあることは存続させる理由にならない。存続と改革それぞれの功と罪、それに改革のコストを天秤にかけて判断することが必要なのだ。

 分厚い管理職層についていえば、たしかに日本企業のミドルには勤勉で優秀な人が多いし、彼らが企業を実質的に支えてきたことは事実だろう。しかし人数が多く、そこに重要な仕事や実質的な権限が集中していたら、そうなるのは当たり前である。かりに組織の階層と管理職の数を減らして部下に権限と重要な仕事を移すとともに、彼らにはもっと生産性の高い仕事に就いてもらえば、会社や部下にとって、さらにミドル自身にとっても利益が大きかったかもしれない(おそらくそうだ)。

 「役立っている」ことは存続理由にならない。にもかかわらずその論理を打破できなかったのは、抵抗する側の隠れた本音をくみ取る姿勢と、改革の展望、青写真を明確に示す努力が不足していたからだろう。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

「個人」の視点から組織、社会などについて感じたことを記しています。

感謝しています。
4
同志社大学教授。専門は組織論。個人を重視する組織・社会づくりが研究テーマ。 新刊『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書、2019/2)のほか、『「ネコ型」人間の時代』(平凡社新書)、『なぜ日本企業は勝てなくなったのか』(新潮選書)、『個人尊重の組織論』(中公新書)など著書は30冊余。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。