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高速ネット回線環境で変わる世帯年収と教育格差

新型コロナの影響で外出自粛の風潮が高まる中でも、リモートワーク、リモート会議、リモート飲み会、オンライン授業など、新たな仕事や生活の様式を取り入れることで、不謹慎な言い方ではあるが「コロナ後の生活を楽しんでいる」という話は、よく耳にする。コロナウイルスがリモートテクノロジーの普及を推し進めている面は確かにあるのも事実だ。

そうした新生活の中で重要になるのは、自宅に高速ネット回線があるか否か
という点である。

米国の市場調査会社、ピューリサーチセンターが国勢調査(2015年)のデータを分析したレポートでも、米国で学齢期の子どもがいる世帯の15%は、自宅から高速インターネットにアクセスしてオンライン学習ができる環境を持っていない。 その割合は、白人よりも黒人やヒスパニックの家庭が多く、低年収の貧困層に偏っている。自宅にネット回線のない子どもは、図書館などに出かけてWi-Fiを利用するか、スマートフォンのみで学習しなくてはいけない。

現代では、スマートフォン所有率に貧富の格差は見られないが、自宅の回線環境とパソコンの所有率により、世帯年収や学力の格差がみられるようになっているのだ。

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日本でも、コロナ禍のリモートワークやオンライン学習において、自宅のネット環境による格差が露呈することとなった。回線格差の原因となるのは「回線費用を払う余裕がない経済的な問題」「スマホがあれば自宅の高速回線は不要と考えていた」「住んでいる地域に光回線が来ていない」という3つが複合的に絡んでいる。

中には、朝PCを立ち上げてから何もしないまま昼を迎えてしまった、という人の声も多数聞きます。その第一の理由としては、作業環境が整っていない、ということがあげられます。たとえば、自宅のネット回線が遅かったり、そもそも自宅にネット回線を引いていないからスマートフォンのテザリング機能で対応せざるを得ない、という人もいます。(日経新聞2020/4/21)

総務省が2019年に行った「令和元年通信利用動向調査」によると、日本国内の一般世帯が自宅からインターネット接続する回線の種類は、89.0%がブロードバンド回線となっている。ただし、その中で光回線(FTTH回線)を導入している世帯は5~6割程度であり、携帯電話回線のみでアクセスしている世帯も2~3割はいるとみられている。

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情報通信機器の保有状況にしても、スマートフォンの保有率は83.4%で、補どんどの家庭がスマホからネットにはアクセスできる環境を持っている。その一方で、パソコンの世帯保有率は年々下がってきており、平成20年(2008年)には85.9%だったのが、平成元年(2019年)には69.1%にまで下落している。

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令和元年通信利用動向調査(総務省)

このデータを裏付ける、各世帯の経済事情として、スマートフォンの月額料金はキャリアならば「月額7,000~9,000円×人数分」、通信費の世帯平均額も月額1.7万円、年間で約20万円の出費で家計の負担は大きい。

さらに、光回線を自宅に引き込むと、月額4,000~5,000円の通信費が上乗せされることになるため、「家でパソコンと光回線は使わない」という価値観の世帯も一定数あったのは事実だ。しかし、コロナ禍で状況は一変して、在宅勤務や子どものオンライン教育が実施されることにより、光回線の契約数は大きく伸びている。

自宅のパソコンは高速ネット回線は、無くても生活をしていくことはできるが、家族が有益に活用することにより、情報や知識の吸収量が「スマートフォンのみの世帯」よりも格段と大きくなり、それが学力や世帯年収の差として現れる傾向は確かにあるだろう。

さらに、パソコンと光回線さえあれば、田舎からでも大都市と同等の収入も稼ぐことは可能で、生活費の安さと感染リスクの低さからみれば「田舎発リモートワーカー」が、実質的な豊かで最も優れたライスタイルとして見直す価値観は、既に欧米富裕層の中から出てきている。

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