欧州文化にある「連続性」をみる

これまで、日本と欧州の間の心理的距離が遠い話をしてきました。

さて欧州の文化をみる時に、いくつかの特徴をおさえておくと良いですが、その1つの鍵が「連続性」です。何の連続性でしょうか?

3つあります。論路的連続性、地理的連続性、時間的連続性です。順番に説明していきましょう。

第一に論理的連続性の例をあげれば、とにかく図より文章で説明する傾向が強い、ということです。企画書はパワーポイントよりも、まずワードで文章を書くのを重視します。道の順序を覚えるのもそうです。上から鳥瞰的に地理的配置を頭に入れるよりも、「○○通りを200メートル行ったら、銅像のある広場に突き当たるから、そこで右折して××通りに入る」と覚えていきます。

論理的連続性とは、簡単にいえば「順を追って話せる」ことです。「風が吹けば桶屋が儲かる」理由を話せればいいのです。1つ1つの事実や現実に納得感あるつながりを持たせられれば、とりあえず連続性は確保できたことになります。欧州でも分野や世代によっても変化があり、やや「連続性の濃度」が低くなっていますが、論理的連続性を重んじなくなったとは到底言えません。

次に地理的連続性です。ご存知のように国が地続きになっています。国境のこちらと向こうにある共通性と差異性に関する感度が鍛えられています。したがって新しいビジネスや新商品の開発をする場合、いくつかの国をまとめて「1つの地域」として想定する習慣があります。

同じ国のなかにおいても地方によって異なる文化がありますが、それ以上の差異が国境を挟んで生じることが多いので、複数の国をまとめて視野に入れるのが「インターナショナルビジネス」の出発点です。よって欧州で「ビジネスをしている態度」としてチェックされるのが、商品パッケージにある説明文は3-4か国の言語で表記しているか? ということになります。因みにEUは学校教育において母国語に加えて「2つの外国語」の習得を推奨しています。

また欧州のビジネスパーソンが欧州内の複数国に渡ってのビジネスを「グローバルビジネスを手掛けている」とは決して言いません。グローバルとは地理的連続性を越えたエリアを指すのが一般的です。

最後が時間的連続性です。過去を捨てるためではなく、今とこれからの為に活用する資源として考える習慣をもっている。これが時間的連続性の意味するところです。イノベーションをテーマとしたワークショップがあるとします。そのような席であるイノベーティブなコンセプトを発表するプレゼンテーターに対し、「そのコンセプトのもとにある歴史的背景や文化的根拠は何か?」との質問が最初か2番目に出てくる。それが欧州の風景です。

ブランド構築も時間を経て積みあがってきた考えやイメージをアップデートすることに注力します。EUの成立も同じです。目標を達成できなかった場合、「目標の設定自体に誤りがあった」と反省して目標の見直しをするのではなく、「目標に到達するための方法に誤りがあった」と反省する。その反省の繰り返しが政治・社会的統合としてのEUの成立であったわけですが、(目標の練り直しではなく)方法の試行錯誤のために時間を費やしてきた点に注目すべきです。

以上、連続性をキーにした場合の欧州文化の読み方です。

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