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インフレ圧力継続でも「管理下の正常化」を貫く?

ドイツの前年比インフレ率が5月の8.7%から、6月は8.2%に低下した。公共交通機関の割引料金や燃料税の軽減により、コアHICPは4%から3.4%に、エネルギーのHICPは37.5%から34.5%にそれぞれ低下したと思われる。とはいえ食品価格上昇率は8.8%から9.8%に加速している。つまりは、下振れ要素と上振れ要素が互いに相殺しあった結果、下振れ要素が残ったことになる。燃料価格の上昇から消費者を守るための政策措置が優勢だったわけだ。


一方、スペインでは8.5%から10%に上昇するなど、ユーロ圏のインフレ圧力拡大の状況を示している。むしろ、食品・燃料価格の上昇をはじめとする基調的な要因による極めて広範囲なスペインのインフレの上振れのほうがユーロ圏全体の動きとして受け止めるべきではないか。そう考えれば、ユーロ圏のインフレ率が今後数カ月、上昇し続け、今年9月頃にピークに達するという従来の見方を変える必要はなさそうだ。6月のインフレデータと、最近のガス小売価格の上昇を考え合わせると、リスクは当面上振れ方向に傾いていると見るべきだから、である。

そうしたインフレ見通しの中、ラガルド総裁は政策の枠組みについて「管理下の正常化」と表現し慎重に取り組む姿勢を示している。彼女の最近の講演の中では、7月と9月の利上げや分断化防止手段に関する決定を規定路線とする一方、その文脈の中で、漸進主義と選択制の原則を繰り返している。ユーロ圏は不均一な伝達のリスクを持つがゆえ、政策には柔軟性が欠かせない。利上げは7月に25bp、9月にはデータ次第で利上げ幅を拡大、という斬新主義を適用しながら行っていくと考えるのが、今のところ妥当に見える。


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