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原油高が日本経済に及ぼす影響

ドル建ての原油先物価格をみると、中東情勢の緊迫化を受けて、月平均のドバイ原油先物価格は昨年8月の大底から年明けには68ドル/バレル台まで+16.6%も上昇しています。

一方、円も対ドルで昨年8月から年明けまでに▲1.8%減価(円安)しており、交差項の影響も含めれば、円建てドバイ原油先物価格はこの約5か月で+18.6%程度上昇したことになります。

そこで、2006 年1月以降の円建てドバイ原油先物価格と消費者物価の関係を調べると、円建てドバイ原油価格の+1%上昇は4か月後の消費者物価を約0.012%押し上げる関係があります。

このため、円建てドバイ原油先物価格+18.6%の上昇は、消費者物価を4か月後に18.6%×0.012%≒0.23%pt 程度押し上げる圧力となり、家計に負担が及ぶことになります。

具体的な家計への負担額として、2018年度における二人以上世帯の月平均支出額約28.9万円(総務省「家計調査」)を基にすれば、0.23%pt の消費者物価の上昇は4ヵ月後の家計負担を28.9万円×0.23%≒651円/月程度、年額に換算すると7,810円以上増加させる計算になります。

また、内閣府のマクロ経済モデルの乗数に基づけば、今年のドバイ原油先物価格が平均70もしくは80ドル程度で推移すれば、今年の経済成長率をそれぞれ▲0.03%ポイント、▲0.08%ポイントも押し下げることになります。

足元の原油高が持続すれば、マクロ経済的に見ても無視できない悪影響を及ぼすといえるでしょう。

さらに、足元の原油価格と過去の交易利得(損失)との関係から、今年のドバイ原油先物価格が平均70もしくは80ドル程度で推移すると、今年はそれぞれ▲1.0兆円、▲2.6兆円も所得の海外流出が生じることになります。

これは、日本のように原油をはじめとした資源の多くを海外に依存する国々とって、原油価格の上昇は所得が資源国へ流出し続ける環境になることを意味します。

このように、資源価格が上昇すれば、資源の海外依存度が高い日本経済が資源価格上昇の悪影響を相対的に受けやすく、日本経済は構造的に苦境に立たされやすい環境にあります。

特に、足元の個人消費に関しては、消費増税や冬のボーナス減等の影響により消費者心理は大きく低下していますが、東京五輪に向けた特需等に伴い、夏場にかけて一時的に盛り上がるとみられています。

しかし、今後の個人消費の動向を見通す上では、原油価格の高騰といったリスクが顕在化してきたことには注意が必要でしょう。

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