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自転車愛好者が集うサイクリングカフェの新業態

「自転車」は、年齢を問わずに、誰でも気軽に楽しめるスポーツとして、日本でも人気となっているが、英国では、自転車を起点としたリアルなコミュニティビジネスが形成されてきている。もともと、英国では19世紀からサイクリングを楽しむ文化があったが、近年の健康・エコブームもあってサイクリング愛好者が急増している。

「Cycling UK」は1878年に設立された200年近い歴史を持つ、非営利のサイクリスト団体だが、現在は全英で67,000人以上の自転車愛好者がメンバー登録をしている。Cycling UKの主な活動は、安全なサイクリングができる環境を整備することで、保険会社との提携による自転車保険の提供や、サイクリングイベントの実施、サイクリングインストラクターの育成などを行っている。

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そうした自転車文化の中で、自転車ショップとカフェを兼ねた「サイクリングカフェ」という業態が2010年頃から生まれている。サイクリングの途中に立ち寄って、コーヒーやケーキを食べながら仲間と交流したり、パンクの修理、自転車のメンテナンス、サイクリング用の手袋やウエアなどのグッズも購入できる施設だ。定期的なワークショップ(講習会)や、サイクリングイベントも開催することで、サイクリストのコミュニティとして機能している。

英国では、ロンドンを中心に数十店舗のサイクルカフェが存在しているが、もともとは、自転車屋が顧客との親密な関係を築くために、店舗の中にカフェを併設したのが起源と言われている。カフェがあれば、これから自転車を始めたい初心者でも気軽に来店しやすくなるし、収益の構成も、自転車本体やグッズの販売と、カフェの飲食収入、それにイベント参加のメンバー制度を作ることによる会費収入へと広げることができる。

「Look Mum No Hands」は、ロンドン市内に常設の店舗と、夏季シーズンのみ営業するポップアップ店舗を展開しているサイクリングカフェで、自転車愛好者の他に、一般の来店客が食事だけでも利用しやすい店作りがされている。イベントの開催にも積極的で、自転車メンテナンス講座、自転車中古パーツのバザー、サイクリングが趣味の独身男女に出会いのチャンスを与える婚活パーティなども開催している。

自転車に限らず、趣味を起点として、友達や仲間を作りたいと考えている人は日本でも多いが、プロショップと呼ばれるような専門店は、初心者にとって入りづらい雰囲気がある。これはショップ側にとっても本意ではないことだが、取り扱う商品の専門性が高くなるほど、無意識のうちに入店のハードルも高めてしまっている。

そこで、専門店にカフェを併設する形で、気軽に店主やスタッフと話ができる環境を作り、新たな趣味をスタートする上での相談ができたり、新たな仲間が作れる初心者向けのイベントを開催することは、有意義な取り組みになる。

同じ考え方や価値観を持っている人とは、住んでいる地域に関係なく、オンラインで出会える時代になったが、本当の信頼関係を築くには、やはり実際に会ってコミュニケーションすることが重要だ。それを求めている人は潜在的に多く、消費者の実店舗離れが進む中でも、趣味や仕事、生き方のスタイルなどで、共鳴しあえる友人や仲間と出会える場所には、全国からの人が集まることになるだろう。

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