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日本の自動車メーカーって結構いいと思う。

5年くらい前からだろうか。CASEという大変革の波が車業界に押し寄せてきた。変革を牽引してきた代表的な企業は、テスラというEV専門メーカーだろう。GM、VW、トヨタといった従来の自動車メーカーがつくる車とは、明らかに発想の異なるモデルを次々に投入してきた。購入した後に、ソフトウェアの自動アップデートで、機能が更新したり、追加したりできる車だ。運転支援など走行性能に関わる機能の進化にとどまらず、車内の見守り機能や誕生日のお祝い機能なども楽しめる。車のスマホ化といってよい動きだ。

つい最近では、CESというイベントでのソニーの発表が印象に残った。これまでにも噂のあった「自動車メーカーになる」という動きがいよいよ本格化する。そう感じさせるだけの内容の濃いものだった。コンセプトは、テスラの「車のスマホ化」と類似している部分もあるが、「車のエンタメ化」を重視したものだ。既存の自動車メーカーとは違ってゼロから作れることが強みなのだろう。もちろん、こうした動きに加えて、世界中の既存メーカーも熾烈な開発競争をしているので、2030年を過ぎる頃には、自動運転のできるスマホEV、エンタメ空間としての車が次々に登場するのは間違いないと思う。

ふと、最近の新型車事情を久しぶりに調べてみた。数年前までは、毎月車雑誌を4-5冊買って常に動向を押さえていたが、コロナ禍に入ってからは、何故か追っかけることをしていなかった。今回調べてまず気づいたのは、新型車がとても少ないということだ。半導体の不足により車が作れないことや、バックオーダーが多いことなどの事情も影響しているとは思うが、急速な戦略転換に工数が必要で、なかなか足元の新型車開発にまで手が回らないというのが実情かもしれない。

そんな中でもトヨタは新型車をコンスタントに投入しているような気がする。つい最近では、売れ筋のミニバン「ノア」と「ヴォクシー」の販売を開始した。売りは、渋滞時の自動運転と自動駐車システムだ。完全自動運転とはまだ距離のある技術ではあるが、それが逆に好感を持てた。確実にニーズのある機能を、ある程度広い層が購入できるような価格で販売することに意義がある。家族ドライブでの笑顔を増やしたり、駐車場でのこすり事故などを防いだり、今すぐできることでしっかりと価値を出していると思う。

既に完全自動運転を搭載していると謳っているメーカーもある程度存在する中で、自動運転を「この部分でなら安心して使える」とユーザーに分かりやすく伝えることは、自動車メーカーとして、とても重要なことなのではと感じている。トヨタと同様にマツダの考え方も素晴らしいと感じだ。モデル名は分からなかったが、今年投入する新型車では、「人の運転を前提としながら事故削減を目指す」という自動運転への向き合い方を示している。

搭載される技術は、運転者に異常が生じたときに車両を安全な場所に自動で退避させる技術だ。まずは今年投入されるモデルでは、運転者が倒れるといった異常を検知して、車両を安全な場所まで退避させる機能を実現する。2025年以降には、運転者の脳機能が低下する異常を予測する独自のアルゴリズムを採用して、「異常の予兆」を掴むことでより安全な退避を実現する計画だ。

完全自動運転ほど高度な技術ではないとは思うが、車のオーナーの切実なニーズを捉えた新型車も投入された。レクサスの新型LXだが、この車はランドクルーザーと並んでとても盗難が多い車だ。愛知県では登録されているLXの5台に1台が盗難にあったという。そこで、これまでのイモビライザーによる盗難防止機能に加えて、指紋認証を採用したのだ。同時に軽量化などを進めて燃費を上げて、CO2排出量の20%削減を実現し、環境性能まで高めた優れものだ。

最後に目についたのは、ダイハツのハイゼットカーゴだ。17年ぶりの全面改良でこれまで以上に顧客へ寄り添う商品に生まれ変わった。記事のタイトルには「ミカン箱3つ」とあるが、「これまでよりも3つ多く積めることにより、配送効率が高まる」という現場に出向いて注意深く観察しなければ分からない課題を解決したのだ。メーカーの印であるエンブレムもシールに変え、開閉することが少ない窓は開かなくするなど、車の形も荷室の形も四角形にするためにできることをとことんまでやり切るという徹底ぶりだ。そうすることで生じた空力悪化による燃費への影響は、変速機やその他の技術の積み重ねで相殺したという。燃費は変わらないが、配送効率が高まることで、利用中を含めたCO2の排出量を確実に減らすことができるのだと思う。

今回、改めて日本メーカーの新型車を色々見てきたが、どの車もそれを利用するユーザーにとってとても魅力的な車に仕上がっていると思う。技術の先進性を謳い、興味を引くことも需要喚起には必要だ。でも、その前に、しっかりと顧客を見据えて、日常のそれぞれの利用シーンの中で価値を体感してもらうための努力をする。こんな考え方や姿勢がベースに必要なのではないかと思った。日本メーカーの更なる活躍を楽しみにしている。

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