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「選ばれるフリーランス」になるための5つの質問

中村保晴 | 事業戦略家
フリーランスの設計思想-startup sheet①  @HOHARU WORKS.inc


2020年に厚生労働省が「働き方改革」を打ち出してから "フリーランス" として仕事をする人が増えましたね。現在フリーランサーと言われる人は全労働人口の約25%。総勢1,700万人規模という現代。これはひとつの社会現象と言えるでしょう。

2000年代初旬に 雇用の非正規化が進んで急増した「フリーター」がピーク時から80万人程度減少しているということからみても「雇われない働き方」を選択する人が多くなっていることがわかる。

フリーターは「時間と労働」を提供することで収入を得る。
フリーランスは「スキルや結果」を提供することで収益を得る。

そう考えると、単純に「雇用か業務委託か」という契約上の違いだけではなさそうだ。そもそも「収益」を得るための基盤が違うと言えるだろう。

インターネットがまだ職場や家庭だけで使われていた2G、3Gの時代は、人が何かを”探す”ことそのものがアナログだった。アルバイトを探すのも飲食店を探すのも基本は「」だ。駅構内に無造作に置かれた” アルバイト情報誌 ”がメインの「情報」だったし、フリーペーパー・フリーマガジンには飲食店やエステの広告が溢れていて、みんなそこから新しい情報を得ていった。つい数年前の話だ。

何が言いたいのかというと、この「働き方の変化はインターネットの普及・進化と並走しているということだ。

2012年に4G時代に入ってから何が変わったか。SNSが一気に普及してコミュニケーションのカタチが変わり、Youtubeの動画配信によって「個」から発する情報が大きな影響力を身に付けた。インフルエンサーが生まれ、ネット上での影響力を競う時代にもなった。

そしていつしか「スマホ中心の生活」が世の中の当たり前になっていき、今までは組織(企業や団体)が牛耳っていた”情報”を「個」が発信できるということがある意味「当たり前」になった。

つまり、インターネットによって「個人の在り方」が変わったのだ。今までは「組織(会社・団体)の中にいる個人たち」が世の中を動かしてきたが、5G時代には「優秀な個人の集合体」。つまり優秀な個人が集まるコミュニティが世の中を動かしていくという形になっていくだろう。

主語が「組織」から「個人」に変わったのだ。まさに現代は「個人力」の時代。働き方はそのスタンスにすぎない。これからの時代は、スマホから得られる山ほどの情報の中から「選ばれるという個のチカラ」がビジネスを制していくのかもしれない。



売れないフリーランスのハナシ。

私の友人が突然「フリーランスになったんだ」と言い出した。

彼はなかなかのエリートで、優秀な人間。学生時代はその優秀さを羨むほどだった。学生時代だけではなく、就活中も就職してからも彼はいつも優秀だった。いわゆる「いい会社」に入って、海外赴任や部長職など順調にキャリアを積んできた。私はきっと彼は定年までそのまま安定した人生を歩んでいくのだろうと思っていた。

そんな彼が 2年前(53歳時)に会社を辞めてフリーランスになったという。彼とはもう10年以上会っていなかったから、私が東京に行くタイミングで「食事をしよう」ということになり、先日その彼と昔話に花を咲かせたというわけだ。

10代の頃の昔話でひと時盛り上がったあと、私は聞きたかった”本題”へと話を切り出した。

" ところで、どうしてフリーランスになったんだ? "

彼がはっきりとした理由を言うことはなかった。しかし話の内容を私なりに解釈すると、どうやら「組織の中の自分に疲れた」というのが本音らしい。もしかしたら彼は長い間、自分の能力を発揮できていないと感じていたのかもしれない。

会社経営ではなくフリーランスを選んだ理由は明確だった。彼には自分の能力に自信があったのだと思う。今から組織を作っていくよりも、自分自身の能力によって何かを形付けたいと思ったようだ。ビジネスも自分の生活も共に「自力で」形付ける方向を選んだのだ。


彼を待っていたのは2年間の苦難だった。

その時、彼はフリーランスになって約2年が経っていた。その間いろんな自分独自のサービスをつくり、ウェブサイトやサービスのPVを制作して、多くの制作費や広告費を使ったが「全然売れない」と。

彼のサービスはコンサルティング。フリーランスの法人向けコンサルタントだ。自分の経験豊富なジャンルで優れたサービスを組み立てて、それを積極的に販売しても「売れない」。2年間で獲得した顧客は2社。しかも3ヶ月の短期契約ばかりだった。

さすがに2年売れないと悩むでしょう。たぶん資金も持ち出しばかりで回収できてない状況。経済的な不安もあるのだと思う。事業資金だけではなく生活費を考えても今後に不安は隠せない。そんな彼は少しやつれているように私には見えた。


彼を助けたい気持ちはあるのだけど。

そういう意味で 私は一応「ビジネスモデル」と「ブランディング & マーケティング」の専門家なので、彼のビジネスを立て直すことができるのかもしれない。しかしこれは難しい判断なのだ。

友達だからいろいろやってあげたい気持ちはある。しかしビジネスとは費用対効果だ。経済的なリスクを背負って私に依頼してくれるクライアントのことを考えると「友達だから」という理由で同じサービスはできない。それでは私を信じてくれているクライアントに申し訳が立たない。

でも彼は大事な友達だから悩み、そして考えた。そしてそこでひとつの結論に辿り着いた。それは「やってあげることはできないけど"気付かせる”ことはできる」という結論だ。もともと彼は優秀な人間。気付くことで自分に何が足りないかわかるだろうと、彼への希望を込めて私は意思決定したのだ。


彼のビジネスは何がいけなかったのか?

そう決めた後、日を改めて私はまた彼と会うことにした。そこで彼のビジネスモデルを聞いてみた。いつもプレゼンで使っているという資料を見ながらウェブサイトも隅から隅まで見ていき、彼のやってきた2年間を自分なりに分析したんだ。

彼のビジネスをひと通り把握した上で結論から言うと、それは「穴だらけ」だった。それと同時にこの「穴だらけ」のビジネスのカタチは、もしかしたら多くの「売れないフリーランスの典型」なのかもしれないとも思った。

これはあくまで傾向論にすぎないのだが、例えば会社員時代に優秀で成果を出して出世していった人が「起業して売れない」ということがよくある。私はそういう人を何人も知っている。

そうなってしまう原因はいくつかあるだろう。会社員として成果を出す人は「自分の役割」について「こうすればこうなる」という組み立てができる人だ。自身の成功体験や失敗体験を「次に活かせる」。だから基本、優秀なのだと思う。

しかしそんな優秀な人が起業して、自分のその優秀な能力を"自分の提供するサービスや商品"にいくら組み込むことができたとしても「売れない」ことが多いのだ。

その優秀な能力がいけないのではない。その優秀な能力が必要ないということでもない。起業したら「それだけではダメだ」と言いたいのだ。


「いいもの」=「売れる」の間違い。

例えば、すごく美味しい缶詰食品があるとしましょう。それはすごく美味しいわけだから売れるかっていうと、その「すごく美味しいっていう事実」だけでは売れないのだ。「美味しい」という感覚は食べた後にしかわからないというのも理由のひとつだ。つまりその「美味しい」という事実は、買った人(食べた人)でなければわからないことなのだ。

だから、「売れる=誰かが買う」とするならば、買う前の人に「これ、絶対美味しい」「食べている自分が想像できる」と感じてもらう必要がある。買ってもらうためにはその想像の後にくる「感情の変化」が必要だ。

しかしながら購入者の評判を上げるためには「美味しい」という事実が必要にもなる。ただそれはリピーターや口コミを上げるためにという意味であって、必ずしも「売れる」ということに直結しないものだということを知っておくべきだ。

だから「食べた後のことだけ」「買ってくれた後のことだけ」を考えていると、それを誰も食べない(誰も買わない)という結果になりやすい。美味しいものとか 「いいもの」を持っていても、それを「食べてみたい」「買ってみたい」と思う他人が多くなければ売れていかないということであり、それがセールスという仕事の基本的な考え方だ。

優秀な人というのは、会社員の頃は 役割に集中して仕事をしていけば その役割において「大きな成果」を出すことができるだろう。しかしその優秀な人が、例えばフリーランスになると「自分のこと」以上に「それを買ってくれる人のこと」「それを買いたいって思う顧客心理」にピントを合わせていくことが必要になってくる。「優秀なサービスを提供できる能力」と「それを売っていく能力」は異なる能力だからだ。

そしてその両方を持ち合わせる人は少ない。「いいモノをつくる」能力を持つ人は、言わば”職人”だ。そのことに対する技術や知識に長けている。そのことを「より良く」するために何年も自己研鑽をしてきた人だ。

一方で「売っていく能力」を持つ人は客観的だ。恋愛を例にすると、自分がどれだけ好きかということを相手にアピールする人ではなく、相手がどう思うかということを自分の行動や言動に置き換えられる人だ。

これらは両方とも「別の能力」だ。両方ともをバランスよく持ち合わせている人はもうすでに成功しているだろう。しかもそれはかなり希少な存在だ。

もちろん両方を勉強して満遍なくこなせるようにはなるのかもしれない。しかし「売る能力がある人」が「いいモノ」をつくるのは難しい。それだけ「いいモノ」「いいサービス」には、そのジャンルの専門的な要素と、長い時間を使った”経験”が大きくモノを言うからだ。

逆に「いいモノをつくる人」が「それを売る能力」を身につけることは勉強すればできる可能性がある。その時に重要なことは「客観性」だということを覚えておいてほしい。自分のつくったモノへの思い入れが強ければ強いほど、どうしても主観的に見てしまうものだ。

自分の商品を主観的に見るのは「つくるとき」だけでいい。売る時には客観性が必要だ。それはつまり、「買ってくれる人のこと」を考えるということであり、「買ってくれる人の感情と行動」を考えるということだと思う。


私の友人のケース

私の友人の場合は大雑把にいうと、まさに「ソレ」だった。ソレというのは、「いいモノはつくるが、ソレは”いいモノだ”とアピールしているに過ぎない」ということだ。つまり「選ばれる要素が薄い」と言い換えることができる。彼は自分の能力を自慢しているに過ぎなかった。

私のサービスは素晴らしいのです」。大袈裟に言うと彼は2年間広告を使ってそう言い続けてきたといっても過言ではない。それで「欲しい」という感情を芽生えさせることができるだろうか。

例えるならば、イケメン男子が街角で「僕はイケメンです。デートしましょう」と誰彼構わず大声で叫んでも誰も寄ってこないのと同じだ。いくら彼が本当にイケメンであったとしても、人は自分の知らない自慢男に興味を持たないものなのだ。

彼は優秀だから顧客にとって良い成果を出すだろう。彼が考えたコンサルティングメニューは素晴らしかったし、彼の能力も人柄も悪くない。つまり彼は「いい人材」「優秀な人材」だということだ。それは私が保証しよう。

しかし彼は売れなかった。依頼してみたいと思われなかった。思われたとしても競合したライバルに勝てなかった。それはおそらく見込み客に「自分ができること」しか伝えようとしなかったからだ。彼は顧客の悩みを見ているようで、実は自分のできることしか見ていなかったのだ。

「彼ができること」、「提供できる成果」は彼のサービスにとって重要だ。だからそれを否定するつもりはまったくない。しかしコンサルティングビジネスというのは「悩みや心配ごと」を解決するためのものだ。自分ではできない課題や問題を”解決してくれる”から価値があるのだ。

したがって、彼は「自分のできること」をアピールするのではなく、顧客が「解決してほしいこと」に目を向ける必要があった。主語は「自分」ではなく「顧客」だ。

そういう意味では本当にもったいないと感じた。いいものを持っているのに「必要とされない」とするなら、そこには「売り手と買い手の心理的相違(ギャップ)」がある。

彼には決定的に「自分が選ばれる」という視点が不足していたのだと思う。


彼に投げかけた「5つの質問」。

そんな彼に私は、「5つの質問」を投げかけて帰ることにした。その質問はこれだ。

Q1. それを買ってくれる人は誰か。
Q2. その人は何を求めているか
Q3. その人はどこであなたを探すのか
Q4. その人は「いつ」あなたを探すのか
Q5. そして「なぜ」あなたを選ぶべきなのか

「選ばれるフリーランス」になるために最初にする5つの質問 @HOHARU WORKS

この「5つの質問」をしたときに、やはり彼は少し詰まった。最初の質問に彼は「買って欲しい人」を連ねて答えてきたが、私は「そうじゃない」と冷静に返した。

そこが彼の「客観性の低さ」だと気付いた。彼は優秀な人間だけど、客観性が不足していると感じた。そしてそれはもしかしたら「売れないフリーランスのひとつの特徴」なのかもしれないと思い始めたんだ。

この質問の意図は「自分の理想や願望」ではない。自分のサービスを客観的に見られなければ答えられない。買い手の気持ちや、買い手の悩みをリサーチできていないと答えられない。競合ばかりをリサーチしている人にはわからない質問だ。つまり、リサーチすべきは競合ではなく「買ってくれる人」の感情と行動だ。

誰が自分のサービスを買ってくれる人なのか。誰が自分のサービスを必要としている人なのか。それを自分の中で明確にできなければ「売れる」スタートラインにも立てないのだ。

そして「Q3. その人はどこであなたを探すのか」と「Q4. いつ、あなたを探すのか」という質問はいつも考えてなければ出てこないと思う。これは言わば、自分のビジネスの設計だ。何か形あるものを作る時には設計図が必要だ。設計図のないものをどう作ろうか。ある説では犬小屋でさえ完成しないという。頭の中だけで考えると何かがズレてしまう。その典型が彼だった。

正直「そんなんどこだっていいから、探してくれよ!」「いつでもいいから自分を見つけてほしい!」と戦略も何もなく、いろんなSNSで闇雲に書き込むしかなくなってしまう。
大事なのは、誰かが彼を探す場所、彼が誰かに見つかる場所を設計するという「設計思想」だ。この超情報化時代に「選ばれる」ということは、少なくとも客観的に「設計」していく時間が必要なのだ。

売れないフリーランスから脱却するために。

この「5つの質問」は、フリーランスがビジネスモデルをつくっていくための”はじめの一歩”だ。必要ではあるが”はじめの一歩”に過ぎない。

私の友人のビジネスモデルは総じていうと「独りよがり」だった。「私にお任せください」の連呼で終始していた。ひと昔前ならそれでも通じたかもしれないが、超情報化時代の現代ではまず売れていかない。

なぜならば、ビジネスとは「誰かの悩みや苦しみを解決するもの」か、「誰かにとって幸せを増幅させるものか」のどちらかでなければならないからだ。そしてそれを意図的に設計して「それを必要としている人」に情報として届けなければならないからだ。

その意味で言うと、彼のコンサルティングビジネスは「誰かの悩みや苦しみを解決するためのもの」でなければならない。サービスとしてはそうなっている。サービスの中身も彼自身も間違いなくそれに相応しい。

しかし残念ながら、「それを必要としている人」の感情を動かせる力がない。そしてそれを伝える方法もアバウトで直感的で、しかも主観しかない。まさに「いい内容なのに誰も買わない」という状態。それが彼だった。

私はそのことを彼に伝え、そして彼は「5つの質問」を持ち帰り、今すごく考えてるそうだ。まだ数日しか経ってないので結果はまだ出ていない。でも今の彼には「今すべきこと」が明確になったようなスッキリした表情が見てとれた。

ここから先は彼が考えること。仕事であればここから先に一緒に作り込みを始めるが彼にはそれをしない。彼は優秀な人間だ。きっとこの壁を乗り越えて、本来彼の持つ「優秀さ」で多くの社長を救ってくれるだろう。私はそれを心から願うばかりだ。



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