JNEWS編集長(井指 賢)
コンビニ化する農業経営とサラリーマンファーマーとしての働き方
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コンビニ化する農業経営とサラリーマンファーマーとしての働き方

JNEWS編集長(井指 賢)

 やり甲斐のある仕事が求められる中、若者の間では農業法人への就職が人気になっている。イオングループでは、農業法人イオンアグリ創造(千葉市)という子会社を2009年に設立して、農業事業に参入しているが、2015年に初めての大卒採用を行ったところ、約50名の定員に対して5,000人もの応募者が集まった。農業法人への就職が競争率100倍にもなったことは、就活市場の中でもセンセーショナルな出来事として取り上げられた。

農業法人イオンアグリ創造では、全国に21の直営農場を持ち、トウモロコシ、トマト、ナス、キュウリなど約30品目の野菜を生産している。収穫された野菜は、イオンの物流センターに納入された後、イオン系列の店舗に供給されるため、通常の流通ルートよりも1~2日早く店頭で販売することができる。

日本の農業が変化しはじめたのは、平成21年からの農地法改正により、株式会社でも農地を調達して、農業に参入しやすくなった頃からである。それに伴い、農家の出身でなくても、農業法人に勤めるサラリーマンという形で、農業に従事することが可能になっている。ホワイトカラーのように、完全週休2日とはいかないが、ローテーションで週6~8日の休日を取る勤務体系で、社会保険や通勤手当の他に、農産物の現物支給や定期的なバーベキューイベントなど、ユニークな福利厚生制度もある。

農場の経営は、農場長と1、2名の正社員、それ以外は10~20名のパート人材が交代制で仕事を分担する方式になっているため、コンビニ店舗の運営スタイルに近いともいえる。一つの農場で成功ノウハウを築ければ、同じ方式で全国に系列農場を増やしていくフランチャイズ化も視野に入ってくる。

最近では農業専門の求人サイトも増えており、全国の農業法人が正社員、パート社員、収穫時期だけ参加できるシーズンスタッフなど、多様な形態の求人募集をしている。

このような新しい就農スタイルは、農場にスタッフとして勤務するだけではなく、入社から数年後には、自分自身が農業法人を起業できる道筋もできている。

2014年から農林水産省が創設した「青年等就農計画制度」は、農場にサラリーマンとして勤務する形で数年の経験を積んだ後、その後も真剣に農業に取り組む意志のある者が、就農計画書を市町村の提出して審査を通過すると、「認定新規就農者」としての資格を与えるものだ。この認定者は、安価な条件で農地を借りたり、農地の購入も可能になる。また、国の補助金や金融機関からの低利融資も受けられるなど、起業者への支援体制が整っている。

農業には、天候や自然災害のリスクもあることから、机上の計算だけでは、収益の先行きを見通せない厳しさもあるが、今後はIoTやAIのシステムも導入しながら、製造業のようなデータに基づくハイテク農業が、日本の新産業として成長することも期待されている。都会のオフィスでは、満足感や幸福感を得られないという人にとっては、まずはサラリーマン・ファーマーとして農業にチャレンジしてみる選択肢もある。

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JNEWSはネット草創期の1996年から、海外・国内のビジネス事例を精力的に取材、会員向けレポート(JNEWS LETTER)として配信しています。詳細は公式サイトをご覧ください。農業法人の起業方法については「JNEWS LETTER 2019.2.1号」で詳しく特集しています。



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