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日本円と東京市場の不人気~今年も史上最小レンジか~

明確化する日本円と東京の不人気
今年も残すところあと1か月半。ドル/円相場は年初からのレンジ(8.30円)を未だに抜け出られていません。「2年連続での史上最小値幅を更新」という結末が現実味を帯びてきていると言えるでしょう。こうした動意の無さは諸説ありますが、そもそも「人気が無い」ことの結果とも見ることができます。これは今年9月に発表された国際決済銀行(BIS)による3年に1度の外為調査『Triennial Central Bank Survey - Foreign exchange turnover』はこの事実を浮き彫りにしています。円の凋落は覆い難いものがありそうです。

通貨別の取引高シェアを見ると、円の取引シェアは今回調査で8.4%と過去5回分(15年分)の調査で最低を記録しています。ちなみに取引シェア上位4通貨は米ドルを除けば15年前の調査(2004年)から比較すればシェアは落としていますが、前回調査(2016年)からシェアを落としたのは円だけです。通貨ペアで見てもトップのユーロ/ドルが23.1%から24.0%に上昇しているのに対し、これに次ぐドル/円は17.8%から13.2%へ幅を持ってシェアを落としています。そのほか3位のポンド/米ドルが9.3%から9.6%へ、4位の米ドル/豪ドルが5.2%から5.4%へ、5位の米ドル/カナダドルが4.3%から4.4%へ、6位の米ドル/人民元も3.8%から4.1%へ上昇しています。

東京市場の地位は3位から5位へ
また、そもそも東京市場の地位が落ちているという事実も見逃せません。取引時間帯や言語の問題など解決が難しい論点が指摘されていますが、やはり取引の主役になるはずの円に全くテーマ性が感じられなくなっていることも影響しているのでしょう。15年前にシェア8.0%で世界第三位の為替市場だった東京の地位は2019年時点で4.5%と5位まで落ち込んでいます。文字通り、地盤沈下の様相を呈しており、シンガポールや香港の後塵を拝しています。もちろん、こうした傾向が次回(3年後)や次々回(6年後)の調査も続くどうかは定かではありませんが、2016年から2019年にかけて為替市場全体の取引が5.10兆ドルから6.59兆ドルへと約+30%も増えているにもかかわらず、円や東京市場の存在感は低下していることは相応の深刻さを孕んでいるように思えます。よほど「面白くない通貨ペア」と思われているのだろうと想像されます

「動かない→儲からない→取引しない→動かない」の悪循環
今回のBIS調査ではこうした円の不人気について「大部分は重要なドル/円ペアの低ボラティリティーによるもの」と分析しています。確かに、ドル/円以外のユーロ/円や豪ドル/円といった主要なクロス円通貨の取引は過去3年で増えており、ドル/円の不人気が円全体の不人気を象徴していることが分かります。また、円全体の取引高からすれば小さな存在ですが、証拠金取引を好む個人投資家が好みやすい高金利通貨を対象とする取引も世界平均を超えるペースで増えています。

例えばトルコリラや南アフリカ、ブラジルレアルといった通貨であり、これら3通貨を対象とした円取引の平均取引高(日次)が「2016年の70億ドルから2019年は120億ドルと約2倍へ膨らんでいる」とBIS調査では指摘されています。今や個人投資家でも多くの取引通貨を選択可能な時代になったため、こうした動きは必然と考えるべきなのでしょう。「短期で手っ取り早く儲けたい」という誘因が強そうな個人投資家がわざわざ「動かない通貨ペア」を選ぶ理由はありません。こうしたBIS調査の結果を見る限り、近年のドル/円相場が極小レンジに収まっている背景には「相場のアヤを取りにくいドル/円ペアではなく、もっと派手な動きをする通貨ペアが良い」という投資家の思いが反映されている可能性が推測されます

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