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国民の政治的無関心が引き起こした安倍氏銃撃事件~自民党とカルト集団の関係を読み解く〜

「違う、そうじゃない」

衝撃の安倍元総理殺害事件から2週間。事件の真相を巡って歴史的経緯含めて様々な角度から情報が洪水のように渦巻く。その中にはミスリーディングではないかと感じるものも少なくない。

ストーリー 1:治安悪化の問題 〜銃による暗殺が日本で起きた衝撃 日本も最早安全な国ではない?!〜

海外の報道は、安全な日本で起きた銃による暗殺に驚いている

 「世界でも最も厳しい銃規制が敷かれる日本では、銃犯罪率も世界最低水準であり、安倍氏の銃撃事件は社会を驚愕させた」「昨年、銃による日本の死者数は『1人』。銃関連の事件は10件、うち8件は“ヤクザ”に関連するものだ。2018年の日本の銃による死者数は9人、米国は3万9740人だった。日本で販売が認められているのは散弾銃、空気銃。拳銃の販売は禁止されている」

CNN

「安倍晋三氏の暗殺は日系アメリカ人にショックを与えた」との見出しで、「『日本は世界でも最も安全な国。本当にショックです』(ニューヨーク日系人会会長・佐藤貢司氏)といった反応は全米の日系アメリカ人に共通している」

ワシントン・ポスト紙

銃による事件には間違いないが、日本において急速に銃による暴力が増加傾向にあるわけではなく、その方向に向かう訳ではない。

驚くべきは容疑者が3つの海外You Tubeサイトを参考にマンションの1室で銃を単独で製作できたという事実の方だ。

ストーリー 2:政治と宗教の問題

容疑者は今回の犯行の動機を「ある宗教団体によって家庭をむちゃくちゃにされた」と説明しており、その復讐の対象に政治家の実質的トップとも言うべき元総理が狙われたことから、政治と宗教との関係の問題という声も高まっている。
但し、論点がズレている。

経団連企業含め、自らが理想を考える政策実現のために政治献金を行い政治家を支援するのは、合法で健全な世界共通の民主主義のプロセスだ。
宗教団体が特定の政治勢力を支援する事自体は問題ない。それが問題となるなら、創価学会と公明党の関係含めて全て問題となる。

また、格差社会において生きづらくなる人が増える中、神の前では誰もが平等に救われると救済を与えるのも宗教の大切な役割だ。今回の事件を機に全ての宗教団体が、偏見の目で見られる事は避けるべきだろう。

ストーリー 3:本当の問題: 特定利益団体による民主主義の脅威

本当の問題は、政治と宗教団体の関係ではない。
政治と危険なカルト集団の関係の問題だ。

今回の本当の闇は、カルト集団が長年に渡って政権与党の内部に入り込み、それを警察が危険団体と認識しつつ捜査せず(できず)放置され、報道もされてこなかったことだ。

リテラなど一部のメディアは、今回の事件の前(上記の記事は2022年1月)から、安倍元総理と旧・統一教会の関係を書いていた。但し、論壇も右と左にポジションが分かれている中、「反安倍派のいつもの怪しい記事」と特に注目されなかった。

問題のビデオメッセージで、安倍元総理は前・総理の立場を明言して、韓鶴子総裁の名前も入れてメッセージを送っている。事務所が勝手にやったとは言えず元総理本人の意志があることは明らかだ。

「ご出席のみなさま、日本国・前内閣総理大臣の安倍晋三です。UPFの主催の下、より良い世界実現のための対話と諸問題の平和的解決のために、およそ150カ国の国家首脳、国会議員、宗教指導者が集う希望前進大会で世界平和を共に牽引してきた盟友のトランプ大統領とともに演説する機会をいただいたことを、光栄に思います」「今日に至るまでUPFと共に世界各地の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁をはじめ、みなさまに敬意を表します

「THINK TANK 2022希望の前進大会」ビデオメッセージ 2022/1/12

2009年の時点で、旧・統一教会は、「新世」事件においていわゆる「霊感商法」の「特定商取引法違反」で初の懲役刑の有罪判決を受けている。

その「霊感商法」は組織ぐるみの活動として広く国民に認識されていた。これらの行為が「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」(宗教法人の法定解散規定)と司法が明確にした時点で、宗教法人法に基づき裁判所が解散を命ずる事ができたはずだ。(宗教法人第81条1項)

「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」

宗教法人法81条1項1号

通常我々一般市民は、どんな罪でも懲役刑の有罪判決を受けると会社員であれば懲戒解雇だ。吉本興業の芸能人なら反社会的勢力と接点があったというだけで、解雇される時代だ。

氷山の一角とされる被害総額は34年間で1237億円。これだけ長期間、大規模に問題になった教団が何故、摘発されなかったのか。

統一教会の被害者にとっては、政治家とのつながりがあるから警察がきちんと捜査してくれないという思いがずっとあると思います。私どもにもあります」

渡辺博弁護士

新世事件の摘発を受け、旧・統一教会は、むしろ政治との絆を強める方向に向かう。

「後に統一教会の機関誌で、新世事件の責任者が<政治家との絆が弱かったから、警察の摘発を受けた。今後は政治家と一生懸命つながっていかないといけない>と語ったことが、彼らの反省点でした。我々が国会議員に『統一教会の応援をするのはやめてください』と呼び掛けている理由もそこにある」

「全国霊感商法対策弁護士連絡会」渡辺弁護士

この頃から無償の選挙ボランティア、国会議員に100名もの無給の私設秘書等を送り込んだに違いない。量販店が、メーカーから無償の販売促進のヘルパーを要求することは優先的地位の乱用にあたる独占禁止法違反だ。犯罪行為を行ってきた団体から人的支援を受けることはどういうことなのか。

検察がオウム真理教級に問題視を行ってきたカルト団体、その詐欺や恐喝、洗脳、マネーロンダリング等の違法行為で得た資金で政治家が当選し、政治家がその見返りにその活動を保護する。お墨付きを得た教会の宗教2世の犠牲者が出続ける。

「ご出席のみなさま、日本国・前内閣総理大臣の〇〇〇〇です。演説する機会をいただいたことを、光栄に思います。〇〇○○に努力されてきた麻原○晃尊師をはじめ、みなさまに敬意を表します」

もし仮に1990年代初頭に、カルトの可能性の高い宗教団体に総理大臣経験者がこのようなビデオメッセージを送ってマスコミ、野党含めて問題視しなかったとしたら、その異常さが想像できる。

何故この時点で、リテラ以外のマスコミが報道しなかったのか?何故野党もこの時点で問題視しなかったのか?
長年、教会からの搾取に苦しみ、人生をめちゃくちゃにされたと積年の恨みを募らせてきた山上徹也容疑者にとって、このビデオメッセージは、相当な意味を持ったはずだ。「安倍元総理と教会が関係があると思って」だと動機が弱い。(記者会見の奈良県警の刑事部長などはわざわざ「思い込んで」とまで忖度発言を足していた。)
「政権与党と人生をめちゃくちゃにした犯罪カルト集団との長年の癒着関係に絶望して」だと理解できる。

個人的には、凶弾に倒れた安倍総理の事を思うと胸が痛む。外交面での安倍政権の功績は評価している。法的手続きに問題はあるものの、暗殺殉職という特殊性や弔問外交の国益を考え国葬にも賛成の立場だ。
但し、カルト集団について犯罪性を理解しつつその報道を制限し、集票マシンとして政治的に保護し支援していたとなると話しは別だ。
それはまさに「民主主義の根幹に関わる問題」だからだ。

では何故、政治家はある程度、いわくつきの団体とわかっていて関係を断れないのか。それは今の政治システムに、一般国民が参画していないからという根本の原因にたどり着く。
海外メディアでは、事件当日、前総理の演説にも関わらず聴衆が300人程しか集まっていなかった事を驚きをもって報道していた。

投票率が低いから特定団体の組織票が当落線上の候補者にとって意味を持つ。一般市民の支援やボランティアがいないから、無償で選挙応援してくれたり私設秘書として支援してくれる特定団体関係者に感謝する。

候補者にとっては自分の人生がかかっているのだ。(そこは理解できる)

「旧統一教会の組織票を、厳しい候補に割り振るとある派閥の長が答えていた。それはだめですよ、といっても、足りない分を足すだけだ、と」

参議院の青山繁晴議員

岸田総理は、今回の事件に関して当初より「民主主義に対する挑戦」「最大限の厳しい言葉で非難する」と繰り返し発言している。

この意味が「自民党特定団体利権誘導型民主主義に対する挑戦」なら、期せずして山上容疑者はその目的を達成している。報道が堰を切ったように始まり、真相究明が始まっている。同性婚否定、選択的夫婦別姓否定、女性天皇否定、国民の多くの世論に反した保守的な政治判断がどのようになされてきたか、も明らかになっていくだろう。

今となっては、宗教団体名が明かされない銃撃から選挙までの3日間の奇妙な報道規制が理解できる。今報道されているレベルの自民党と旧・統一教会の情報が出れば(しかもその情報をその時点でマスコミには持っていた)選挙結果に確実に影響した。

そういう意味では、皮肉な事に山上徹也容疑者は、岸田総理が断固として非難するように、自民党の古い利権誘導型民主主義のど真ん中に銃弾を撃ち込んだといえる。

「民主主義の根幹である自由で公正な選挙。これは、私たちは絶対に守り抜かなければならないと思っている。」

岸田総理記者会見

「自由で公正な選挙」だったのか、という事が問われている。

どのような理由であっても暴力は決して正当化されない。
そしてカルト組織を長期に渡って政治的に保護することも許されない。
そして、最も大切なことは、私達自身が政治に絶望せずに、一般市民の自分達の意見を政治に反映させる努力を、怠らないことだと思う。

もう一つの加害者(山上徹也容疑者)側からの事件の本質については、次回書きたい。







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