見出し画像

お疲れさまです。uni'que若宮です。

今日はちょっと今ある運動を巡って起こっている対立について書きたいと思います。

最初に申し上げておきますが、この記事を書くにあたり僕はどちらかを擁護をする意図はありません。かといって、中立ぶって評論したいのでもありません。
燃えている時に下手に口をはさむと「外野は黙ってろ!」と言われますし「男性がしたり顔でネタにしてアピールするな!」ときっと言われるので鎮火するまでは距離を取ることにしているのですが、受験を控えた娘をもつ父親として僕自身も「内野」だと思っていますし、とても残念でならないのでやっぱり書くことにしました。また、最後に周りのみなさんへのお願いもありますのでぜひ読んいただけたらうれしいです。


#共通テスト痴漢撲滅 を巡る対立

先に述べたように、特定の人の擁護や攻撃は意図ではないので、個人名は出しませんが、流れだけざっと書きます。

こちらの記事にもあるように、

現在、共通テストの際の痴漢を撲滅する取り組みが広がっています。

警視庁生活安全総務課によると、昨年、インターネットに「共通テストに向かう受験生は被害届を出さないから、痴漢し放題」といった悪質な書き込みが相次いで確認された。警視庁は15日まで電車や駅での警戒や啓発活動を強化する。

引用するだけでも卑劣すぎてむかっ腹が立ちますが…こういう人がいるから安心して「表現の自由」だとか言えないんですよ?


こうした問題に2019年に気づいたのがSさん。10月にセンター試験での痴漢を撲滅すべく、自ら有休をとって電車でパトロールするという活動を開始します。Sさんは何年も地道にこうした活動をつづけ、それに賛同し行動を起こす方たちも増えてきます。草の根の活動として少しずつ広がってきたわけです。

そして2022年、インフルエンサーのAさんが政治家や市民の方と「#痴漢祭り」や「#共通テスト痴漢撲滅」というハッシュタグをつけて活動し、この問題がさらに大きく注目を浴びます。先程の東京都の事例のように全国各地に取り組みの広がりも生まれました。

どちらも素晴らしい活動なのですが、この2022年のインフルエンサーAさんの発信による拡大が、Sさんが3年前から始めてきたことの「パクリ」「手柄の横取り」「簒奪」というように批判され、またその批判が増えるの中でAさんがSさんをブロックしたり「誹謗中傷」「事実無根のデマ」として法的対応について言及したのをきっかけにさらに対立が深まり、個人攻撃が起こっています。


アイディアより「実行こそ主役」

自分自身もこれに似た経験をしたことがあります。といっても、新規事業の領域なのでソーシャルアクトとはちがうのですが、たとえば小さなベンチャーが始めたサービスと似たようなサービスを後から大企業が始めたりした場合です。

僕自身が「む、パクられた?」と思ったこともありますし、逆に「パクリだろ」という批判を受けたこともあります。(どちらもそうした事実はなかったのですが)そうした経験を経て今どう思っているかというと、少なくとも事業において「アイディアにはあまり価値はない」というように考えています。

とはいっても勿論、↓のように明らかに丸々乗っ取りしている悪質なケースもあるのでこうしたことは論外として、


アイディアが「被る」ということはけっこうあることだと思うのです。


ただそうはいっても、自分と同じことを「仁義切り無し」にされているというだけでもいい気持ちがしないのは人間の性だとおもいます。たとえば自分と同じ全く同じ服装をされたらうれしいより嫌な気持ちになるでしょうし、意図的な「パクリ」でなかったにせよ、敵対的意識も芽生てしまう気がします。


ビジネスにおいては、市場やシェアが奪われたり実利的なマイナスもあるので、「競合」として「敵対」してしまうことが多いでしょう。ただよくよく考えると、起業家などで「被る」場合には、むしろ同じような問題意識をもって考えアクションをしているわけで、社会の中ではかなり「似たもの同士」であり「同志」として共感できる部分も多いと思うのですが、なかなかそんな理想通りの寛容になれるものでもありません。


いずれにしても「アイディア」の段階はそれほど特有のものではなく(だからこそ著作権保護はされません)、時代や社会の課題について思考している人たちが、同じようなソリューションや結論に到達することは結構ある気がします。それは自分が思いついた、というより社会がきっかけになっているからです。

なので「アイディアにはあまり価値はない」と僕個人は思うようにしているわけなのですが、じゃあ何が重要かというと圧倒的に「実行」だと思っています。同じような課題解決をかんがえ、同じようなアイディアをもったとしても、それを実際に行動に移す人はそれほど多くありませんし、沢山の障害や抵抗がある中でそれを実行していったことがアイディアの何倍も価値があることだとおもうのです。

その意味でSさんやAさんはどちらも、アイディアにとどまらずに自らアクションしていることこそが素晴らしいと思っています。


もちろん、アイディアの価値がゼロだとはいいません。僕自身はセンター試験や共通テストの時期に痴漢が増える、ということに気づいてすらいなかったので、そこに気づいたアイディアが人を動かすこともあるからです。ただ、アイディアのオリジナリティや「どちらが元祖か」ということを争ってもあまり意味がないともおもいます。本当に唯一無二で誰にも真似できないようなアイディアというのはほとんどありませんし、今回のように一般的社会課題においてはたまたま被る可能性は十分にあるでしょう。

尊敬するオードリータンさんの言葉に「考え方こそ主役」というのがあります。

「私の考えも誰か他の人から来たもので、私も他の人へそれを受け渡しているのです。「これは誰々の考えだ」ということではなく、考え方こそが主役なのです。私たちはその考え方を継承しているに過ぎません」

『オードリー・タンの思考』

そしてもっといえば、「実行こそ主役」だと思うのです。


SさんAさんが社会に与えてきた価値はアイディア以上のものだと僕は思います。Sさんは実際に自らパトロールをし、発信し続けていることがすごい(自腹で有給使って、危険だってゼロではないのです。誰でもできることではありません)。そしてAさんは、痴漢撲滅のために発信力があるご自身ができることとして周りを巻き込み鉄道会社に談判したりまた別のアプローチで活動をしています。(これにしたって傍から見るほど楽なことではありません。発信力の分、批判にもさらされます)


こうしてみると「アイディア」は似ているように思えても「実行」はそれぞれであり、ここには争いはないのではないか、と思うのです。

もちろん、心情としてお互いにそう一筋縄ではいかないのもわかります。

自分がたった一人の個人で始めた活動なのに、インフルエンサーや政治家などより大きな力を持つ方が後から大きく注目されたら悔しいと思います。(ベンチャーが独立独歩育ててきた市場に大企業に後から資本力に物を言わせて参入された、みたいな気持ちになる)。広がったんだからいいじゃん、というのは正しいですし外からは言えますが、悔しい思いを持つことも自然です。

一方、Aさんも(Sさんの活動を知っていたかどうかはわかりませんが)「パクリ」といきなり言われ面食らってしまったところもあると思います。サービスやアートの「パクリ」問題もそうですが、自分なりに考えて工夫して実行してきたことを「パクリ」と呼ばれたらこれもまた悔しくてたまらないと思います。

(今回、「簒奪」や「手柄の横取り」みたいな言葉も使われています。僕自身も以前ジェンダーギャップについて発信したことが想像以上に反響を招き、結果「ずっと女性が訴えてきたことをおじさんがちょっと言ってバズって調子に乗るな」とご批判をいただいてやるせない気持ちになったことがあります。声をあげてきた女性を尊敬していますし、自分にもできることを、と思っただけでそれを奪うつもりはないのですが…)

ブロックをしたり「誹謗中傷」と断じてしまうと「パクリを隠蔽しようとしている」と思われてしまう悪手だったとは思うのですが、いきなり多くの人から「パクリ」って言われたら(あるいは弁護士からの指示もあるかもですが、緊急避難的に)そういう防衛をしてしまう気持ちもわからなくはありません。その中には言葉の暴力に近い「誹謗中傷」もあったでしょうから、そうした一部の酷い物言いに対して法的措置も…といったことが批判する人全てへの「脅し」と取られてより対立が激化してしまったのではないでしょうか。


周りの人にお願いしたいこと

僕は一父親として、どちらの活動も本当に素晴らしいと思います。というか、痴漢の撲滅を女性からだけ声があがっていることを、むしろ多くの加害者を野放しにしていることを一男性として恥ずかしく思います。

まず間違いなくみなさんが望むことは、痴漢が撲滅されることです。そのために、Sさんの当日パトロール活動もAさんの鉄道会社や自治体への働きかけもどちらもこうした事例が全国に広がっていくといいな、と思います。

そしてそのためにも、両者のフォロワーのみなさんにお願いです。ここで当人以外の周りが邪推をしたり対立を煽ったりすることはちょっと待ってもらえないでしょうか。(どうしても攻撃の声が多くなるので、批判をできれば双方の活動への称賛に変えていただくとなおうれしいです)


個人への名指しの攻撃は辛いものです。一対一の意見として発したとしても、受ける側には何千倍にもなって襲いかかります。ぜひけんすうさんのこちらのnoteも読んでみていただけたらと思います。


周りが「パクリ」と煽らず状況が落ち着いてくれば、きっとSさんとAさんはお互いにリスペクトを伝え合う機会ができると思います。そしてSさんの取り組みをAさんの発信力でさらに加速したり、さらに協働して大きなムーブメントにすることもできる気がします。双方の活動が面になって広がっていく日を願って、ぜひRTやリプライをする前に考えてみていただきたく、今回の記事を書きました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?