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SNSデモから1週間がたって、「怒り」について考えている。

そのデモはたった一人の、ひとつのツイートからはじまった。金曜夜に投稿され、土曜の午後から拡散された(自分もこの頃に見た)。夜にはトレンド1位を長時間にわたり独占、多くの「著名人」の方々が発信し、今まで政治的発言をしてこなかった方々も声をあげた。合計で600万ツイート(同じ人の複数投稿は含む)を超え、あくまでSNS上だが、かつてない大きな「うねり」を生んだ。

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要は「政権の意向次第で特定の検察庁幹部を役職定年後も継続させられる」という法案に対する抗議だ。内閣総理大臣を捜査する立場にある検察のトップの定年を政権の意向で延長できるような法律は「政治的腐敗」を招く可能性があるという批判だ。

「悪い物語」からくる怒り。または「ロジカル」と「エモーショナル」。

しかし、「こんなにも自分の生活に関係のない(消費税や補助金給付ではない)法案に対して批判の声があがることが不思議だ」と多くの人が首を傾げてた。確かにそれは一見不可解な現象に思える。「理解もしないで流行りに乗って呟いている」だとか「コロナでみんなストレスが溜まっているんだ」という意見を見かけた。(それは一理あるとは思うが)僕はこれとは少し違う意見を持っている。"今回の検察庁法改正は「悪い物語」としてよくできていた"のだ。

もともと疑惑の多かった現政権。森友学園の国有地の値下げ売買、加計学園の謎の認可、桜を見る会の公選法違反など、政権が崩壊するほどの疑惑があっても政権側が罰っせられることは終ぞなかった。それに対して、政権の守護神と言われた黒川検事長の存在がある。過去に法務・検察と政界の折衝役である官房長に就任。第二次安倍政権における官邸とのパイプ役を担っていた人物だ。本来であれば今年2月に63歳の誕生日を迎え、定年するはずだったが強引な「法解釈」(しかも議事録はなし)で延長された。それを無理矢理に辻褄を合わせるような形で、今回の法改正が現れた。しかも多くの国民が新型コロナの影響で疲弊してるこの渦中にあるにも関わらず。しかし、ある一人のツイートから社会が動き出す…

これを物語として捉えてみたら、よくできた「悪い物語」だ。ハゲタカや半沢直樹でそのまま出てきてもおかしくない。荒唐無稽すぎて「そんなことあるわけないだろ」という声がむしろ上がりそうだが、悲しいことに令和・2020年・日本で現実として起きている。「リーダーの保身」のためとしか思えない法案という「狡い(こすい)一手」は、この物語を物語たるものにする、ちょうどいい導入になったように思う。

僕はこの「物語性」が拡散のキモになったと考えている。「これは悪い物語だ」と多くの人が気づき、琴線に触れ、怒りを生み出すことになったのではないか。この「悪い物語」の読後感は最悪であり、多くの人に怒りが芽生えた。

僕はこの「いい物語」と「悪い物語」を分別する能力を養うことこそが小説や文学の一つの大切な役割だと考えている。今回、芸能人やアーティストによる批判を多く見ることができたのは、彼・彼女たちは創造性や感情を大切にする人たちだからではないか、という仮説を持っている。「想像力」による「怒り」をストレートに発信に変えることができたのだ。

物語性だけで物事を語らない人々にとっては、「なんでこんなに盛り上がってるんだ」と不思議に映ったかもしれない。例えばそれは「ビジネスエリート」の人たちだ。彼・彼女たちは、とても優秀で有能なため「ロジカルシンキング」が長けている。ロジカルに語れないことは語るべきではないと考えている傾向があるように思う

しかし今回の事件は、決してロジックが明快だとは言い難い。どこまでいっても「想像の範疇」が広がっている。想像の範囲だから容易な発言は控えるべきだ。それが多くの「まともな人」の思考かもしれない。しかし、僕はその「まともさ」に危機感を抱いている。

「ロジカルでなければいけない」と思っている人は「エモーショナルであること」を蔑ろにしているかもしれない。「うまく言えないんですけど、やっぱりおかしいと思うんです」ということだってある。しかしロジカルでなく「感覚的・感情的」な状態のままであれば話さないことを選ぶ。それは賢明とも言えるが、徹底しすぎると感情や抑圧され、行動が生まれなくなってしまう。

感覚的に正しいか正しくないかを判断すること・違和感や怒りを、社会はもっと大切にすべきではないか。昨日ある人とこの話をして「怒りで政治的な発言をすべきではない。怒りは間違えるから」という言葉をもらったが、僕はこれを否定した。僕は「怒り」こそが人を動かす大切なパワーであり、怒りをきちんと表明することは尊い行為だと捉えている。

怒る(いかる)ことの意味と価値。

正直にいえば、僕はずっと怒りつづけいる。この1週間は、怒りで夜も眠れず、仕事に支障がでるほどだった。どうしてこんなにも怒りが沸いてくるのかの説明は難しい。ただ、曲がりなりにも自国のリーダーである政権の「姑息さ」が許せなかったのだ。それに対して大した影響力ももてない自分も許せない。

「Twitterでデモやったって世の中は変わらない」それが普通の意見だ。でも結果どうだったか。この1週間で世論は大きく動いた。それもたった一つのツイートから。

野党の人たちがその声に勇気をもらい動き出した。NHKやマスTVの多くがツイッターデモを放送した。元検事総長を含む検察OBが意見書を提出した。自民党内部からも批判が上がった。河井夫婦の公職選挙法違反事件をnews zeroが新たに報じた。桜をみる会に関して弁護士ら500人以上が刑事告発へと動いた。NHKでも放映されたなかった国会をYouTubeで5万人以上が同時に観た。国会中の抗議のハッシュタグは60万人を超えてトレンド1位となった。金曜日に決まるはずだった採択は延期された。今日の新聞の社説では「撤回しかない」(朝日)「疑念は解消されない」(毎日)「法が終わり、暴政が」(東京)「拙速な改正は禍根」(日経)と語られた。


僕は正直、この流れに驚き戸惑っている。僕だって先週の土日の頃は「まあこの土日は凄かったけれど、また以前のように戻ってしまうんだろうな」と半ば諦めていた。でも今回は違った。間違いなく、社会は動いたではないか。

この流れをつくったのは紛れもなく人々の怒りだった。ひとりひとり違う、それぞれの怒りだ。「こんな小さな声は届かないかもしれない」と思いながらあげた怒りの集大だ。繰り返すまでもなく、僕はこの流れを応援している。

これからの話。怒りを大切に。

これだけ世論が動いたとしても、週明けに強行採決される可能性はとても高い。今の与党のパワーは強大であり、今更国民が騒ごうが、野党が騒ごうがお構いなく採択することは可能だからだ。その責任は紛れもなく、選挙でその体制を選んできた国民にある。

だけど、仮に強行採決されてしまったからといって、今回の件が無意味だとは思わない。寧ろとても大きな意味がある、歴史に残る出来事だったと確信している。多くの人が改めて政治や選挙の重要性に気づいたはずだ。人によっては調べ、より考えたのでないか。それは健全な民主主義へと向かう、大きな一歩だ。

この流れを今回の件で終わらせてはいけない。このことを忘れないようにしよう。仮に採決されたとて、これだけの声を無視して法案を押し通す国の姿を見届けないといけない。そして次の選挙で行動するべきだ。少しずつ学んで、少しずつ行動に変えていくべきだ。多くの人に宿ったであろう「怒り」と「違和感」を大切にしなければいけない。

怒りはとても大事な原動力だ。なぜならそれは人の尊厳に深く関わることだから。怒りが生まれるということは、何かしらの尊厳が傷つけられた証拠だから。

同時に、怒りをさらにうまく使うために、その怒りの源流がどこにあるのかを知ることはとても大事だ。そしてその怒りをよりうまく伝えるために冷静に表現するこも大切なことだ。「怒りをコントロールする」ことは怒りを収めるものでも、否定するものでもない。「怒りをコントロールする」ことは、「知性」がもつ大切な役割だと思う。

正直に言えば、この「悪い物語」の行先を楽しみにも思ってしまっている。この悪い物語は、救いもない悲劇として終わるのか、それともどこかで大どんでん返しが待っていて、鮮やかに物語が転換するのか…。それは誰にもわからない。わかることは、本当のフィクションとは違い、この物語はずっと続いていく。私たちとともに。

だから、どうかその怒りを大切に。「声をあげろ」「行動しろ」なんて言うつもりは毛頭ない。とにかくそこに芽生えた怒りや違和感を大切にしてほしい。そこには確かに、あなたがあなたである意味が隠れているはずだから。

というわけで、僕はこれからも怒りつづけていきます。
#週明けの強行採決に反対します


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文鳥社とカラスという会社(通称バードグループ)の代表とエードットの役員をやっています。企画、デザイン、会社経営のことなどについて書いていければと思います。

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