見出し画像

働き方改革の裏側で減少する「残業リッチ」と、副業収入による資産形成

 政府主導で推進される「働き方改革」により、企業は従業員の勤務状況を見直す動きが本格化しているが、その中でも「残業時間の削減」は、最初に取り組むべき課題として掲げられている。

残業時間を減らそうとする風潮が出てくるのは良いことだが、経済面ではマイナスの影響も懸念されている。サラリーマンの賃金は、基本給がなかなか上がらない中、自ら残業時間を増やすことで収入の不足分を補ってきた人も多い。

大和総研では、残業時間の上限が60時間/月までに規制されると、年間で 8.5兆円もの賃金が失われると試算している。年収における残業代の割合は業種によって偏りがあるが、製造業、建設業、小売業など、労働人口の多い業種での影響が大きい。たとえば、製造業の工場ラインで働く従業員の中では、月々の残業代(4~6万円)を、住宅ローンの支払いに充てていく長期計画を立てていた人もいるため、残業代が無くなることは死活問題になる。

また、リクルートのエンジニア向けポータルサイト「Tech総研」が今から16年前、ネットバブル全盛の頃に行ったアンケート調査では、IT、電子、機械系エンジニアの平均残業代は 7.7万円/月で、多い人になると毎月20万円近くを残業代で稼いでいた。その代わりに、残業時間は 70~100時間を超していた。こうした“残業リッチ”の層は、働き方に不満を抱いているわけではなく、むしろ高額の残業代を稼げるほど満足度は高くなる傾向にあった。

エンジニア1000人アンケート調査(2003年当時)

米国でも、リーマンショック以降は、サラリーマンが残業で稼げる時代ではなくなっている。それに伴い、収入の目減り分を補う行動を起こすか否かにより、将来の人生設計も変わってくる。米国では若者層を中心に“第二の収入源”を築くムーブメントとして「Side Hustle(サイドハッスル)」の潮流が起きていることは、以前の記事でも紹介したが、そこで目指す金額は月額 500ドル(約5万円)が最初の目安になっている。

個人向けのクレジットやローンサービスを手掛ける「Bankrate」の調査によれば、米国では推定4,400万人が何らかの副業を手掛けており、その約2割が月額500ドル以上の収入を稼いでいる。その資金が、本業の収入だけでは足りない買い物や、大学時代に借りた学費ローンの返済などに使われている。

【副業スモールビジネスによる資産形成の道筋】

月額5万円というは、週末のアルバイトでも稼げる金額ではあるが、雇われるのではなく、自らのスモールビジネスで稼げる道筋を作れば、5万円の収入を 10万円、20万円へと増やしていくことも可能だ。それが、残業やアルバイトで生活費の不足分を稼ぐのとは、大きく異なる点である。

仮に、副業のスモールビジネスが軌道に乗り、月額20万円の収入が稼げるようになったとしよう。この事業規模では、脱サラをすることは難しいが、サラリーマンの月給を生活費に充てて、副業で得られる収入はローリスクな投資に回すことで、長期的なスパンでは、中小経営者以上の資産形成をすることも可能だ。

投資の一例として、日本の優良企業では、年間の配当利回り3%を超すものが沢山あるため、それらの株式を副業収入で買い増していく。一度買った銘柄は売らずに、配当金も再投資していくことで、複利効果を活かした資産形成ができるようになる。わかりやすいシミュレーションとして、月20万円の積み立てを年間利回り3%で長期継続できれば、30年後には1億円を超す資産になる。

《月額20万円を年間利回り3%で30年間積み立てた場合》

資産運用シミュレーション(金融庁)

サラリーマンが億単位の資産を目指すには、レバレッジの高い信用取引やFXしか手段がないと考える人が多いが、その大半は、金融市場で度々起こる暴落相場を乗り越えることができずに、虎の子の元金を減らしてしまう。しかし、副業で得た収入を積み立ていく形であれば、ローリスクな運用でも着実に資産を増やしていくことができる。

副業での収益化を成功させるには、事業テーマの選定や日々の仕事を継続する努力などが必要になり、誰もが実現できるわけではないが、スモールビジネスであれば、失敗することのリスクも小さい。10個の事業にトライして1つの成功を引き当てるようなスタイルができるのも、副業で行うスモールビジネスならではの楽しみ方になる。

■関連情報
1勝9敗でも成功する新規事業計画の立て方と起業スタイル
大学教授の兼業制度に学ぶ副業ルールの作り方
好きなことを副業にするサイドハッスルの着眼点
副業スモールビジネス事例集ビジネスモデル事例集

JNEWSはネット草創期の1996年から、海外・国内のビジネス事例を精力的に取材、会員向けレポート(JNEWS LETTER)として配信しています。また、JNEWS会員読者には、副業ビジネスの立ち上げ、独立起業までの相談対応も行っています。詳細は公式サイトをご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?