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ラジオは音しか聴こえない それがスゴい!

ラジオ好きです! 可能性を感じます

今回とりあげるのはニッポン放送の檜原麻希社長のインタビュー記事です。留学や海外でのビジネス、女性向けコンテンツ開発などの体験を通じダイバーシティの視点を持たれている方が局のトップとしてラジオの新しい可能性を探られています。ラジオ好きとしては応援せずにはいられません。

そう、かつて僕はラジオ番組のハガキ職人をやっていました。だから、ニッポン放送の住所ももちろんそらで言えますよ。あ、ハガキ職人の見分け方って知っていますか? そんなこと何の役にも立たないとは思いますが、ハガキ職人はハガキを持つとハガキの枚数が分かるんです。なぜなら、当時の学生にとってハガキは貴重だったから!

ラジオは元祖ソーシャルメディアなんです。番組は今でいうところのUGC(User Generated Contents)、つまりリスナーの投稿で構成されていますし、リスナーたちは番組というコミュニティに属しているという一体感を感じてラジオを聴いていました。言ってみれば、ハガキ職人は、昭和におけるアクティブなTwitterユーザーだったのです。

あ、でもね、今日はノスタルジックな話をしたいわけじゃないんです。檜原社長も記事の中で語っていますが、僕もラジオや音声メディアにはものすごい可能性があると思っています。なので、いまの時代に、マーケティングやブランディングを担当している人たちがラジオから何を学べるのか? そんな視点で、ラジオの強みについて書こうと思います。

音声だけだから、想像力が発動する

ラジオは自分だけに語りかけてくれるように聴こえる
僕はこの現象を「銀座のママ現象」と呼んでいる
お客はみんなママは自分のことが好きって思っているみたいな

ラジオという音声コンテンツの強みのひとつは「聴き手の想像力に託す」メディアであるということ。ラジオを聴くとき、僕らは聴力しか使いません。映像が、視覚と聴覚を総動員するのに比べると受け取る情報量が少ないとも言えますが、この情報量の少なさが逆に聴き手の想像力を刺激するんです。ラジオパーソナリティが「すごく辺鄙な山奥の村に行ったんです」とおしゃべりしたら、リスナーはそれぞれ頭の中で山奥の村の様子を想像するでしょ。ラジオはよく自分一人のためにしゃべってくれるパーソナルなメディアという評価を受けますよね。パーソナリティのおしゃべりに対して、聴き手が自分の想像力を発動して頭の中に映像をつくっていく。このしゃべり手と聴き手のコラボともいえる「共体験」が、ラジオが発信するメッセージを「自分ごと」へ変換させるんです。ラジオはかなりクリエイティブなメディアです。こういう送り手と受けての関係性の作り方は、企業と生活者がOne to One で接続する時代にコミュニケーション手法としてヒントになるはずです。

SDGs時代にラジオができること

檜原社長は2008年に丸の内で働く女性のためのポッドキャスト番組を立ち上げました。このポッドキャストで新丸ビルにあったスナックのママだったミッツ・マングローブさんが注目を集め始めたのは有名な話。

そんな檜原社長は社長就任以降もジェンダーに関する番組を意欲的に作られています。元乃木坂46の新内眞衣さんが出演した特番「新内眞衣と土曜日の優しい夜」では、なかなかオープンに話せなかった女性の生理について取り上げることで、生理に悩みを持つ女性の課題解決を目指しました。
昨年からはじまった「はじめよう!フェムテック」という番組では、Kid&Family編集長の伊久美亜紀さんとニッポン放送のアナウンサーをパーソナリティに起用してフェムテックを取り上げています。

ラジオは本音のメディアとも言われます。ジェンダーも問題はSDGsの中でも身近で重要なイシュー。同じように働き方の問題など、なかなか正直に自分の意見を表明できないテーマで、世の中の新しい合意形成をすすめるためには、優等生的に「こうあるべき!」というメッセージを発信するだけでは事態はなかなか改善しないでしょう。本音で議論ができるラジオのような場で、これらのテーマが話されることで、新しい価値観への共感が広まっていく事例が生まれるのではないでしょうか。ESG経営を進める企業にとって、ラジオでの本音トークは参考になるはずです。

空気のように邪魔にならず生活に寄りそう

ラジオは水や空気のよう
存在するのが当たり前なもの
でも、とても大切なもの

IOT化が進むと、家電、車などあらゆるモノがメディアになっていきます。あらゆる場所で企業は生活者と直接結びつく状況が作られていくんですね。
そんな時代に音声がインターフェースに使われる機会は今以上に増えていくのではないかと予想されます。音声を伝える技術を長年培ってきたラジオには、常時接続時代の企業と生活者のコミュニケーションのヒントが溢れています。

檜原社長自身もラジオを聴きながら勉強をしたとお話ししているように、ラジオの強みは「ながら力」です。勉強しながら、料理を作りながら、運転しながら、仕事をしながら、ラジオを聞くことができます。これは、ラジオを聴くのに聴覚しかつかわないもう一つの利点ですね。
つまり、ラジオは日常生活に寄り添う、いや、日常生活に溶け込むことができるメディアなんです。大ナッジら、毎日日課のようにラジオを聴く習慣性も生まれてくるわけです。

いま、企業がIOT化した商品などを介して生活者に情報発信をするときに求められるトーン&マナーは、テレビの15秒CMのようなインパクトのある表現ではありません。むしろ、情報は生活に溶け込むように入ってくることが望まれるのです。

ある映画評論家は「いい映画は一生覚えているか、見た途端に全てを忘れてしまうもののどちらかだ」という話をしていました。ラジオ番組もそうだななと思います。先日、TOKYO FMの村上春樹さんの番組では「戦争を終わらせるための音楽」を特集されていました。村上さんのメッセージは力強いものでした。そんな、メッセージ性の強い番組がありつつ、一方で生活に寄り添って「ながら」で聴ける人気番組も多数存在します。それはまるで空気や水のようなもので、その存在を忘れそうになるけれど、いざその存在が無くなるとさびしくなって、その役割の大きさに気づくような番組。そんな存在はまさにIOT時代に企業と生活者の関係として理想的なのではないでしょうか。リスナーとの距離感や温度感はラジオから学べるのです。

中島みゆきさんに学ぶ関係構築術


天気予報は生番組でしかできない
いま、同じ時間を生きている感覚を生み出すコンテンツ

ラジオ番組のパーソナリティのトーク術にはリスナーとの関係をいかにつくるかという技術が詰まっています。その最もたるものはパーソナルな関係をつくる技術。
ラジオは自分に向けて話かけてくれるメディアだと書きました。実際にはラジオは多数の人に向けて発信されているのに、パーソナルなコミュニケーションをしているように感じてしまいます。

テレビのアナウンサーや出演者は、視聴者に「みなさん」と呼びかけます。でも、優れたラジオのしゃべり手は「ラジオの前のあなた」と呼びかけます。二人称の呼びかけを複数形にしないんです。聞き手は自分に話しかけてもらった気持ちになります。言葉一つのちょっとした違いで聴き手の感覚はまったく変わってくるものです。

中島みゆきさんは1979年から87年まで「オールナイトニッポン」のパーソナリティをつとめ人気を博しました。僕もリスナーの一人でした。放送でハガキを読んで、「あなた」とハガキを書いたリスナーに語りかけていたみゆきさんの声が印象に残っています。その後、2013年から18年に月に一回だけ、なんと深夜の3時から「中島みゆきのオールナイトニッポン月イチ」という番組を担当されていました。

その番組の中で午前4時の天気予報が意外な人気コーナーになっていたんです。そこでは、みゆきさん自身が天気予報をするんです。「今日は、これから雪が降るね」なんていうみゆきさんの言葉を静寂の中深夜に一人で聴いていると、同じ時間を起きて過ごしている謎の一体感を感じることができたんです。これぞ、ラジオの魔力!

みなさんと呼ばずに、あなたという。深夜に天気予報を読む。リスナーとの「共体験」のつくり方。ラジオから学ぶことはたくさんあります。



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