見出し画像

円安を追い風にしたスモール輸出ビジネスの立ち上げ方

 2022年に入ってからの為替相場は、「1ドル=115円」が「1ドル=145円」までで急速に円安が進んだ。円の価値は半年で3割近く下落したことになり、原材料を輸入に依存している商品の値上げは、消費者の生活を苦しめている。その一方で、輸出企業の業績は絶好調となり過去最高の利益を出している。

自動車業界は、原材料や人件費の高騰が足かせになっているものの、円安による為替差益が生じたことが神風となっている。トヨタ自動車(7203)が2022年8月に発表した決算は、当初の為替レートを「1ドル=115円」に想定していたが、これが「1ドル=130円」に上振れしたことで、円換算の年間売上は33兆円の予想値から、9.9%増の34兆5000億円に上方修正された。トヨタは、売上全体の中で海外売上が6割を占めており、1円の円安が営業利益を400億円押し上げると言われている。

中小企業や個人事業者にとっても、円安の時代には海外に販路を広げて外貨を稼ぐことがビジネスチャンスになる。幸いにして、日本製品の性能や品質は世界から高く評価されており、円安効果で割安に買えるのであれば購入したいという潜在ニーズは高い。2000年以降は、国内製造業の多くが海外に工場を移転したため、品質が低下したという指摘もあるが、今でも「Made in Japan」を貫いている日本製品に対する海外の人気は高く、中小メーカーがネットで海外販路を築くことはできる。

一方で、個人の副業と小規模な輸出ビジネスを手掛けることの難易度は下がっている。それは、AmazonやeBayなどのマーケットプレイス機能が充実したことが要因で、在宅ビジネスとして、様々な日本製品を海外に販売することが可能になっている。

しかし、言葉の壁、税制、国際輸送の問題などに不安を抱き、チャレンジする人は少ないのが実情で、そのノウハウを習得した一部の個人が魅力的なスモール輸出事業を行っている。

日本国内向けには、ヤフオクメルカリを活用した転売ビジネスが流行っているが、スモール輸出は取引相手が海外ユーザーになるだけで、基本的な取引の仕組みは同じだ。言葉の問題にしても、リアルタイムで会話をする必要はないため、Google翻訳でテキストを「日本語→英語」に変換して貼り付けるだけでも事足りることが多い。

国際的なECマーケットプレイスとして、eBayだけでも年間で870億ドル(約10兆円)の総売上高があり、世界で1億8500人のアクティブなバイヤー(買い手)と1900万人のセラー(売り手)によって取引が行われている。バイヤーの多くは、趣味の道具やコレクションなどで希少な商品を狙っているが、その中でも日本製品の人気は高い。しかし、国別のセラー分布では、日本人は10位にも入っていないため、日本からの出品には多くのチャンスが潜んでいる。

【日本からのeBay売れ筋トレンド】

製品の人気が高く、日本人セラーは誠実であることから評価も高い。今は円安効果が狙えるため、eBay輸出は個人の副業者から中小事業者までがローコストで行える有望ビジネスとして注目度が高まっている。

eBayジャパンでは定期的に日本人セラーが販売した商品のカテゴリーランキングを発表している。それによると、2022年は円安の効果もあって高額商品を扱うセラーが多く、エルメス、シャネルなどの高級ブランドバッグ、ロレックスを中心とした高級腕時計は定番の売れ筋商品になっている。これらの海外ブランド品は、日本人セラーが国内の質屋、リサイクルショップ、ヤフオクなどで中古の掘り出し物を購入した後、eBayに出品しており、いわゆる「逆輸出」の形になる。

腕時計は、日本製 CASIO G-SHOCK、SEIKOなど中価格帯の新品も人気がある他、古いクォーツ時計の中にもコレクションアイテムがある。カシオが1980年代に発売した Casio game watchシリーズは程度が良ければ300~400ドル(4~5.6万円)で取引されている。

Casio game watch出品例(eBay)

日本のアニメやゲームキャラクターの人気も高く、ポケモンカードや遊戯王カードの中でも、日本国内のみで流通した限定アイテムは高値で取引されている。また、海外ではアナログ写真の人気も再燃していることから、日本製フィルムカメラやレンズの愛好者も多い。

《eBay日本セラーの取引額TOP10》

eBay2022年第1四半期の越境ECトレンド

eBayで取引される商品は、各カテゴリーにニッチなコレクターや愛好者が存在しており、彼らの日本製品に対するニーズを把握できれば、国内と海外で内外価格差のある商品や、日本限定で発売された商品などを発掘して、有意義なスモール輸出を行うことができる。ただし、商品の専門知識は、その分野に興味関心がなければ身に付かないため、自分自身が奥深い趣味を持っていることが、スモール輸出で成功するアドバンテージになっている。

■JNEWS関連レポート
インフレ対策として米国住宅相場が高騰するカラクリ
代替投資対象として注目されるLEGOコレクション
インフレ対策としてのマイホーム投資と中古住宅再生
世界で急騰するジャパニーズ・ウイスキー投資の楽しみ方

JNEWSはネット草創期の1996年から、海外・国内のビジネス事例を専門に取材、会員向けレポート(JNEWS LETTER)として配信しています。JNEWS会員読者には、新規事業立ち上げなどの相談サポートも行い、起業の支援を行っています。詳細は公式サイトをご覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?